別れを決めた男女が迎える朝
ジャニーズの人気グループ・嵐が、CDデビュー日にあたる2020年11月3日に17枚目のアルバム『This is 嵐』をリリースしました。まさしくこれぞ嵐と言える多彩なアルバムの中盤で、ミステリアスな雰囲気を醸し出す楽曲が『いつか秒針があう頃』です。
名だたるアーティストたちに楽曲提供してきたラミ・ヤコブが手がけており、重厚感のあるメロディとメンバーの美しいハモリが特徴的なダンスミュージックとなっています。
アルバム内で唯一付けられた日本語タイトルがどのような意味を持つのか、歌詞の内容から読み解いていきましょう。
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Warming light 優しく
君は理由も聞かないMystery
Touch your face, knock on my door
淡い輪郭とデジャヴなMorning sight
≪いつか秒針のあう頃 歌詞より抜粋≫
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この楽曲には、「僕」と「君」という一組の男女が登場します。
ある朝の穏やかな様子を描いているのかと思いきや「君は理由も聞かないMystery」とありますね。
彼女が理由を聞かないことを不思議に思っていることから、彼の方から何かを告げたのでしょう。
「knock on my door」は「僕のドアを叩いて」となりますが、ドアは心とも考えられます。
本当は、彼は理由を聞いてほしいのかもしれません。
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伝えたい愛も 未完結のPrayer
言葉も狂わし ただ愛おしいほどDaydream
≪いつか秒針のあう頃 歌詞より抜粋≫
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「Prayer」は「祈り」という意味の言葉です。
おそらく伝えたい想いを持っていながらも、自分の中でさえうまく言葉にできない状態なのでしょう。
空想ばかりしては、現実で思い通りにならない歯がゆさを抱えていることが伝わってきますね。
つまり、恋人を愛しているのに突然別れを切り出した彼と、何も聞かずに受け入れた彼女の恋の終わりを描いている歌のようです。
合わない秒針が重なる時は来るのか
続くサビで、別れの曲であることが明確になります。
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Lady, 強がる心 Gravity
迷い込むまま Sink into your heart
秒針の違う Gravity
重なりあえば深くinto my love
≪いつか秒針のあう頃 歌詞より抜粋≫
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「Gravity」は「重力・引力」を指す言葉。
「Sink into your heart」は「君の心に沈む」という意味であることから、どんなに強がっても重力に引かれるように彼女に惹かれている様子が示されています。
しかし「秒針の違う」「重なりあえば」という言葉から、2つの時計の秒針が合わないかのように2人の心もすれ違っていることが明らかになります。
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Brighter day, disappear
僕を包み込むような記憶
Time to go, no way to cry
決して消えない素敵なThrough the night
ページを失くした 見たこともないMaze
つなぎ目もなしに 夜明けのキスをしたこと
≪いつか秒針のあう頃 歌詞より抜粋≫
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まだ彼女を愛している彼は、2人で過ごした幸せな記憶を思い出しているようです。
「Maze」は迷路のような複雑なものを指していて、「決して消えない」はずなのにいつの思い出か見失っているように思えます。
彼が切り出した別れの理由を彼女が聞かないのも、いつからか互いの気持ちが重ならなくなってしまったからなのでしょう。
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Lady, 繋いで心 Gravity
温めあえばずっと Be on your side
秒針の違う Gravity
誰も知らない Stepping into my life
≪いつか秒針のあう頃 歌詞より抜粋≫
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「Be on your side」は「君の味方でいて」となります。
心を繋いで温め合うという描写から考えると、もう一度想いが重なるならずっと君の味方でいると伝えているのかもしれません。
とはいえ、この別れはどうにもならないもので、独りになる彼はここから誰も知らない「僕の人生に足を踏み入れる」ことになります。
愛しているからこそ別れを選ぶこともある
ここから櫻井翔が作詞を務める「サクラップ」が始まります。
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紅の輪郭が 走馬灯のように
互いに僅かな 後悔も残り
oh my god ねえ... ほら、もう...
横になろうよ 今日はもう 外がもう...
なんて言い出せず
言葉で伝えりゃ意味が出るの
貴方求め live in the moment
Don't let go こだまする声
≪いつか秒針のあう頃 歌詞より抜粋≫
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「紅の輪郭」は彼女の唇を指しているのでしょう。
互いに別れを意識していた2人には後悔も滲みます。思わず引き止めたくなりますが、言い出すことはできません。
言葉を発すれば、当然その言葉は意味を持ちます。だからこそ、言いたくても言えない言葉があり、彼は黙って彼女を見送ることにしました。
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So please hold me tightly once again
やわらかなその唇
It was the sweetest I've ever known, yeah
Never let you go
You are my dear...
≪いつか秒針のあう頃 歌詞より抜粋≫
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しかし、最後にもう一度抱きしめ合ってキスをしたいと考えます。実際にそうしたのかは分かりませんが、それほど彼は彼女を愛しています。
本当は別れたくはないけれど、愛しているから別れを選ぶべき時も確かにあるはずです。
タイトルの『いつか秒針のあう頃』というフレーズは歌詞には出てきませんが、おそらく彼は少し時間がかかるとしてもその日が来るのを待っています。
別れを告げながらもまた彼女と共に歩める時を意識していると考えると、前向きで未来のある別れと言えるかもしれませんね。
切なくも深い愛情が感じられる『いつか秒針のあう頃』をじっくり聴いて、歌詞に詰まった想いに触れてみてください。
TEXT MarSali