恋心に気づいた夏の日
『君の知らない物語』は、クリエイターチーム『supercell』による楽曲。2009年8月に発売されて以降、2ヵ月間連続でオリコンシングルチャートの20位以内にランクインし続けた人気の一曲です。
ひと夏の切ない恋を描いた歌詞を読み解いていきましょう。
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いつもどおりのある日の事
君は突然立ち上がり言った
「今夜星を見に行こう」
「たまには良いこと言うんだね」
なんてみんなして言って笑った
明かりもない道を
バカみたいにはしゃいで歩いた
抱え込んだ孤独や不安に
押しつぶされないように
≪君の知らない物語 歌詞より抜粋≫
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まず冒頭で歌われているのは、仲良しグループで星を見に行くというシーン。
みんなで楽しそうに向かう様子が描かれていると同時に、それぞれが不安や孤独を抱えている様子も歌われています。
何にたいしてなのか具体的にはわかりませんが、青春時代を過ごした方ならなんとなく共感できますよね。
毎日楽しいけれど、ふとした瞬間に将来への不安を感じたり、誰からも求められていないような孤独を感じたり。
そんな思いを振り払うように、または誰にも悟られないようにあえて大はしゃぎしたという経験がある方もいるのではないでしょうか。
しかし、この不安定な気持ちの中で友情を育んだり恋をするのが青春。
続く歌詞では、自分の恋心に気づく主人公の様子が歌われています。
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真っ暗な世界から見上げた
夜空は星が降るようで
いつからだろう 君の事を
追いかける私がいた
どうかお願い
驚かないで聞いてよ
私のこの想いを
≪君の知らない物語 歌詞より抜粋≫
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気になる相手を無意識のうちに目で追いかけてしまうことってありますよね。
そして目で追っている自分に気づき、「好きなのかもしれない」と思った時が恋の始まり。
この楽曲の主人公も、「君」に恋をする自分に気が付いたようです。
第三者の存在?
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「あれがデネブ、アルタイル、ベガ」
君は指さす夏の大三角
覚えて空を見る
やっと見つけた織姫様
だけどどこだろう彦星様
これじゃひとりぼっち
≪君の知らない物語 歌詞より抜粋≫
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こちらは2番の歌詞。
この部分を読み解く上で重要なのが、「君」が指を差している星座の存在です。
これらは「夏の大三角形」と呼ばれる星座ですが、実はアルタイルが彦星、ベガは織姫を表すと言われています。
そしてデネブは、織姫と彦星が七夕に出会う手助けをしたと言われている星座。
これを踏まえて続く歌詞を見てみましょう。
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楽しげなひとつ隣の君
私は何も言えなくて
本当はずっと君の事を
どこかでわかっていた
見つかったって
届きはしない
だめだよ 泣かないで
そう言い聞かせた
≪君の知らない物語 歌詞より抜粋≫
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注目すべきは「ひとつ隣」という表現。
主人公と「君」の間に誰かがいることがわかりますね。
そしてその第三者を挟み、主人公が「自分の想いは届かない」と涙を堪えている様子が歌われています。
つまり「君」には恋人、もしくは意中の人がいるのではないでしょうか。
アルタイルが「君」、ベガが「君」の恋人。
その2人が同じグループ内にいることから、デネブに自分を重ねていたのかもしれません。
そして、主人公は「好きになること」を痛感します。
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強がる私は臆病で
興味がないようなふりをしてた
だけど
胸を刺す痛みは増してく
ああそうか 好きになるって
こういう事なんだね
≪君の知らない物語 歌詞より抜粋≫
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とても切ないですね。
同じような経験がある方は思わず涙してしまいそうです。
実らなかった恋心
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どうしたい?言ってごらん
心の声がする
君の隣がいい
真実は残酷だ
≪君の知らない物語 歌詞より抜粋≫
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「真実は残酷だ」とある通り、自分の想いとは裏腹に現実はうまくいかなかった様子。
次の歌詞ではやるせない心情が歌われています。
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言わなかった
言えなかった
二度と戻れない
あの夏の日
きらめく星
今でも思い出せるよ
笑った顔も
怒った顔も
大好きでした
おかしいよね
わかってたのに
君の知らない
私だけの秘密
夜を越えて
遠い思い出の君が
指をさす
無邪気な声で
≪君の知らない物語 歌詞より抜粋≫
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主人公は「君」に好きな気持ちを伝える勇気がなかったのでしょうか?
それとも、同じグループにいる友人を想ってあえて伝えなかったのでしょうか?
真実はわかりませんが、主人公の想いを「君」が知ることはなかったようです。
つまり、楽曲タイトルの「君の知らない物語」が意味するものは「君」に対する主人公の気持ち。
「君」に対して抱いたひと夏の恋心を表していると思われます。
同じような経験がある人はその想いに浸りながら、そうでない方は楽曲の世界観に浸りながら、じっくり聴いてみてくださいね。
TEXT ゆとりーな