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ポルノグラフィティ「ブレス」で提示した「自分らしさ」とは?

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圧倒的な歌唱力と独自の世界観で、20年以上人気を誇り続けるポルノグラフィティ。今回は、ポルノ流の人生応援歌『ブレス』をご紹介。心が疲れた時に、ぜひ聴いてほしい1曲です。

子供たちとの共作で作り上げた応援歌

▲ポルノグラフィティ 『ブレス』(Short Ver.) / Porno Graffitti 『Breath』(Short Ver.)

『ブレス』は、2018年7月25日に発売された47枚目のシングルです。

劇場版『ポケットモンスターみんなの物語』の主題歌に抜擢されたこともあり、聴き馴染みがあるかもしれません。

ポルノグラフィティの魅力といえば、膨大な歌詞を滑舌よく歌い上げるテンポの速い曲。

初めてライブに行った人でも盛り上がれるノリのよさと、誰もが聴いたことのある名曲の数々。

ラテン調の曲を作らせたら右に出る者がいないほど、ポルノグラフィティの世界観をさらに深みに連れていってくれます。

しかし、今回ご紹介する『ブレス』は、そんなポルノグラフィティのイメージを良い意味で裏切ってくれます。


ジャケット写真はインパクトの強いカラフルな、まるで子供の落書きのよう。

このデザインは、子供たちとメンバーが『ブレス』を記号にしたVの字を重ね描きしたものです。

MVにも子供たちがたくさん登場し、メンバーと戯れるシーンは、まるでホームビデオを観ている錯覚に陥ります。

楽曲全体を包み込む温かい空気感は、子供たちとの共作といえるでしょう。

『ブレス』は人生に迷った時、ふと立ち止まった時、そっと背中を押してくれる応援歌のような楽曲です。

ではさっそく、歌詞の意味や内容に触れていきましょう。

急かすばかりの世の中への愚痴


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ポジティブな言葉で溢れているヒットチャート
頼んでもないのにやたら背中を押す

君はもう十分 頑張っているのだけど
知らない間に急かされてる 何か変えろと迫られ
≪ブレス 歌詞より抜粋≫
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何をするにも前向きで、元気いっぱいに頑張ることばかりが推奨される世の中。

しかし、常に気を張っていると疲れてしまいます。

力強く背中を押す周りからの圧力に、密やかに抵抗するような歌詞が印象的です。

「ポジティブ」という言葉を、ネガティブなものとして使っているところに、新藤晴一のセンスが光っていますね。


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今のままじゃダメかい? 未来は早足でなきゃ
たどり着けないもんかい? ネガティブだって君の大事なカケラ
壮大な旅の途中さ
≪ブレス 歌詞より抜粋≫
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時にはネガティブになることも、決して悪いことではありません。

“もっと力抜いてもいいんじゃない?”

そんな、心が軽くなるような言葉を投げてくれるところが、ポルノグラフィティらしいですね。

思い悩んだり立ち止まったりするのも、人生という長い旅路の中では必要なこと。

そう思えば、焦った心も楽になれるような気がします。

ポルノグラフィティなりのポジティブシンキング


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向かい風は後ろ向けば追い風になる
視線向けた方角には明日があると信じる
≪ブレス 歌詞より抜粋≫
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人生における障害を「向かい風」と表現することがありますが、そんな困難でさえ、少し視点を変えるだけで「追い風」にできます。

右の道がダメそうなら、思い切って左の道へ方向転換。

それだけで道が開け、新たな未来を手にすることができるかもしれません。

現状と真っ向勝負するのではなく、のらりくらりとかわしていくところに、新藤晴一らしさを感じます。

目の前のことに固執しすぎない、柔軟な視点こそが、人生を上手く乗り切っていくコツかもしれませんね。


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気分次第で行こう 未来はただそこにあって
君のこと待ってる 小難しい条件 つけたりはしない
迎えにも来ないけど
≪ブレス 歌詞より抜粋≫
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未来は逃げないから、自分のペースで進めばいい。

