父親への不満をシャウト!娘は死の間際の父親を救えるか?
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2020年公開の映画『一度死んでみた』は、不仲の父娘をテーマに描いたハートフルコメディ。
ソフトバンクCMの「白戸家」シリーズで知られる、CMプランナー澤本嘉光によるオリジナル脚本の作品です。
監督を務めるのは、auCMの「三太郎」シリーズを手がけるCMディレクターであり、本作が映画初監督作品となる浜崎愼治。
CMディレクター出身者の活躍が目覚ましい現代の映画界で、CM界きっての人気クリエイターである2人がタッグを組み、新しいジャンルのコメディ映画を作り上げました。
世代も立場も関係なく誰もが共感できて、笑いと温かさにあふれる本作のあらすじや見どころなどを、動画と共に紹介します。
大嫌いな父親がまさかの仮死状態に!
大学4年生の野畑七瀬は、売れないデスメタルバンドでボーカルを担当しています。
父親で野畑製薬の社長である計との二人暮らしですが、仕事ばかりなのに口うるさく干渉してくる父親を嫌い、反抗期真っ只中。
「一度死んでくれ!」とライブでシャウトして発散する毎日です。
そんなある日、計が本当に亡くなったと連絡が入ります。
駆けつけて動揺する七瀬に、存在感の薄さから社内で「ゴースト」と呼ばれる松岡から驚きの事実が語られます。
野畑製薬では若返りの薬である「ロミオ」を開発中に、一度死に2日後に生き返ることができる「ジュリエット」が偶然誕生。
その頃、ライバル会社のワトソン製薬が会社を乗っ取る計画を立てていることを知り、スパイを見つけ出すための秘策として「ジュリエット」を服用し、仮死状態に陥っているとのことでした。
大騒ぎの会社の中、何としても会社の乗っ取りを阻止しようと、七瀬は松岡と、お化けになって現れた計と共に行動を始めます。
しかし、スパイの画策により予定よりも早く火葬が行われることに。
大嫌いな父親を救うため、娘が必死になって奮闘する家族の物語です。
メインキャストから脇役まで超豪華!
本作は映画界に欠かせない超豪華俳優陣のオールキャストということで、公開前から大きな話題となりました。
主演を務めたのは、若手実力派女優の筆頭である広瀬すず。
ピンクの髪とメタルファッションに身を包み、暴言を吐いたりライブでシャウトする姿は、これまでの清純派のイメージを覆す新たな一面を見せています。
コメディ作品には初挑戦だったようですが、女優魂を感じる振り切った演技に思わず釘付けになりますよ。
父親役を演じるのは、どんな作品でも存在感を放つベテラン俳優の堤真一。
変人の研究者であり娘を持つ父親としての姿を、変顔やボケたっぷりに楽しい演技で表現しています。
地味すぎる松岡役を演じるのは、イケメン俳優として人気の高い吉沢亮。
連続テレビ小説『なつぞら』で広瀬すずとの共演経験があるため、息の合った掛け合いを見せています。
その他、木村多江、リリー・フランキー、小澤征悦、松田翔太など、そうそうたる俳優陣がメインキャストの脇を固めています。
さらに、竹中直人、古田新太、妻夫木聡、城田優、佐藤健、志尊淳など、ベテランから若手まで主役級のキャストを役名のない小さな役に惜しげもなく起用。
間髪入れず登場する豪華すぎるメンツに驚かされるでしょう。
共感が詰まった家族愛を感じるストーリー
本作の面白さは、ありえない設定を詰め込んだストーリーにあります。
偶然仮死状態になれる薬が開発されたり、お化けになった父親が娘と行動したりと、驚くようなシチュエーションで物語は進んでいくのです。
さらに、大学生にもなって反抗期を引きずる娘と父親の関係の悪さもかなり飛び抜けていて、思わず笑ってしまいますよ。
しかし、その設定の上で繰り広げられる会話や行動には、観る人を共感させるポイントがたくさんあります。
特に、父親への不満やどうにもならない苛立ちを、歌やボクシングなど他のもので晴らそうとする七瀬の様子は、娘という立場ならきっと理解できる部分が多いでしょう。
だからこそ、彼女が全力でシャウトする姿に、一緒になって爽快感を感じる人も少なくないはずです。
また、死に直面しようとしている父親を前に必死になる七瀬の健気さには、心がほっこりするでしょう。
「一度死んでくれ!」と言いつつも、本当は父親を大切に思っているのです。
七瀬のように、家族だからこそ本当の素直な気持ちが言えず、思ってもいないことを口走ってしまうことはあるでしょう。
それは、子供の立場であっても親の立場であっても同じです。
しかし、思っていることは言葉にしなければうまく伝わらず、失ってから伝えようとしても手遅れになってしまいます。
その一方で、少しでも伝えようと努力するなら、家族の関係をより良いものに変えることができます。
家族の関係に悩んでいるなら、きっと観た後に前向きな気分になれるでしょう。
また、本作では家族についてだけでなく、社会における人間ドラマも描かれており、さまざまな面からストーリーを楽しめますよ。
時間を共にすることで近付いていく七瀬と松岡の関係にも注目です。
「一度死んでみた」は作品を象徴するデスメタル風の主題歌
本作の主題歌は、作中で登場する広瀬すず率いる4人組のデスメタルバンドの魂ズが歌う『一度死んでみた』です。
音楽クリエイターとして人気を誇るヒャダインが楽曲制作を担当しています。
崖っぷちのメタルバンドということで、あえてメタル好きなら違和感を覚えるちぐはぐ感のあるテイストに仕上っています。
音楽は実際のデスメタルよりも高音で、リズミカルで軽い印象のメロディがベース。
しかし、編曲と演奏をプロのメタルバンドが行っているため、本格的なメタルっぽさがプラスされ、不思議な中毒性を備えています。
そして「DEATH」とひたすらに繰り返しながら、父親や周囲への不満をストレートに表現する歌詞が特徴的です。
デスヴォイスを使わない、広瀬すずのかわいらしい叫び声が、七瀬の行き場のない不安定な気持ちをエネルギッシュに歌で表現しています。
この曲を聴きながら、一緒にヘッドバンギングをして作品の世界観を楽しんでください。
「一度死んでみた」はすべての家族に観てほしいファミリー映画!
ハートフルコメディ映画『一度死んでみた』は、すべての家族が共感できる作品です。
家族関係が薄くなっている現代では、家族の時間よりも友達やネットとの繋がりを大切にしている人が多くいます。
しかし、家族からしか得られない感情があることを、七瀬と計の関係から気付かされます
本作を観ることで親子の関係を見直したり、いつもは言えない気持ちを伝えるきっかけになるでしょう。
映画『一度死んでみた』を観た後は、大切な家族と有意義な時間を過ごしてみてください。
TEXT MarSali