ブルース・リー、ジャッキー・チェンが大好き。マンガ、コスプレ、昔の特撮まで詳しい、女性マルチタレント:中川翔子。
「しょこたん」の愛称で親しまれる彼女は、声優からイラストレーターなど多方面で活躍しており2006年には歌手デビューも果たしている。パワフルで明るい性格、ちょっと不思議なイメージから、楽曲もポップなものを想像してしまうがジャンルは幅広く、ロック調の激しいものから、バラードまで様々。ディズニー作品「塔の上のラプンツェル」ではヒロイン:ラプンツェルの声を担当しており、子供でも楽しめる楽曲もリリースしている。
たくさんの楽曲を発表している中で、しょこたんの4枚目のシングル『snow tears』は聴くと切ない気持ちになる楽曲。直訳すると“雪の涙”となるこの楽曲は、普段のしょこたんからはイメージできないような恋愛モノ。パワフルなしょこたんを思うと、ただ泣いている姿が想像できないからだ。
はじめて見る、しょこたんの涙。
その涙の行方とは?
中川翔子「snow tears」
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あなたがくれた夢の続き 色づいてく世界
言葉なくてもただとなりで感じられた奇跡
いつまでもその先の未来を
分かり合えると思った
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人は恋に落ちると、世界が色づいて見える。今まで気にもしなかった空の色、木の葉が鮮やかになるのだ。世界が美しくなったのではなく特別な人ができた、それだけで世界が新鮮に映ったりする。
この楽曲は、そんな春のような世界が終わり、見るもの全てが凍りついてしまっている世界だ。PVでもその世界感が表現されており白や黒のモノトーンでほぼ統一され、それ以外の色はあまり出てこない。カラフルな色が似合うしょこたんとは真逆な世界と言える。雪が降る、白が埋め尽くす世界は想像するだけでも寒い。
“降りしきる雪の中に”
“さよならが積もってゆく”
“何もかも分からなくて 泣きたくなくて”
“でもどこかで祈ってる”
“この声が届くように”
また、この楽曲では始終、泣いているしょこたんの姿が浮かぶ。現実のしょこたんであれば、納得のいくまで全力で相手を追いかけそうなものだ。しかしこの楽曲の中では、ただ、雪の中を1人で立ちすんで“この声が届くように”と祈ってる。
この楽曲を聴いていて痛いと思うのは相手が戻ってくることなんてないとわかっていながら、一生懸命に祈っているからだ。まるで、届くようにと祈っていながら、届かなくても良いと思っているようで。
だからこそ、積もることがなければ消えてしまう雪に涙を重ねたのだろうが聴いているこっちとしては「普段の姿は強がっているのか?」と心配になる。雪が降るたびに、1人泣いていないだろうかと実らない片思いをしている気分だ。
涙の行方が、温かい春の世界に繋がっていることを願ってやまない。
TEXT:空屋まひろ