そうやって安心させておきながら「迎えにも来ないけど」と突き放すところが、心地よいスパイスになっています。

誰もが未来に向かって自由に歩める反面、望んだ未来が簡単に手に入らない現実。

そんな、現実の厳しさをこの楽曲はさらりと言ってのけます。

ポルノ流の「自分らしさ」の提示


「ありのまま」を受け入れるような主題歌が、一世を風靡した映画は記憶に新しいと思います。

しかし『ブレス』では「自分らしく」を前面に出していません。

「周りに流されることなく、自分のペースで」というメッセージを、あくまでさりげなく届けてくれるのがポルノグラフィティらしさなのです。

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簡単に語るんじゃない 夢を わかろうとしない 他人がほら笑っている
簡単に重ねるんじゃない 君を すぐに変わってゆくヒットチャートになんか
君は君のままでずっと 行くんだから faraway
≪ブレス 歌詞より抜粋≫
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ヒットチャートは、多くの人の心を掴み、人気を集める曲です。

普段あまり音楽を聴かない人でも知っているような、その時代を代表する楽曲といえます。

多くの人から愛されるヒットチャートに、自分自身を重ねたくなる気持ちはよく分かります。

みんなに愛されるものを真似ることで、なんとなく自信が持てたり、認められたような気がしたりするでしょう。

しかし、ヒットチャートは時代によって変わるもの。

「簡単に重ねるんじゃない」という歌詞から「移ろいやすいものに自分を重ねて、自分の価値を見失うな」というメッセージ性を感じます。

瞬く間に変わってゆくものを軸にして自分を図るより、誰にも理解されなくても、自分というものを見失わないでほしい。

そんなメッセージを込めた「君は君のままでずっと 行くんだから faraway」という歌詞が刺さります。


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少年には遠回りする時間が与えられ
老人には近道を知る知恵が授けられて
どちらかを笑うことなかれ 羨むことなかれ
それぞれの道がある 誰も君の道は行けない
≪ブレス 歌詞より抜粋≫
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ここでも「自分らしさ」というものへのこだわりを感じます。

どんなに羨んでも、誰かの人生を歩むことができないように、自分の道は自分しか歩むことができません。

「他人をけなすことなく、自分を恥じることなく、誰も歩めない自分だけの人生に誇りを持ってほしい」

そんな思いが込められているのではないでしょうか。


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メロディは音符と休符が作る ブレスのできない歌は誰も唄えやしない
晴れた日も雨の日もあるように 朝と夜が今日も巡ってくように
出会いとさよなら繰り返す 旅人のように
≪ブレス 歌詞より抜粋≫
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息継ぎのできない歌を歌うのは、とても苦しいものです。

人生も歌と同じで、適度な息継ぎがなくては最後まで歩けません。

人と同じ歩幅で歩こうとせず、自分の気持ちに素直に、時には立ち止まって休憩しながら、自分の人生を歩んでいきたいですね。

ヒットチャートへのこだわり


作詞を手がけた新藤晴一は、昔からヒットチャートへのこだわりを見せていました。

魂を込めて作った歌が、まるでグラム売りされるかのように切り取られることへの悲しさ。

曲を切り取った形でしか聴き手に届けることができないもどかしさと、せっかく作った曲が、時代の波に乗って使い捨てられていくことへの悔しさを滲ませているのです。

まるでヒットチャートを揶揄するような歌詞と言えます。


その姿勢は今でも健在で、ヒット曲は必要だとしながらも、時代に振り回されない「ポルノグラフィティらしさ」と、バンドとして揺らぐことのない意思を感じます。

20年以上、音楽界の第一線で活躍し続けている彼らだからこそ、胸にとまるものがありますね。

心が疲れた時、すっと肩の力を抜いてくれるような『ブレス』。

子供たちと撮ったMVもとても癒やされるので、ぜひチェックしてみてください。

ポルノグラフィティ 『ブレス』(Short Ver.)


TEXT 岡野ケイ

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