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映画「ミッドサマー」明るいことが恐ろしい!北欧を舞台に真の恐怖を知るホラー作品

ホラー映画の新鋭であるアリ・アスター監督による映画『ミッドサマー』。ある村で行われる夏至の祝祭に参加したことから、恐ろしい日常に入り込んでしまう大学生たちを描くフォークホラー作品です。明るいのに怖すぎる本作の見どころを紹介します。
TOP画像引用元 (Amazon)

北欧の華やかさと恐怖が共存する異色のフォークホラー!



2019年公開の映画『ミッドサマー』は、アメリカとスウェーデンの合作のスリラー映画です。

監督を務めたのは、2018年最恐を謳われる映画『ヘレディタリー/継承』を手がけたアリ・アスター。

日本では夏至と呼ばれる「ミッドサマー」と、多神教を信仰するスウェーデンの村の異様な祝祭をベースにした、独特な世界観のフォークホラー作品です。

本作を制作したきっかけは恋人と別れたことだったそうで、自身を主人公に投影して書かれた脚本に、きっと誰もが恐ろしさを感じるでしょう。

ホラーが苦手な人でも思わずのめり込む、本作のあらすじや見どころを紹介します。

夏至祭の狂気に囚われた大学生たちを待つ恐怖の結末とは

▲▲不気味な祝祭…アリ・アスター最新作『ミッドサマー』本編映像

女子大生のダニーは躁うつ病の妹からのメールを不安に思い、大学院生である恋人クリスチャンに電話をかけます。

精神的に不安定なダニーが彼に頼りきっているのを見かねて、友人のマークが勧めるように別れを考え始めていました。

ところが、しばらくしてかかってきた電話でダニーの妹が実家で無理心中し、両親も巻き込まれて亡くなったことを知らされます。

家族を失った彼女に同情したクリスチャンは別れを切り出せず、元気づけるためにパーティーに誘うことにしました。

しかし、そこで彼が男友達4人だけでスウェーデン旅行を計画していることを知り、2人は口論に。

その結果、ダニーも旅行へ同行することになります。

この旅行の目的は、スウェーデンからの留学生のペレの故郷の村で90年に一度行われているという夏至を祝う9日間の祝祭「夏至祭」に参加するためでした。

美しい平原が広がるその村は、午後9時を回っても昼のように明るく、色鮮やかな民族衣装やタペストリーに目を奪われます。

翌日から始まった夏至祭で、突然初老の男女の投身自殺を見せられ、参加した彼らは当惑。

村の長は、歳を取り続けて苦しむよりも彼らにとって幸せなことであると説明します。

動揺し村から出ようとするダニーでしたが、この儀式の恐ろしさはこれだけに留まりませんでした。

狂気が渦巻く祝祭に、観る人さえも囚われるホラー作品です。

キャスト陣の好演がストーリーの恐ろしさを際立たせる!



本作はサイコ・サスペンスの部類に入る作品なので、キャストの演技が重要になります。

主人公のダニー役を演じるのは、いま映画界で注目されている若手女優のフローレンス・ピューです。

作中では初めから精神安定剤が欠かせない女性という繊細な役どころで、狂気によってさらに追い詰められていく様子を多彩な表情で表現しています。

恋人のクリスチャン役を演じるのは、子役から活躍している俳優のジャック・レイナー。

ダニー以上に儀式に巻き込まれていくインパクトの大きい役でしたが、人間らしいリアルな演技を随所で見せています。

また、村民たちの明るく楽しげな姿もかえって恐怖心を増幅させ、本作が持つ異様な雰囲気を構築。

主人公たちと共に、不思議な世界に入り込む経験ができるでしょう。

美しい景色が恐れを生む巧妙な演出とストーリー



本作は太陽が沈まない夏至を迎えたスウェーデンの村を舞台にしています。

一般的なホラー映画では薄暗く不穏な映像がつきものですが、本作は対照的です。

色とりどりの花に囲まれた平原で、華やかな刺繍の施された白い民族衣装を身にまとう人々は、まるで幸せの象徴のような温かさと美しさに満ちています。

しかし、そこで繰り広げられるのは、狂気と残酷さに満ちた儀式の数々。

余所者にとっては異様な光景を、村民たちが当たり前のこととして行っているところが、恐ろしく感じられるでしょう。

さらに、主人公の視点で見ると、恋愛映画としての観方もできます。

関係は冷めているものの依存する恋人との旅行中、本人の意思ではないとはいえ裏切りを受けてしまう主人公。

不安定な心をどん底にまで落とされて泣き叫ぶ彼女に、村の女性たちが一緒に叫ぶシーンがありますが、女性であれば同じように彼女の心に共鳴する部分があるのではないでしょうか。

人生において欠かせない、人の思考を揺さぶる恋愛という要素を絡めることで、より深みのあるストーリーに仕上がっています。



加えて、本作には印象的なタペストリーや絵画が登場します。

これは不穏な雰囲気を与える視覚的な効果だけに留まらず、その先のストーリーの暗示が含まれているのです。

登場人物たちの何気ない会話の中にも、のちに予言のように現実になるセリフがあります。

一度観ただけでは気付きにくいですが、何度も観ていくと本作に関わるすべてのものがストーリーに繋がっていることが分かるでしょう。

大きな力に導かれるように、暗示されたとおりに物事が進んでいることに気付く時、本当に恐ろしいものが何かを知ることになります。

ぜひ自身の目と心で、本作に込められたメッセージを感じ取ってくださいね。

「Fire Temple」は物語の続きを予感させるテーマ曲

▲Fire Temple

本作の音楽を担当するのは、映画音楽を手がける作曲家のボビー・クルリックです。

映像の明るさとおぞましいストーリーをさまざまな音楽で見事に融合させていますが、なかでも本作のテーマ曲と呼ぶにふさわしい楽曲が『Fire Temple』。

本作のクライマックスとなるラストシーンで流れる重要な1曲で、電子音とストリングスを組み合わせた壮大なクラシック音楽となっています。

また、ゆったりとしたメロディが波打つように抑揚し、響き続ける電子音に不思議と恐怖心を煽られるでしょう。

すべてが収束するはずのラストでありながら、幕が降りた後に続く現実の恐ろしさを予感させます。

緊張感を残す余韻に、映画ファンも音楽ファンもきっと虜になるでしょう。

「ミッドサマー」は幸せの意味を考えさせられる映画!



観る人を釘付けにするホラー映画『ミッドサマー』は、人間の内面の複雑さが分かる作品です。

監督のアリ・アスターは、本作のラストを「ダニーにとってこれはハッピーエンド」と語っています。

彼女の迎える結末をどう観るかは人それぞれですが、観方を少し変えて彼女の立場に立ってみれば、最後の選択が彼女のために必要なものであったことに気付かされるでしょう。

人の幸せを他の誰かが決めることはできず、その人が選んだ幸せのみがハッピーエンドなのです。

映画『ミッドサマー』を繰り返し観て、最も恐ろしくて美しくもある人間の心の中を覗いてみましょう。


TEXT MarSali

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