菅田将暉×石崎ひゅーいが贈る重厚なバラード
俳優としてだけでなくアーティストとしての存在感も放つ菅田将暉が『ラストシーン』をリリースしました。
発売日は2021年11月24日。11月7日からはリリースに先立って先行配信が開始。
この楽曲は現在放送中のTBS系ドラマ『日本沈没-希望のひと-』の主題歌にも起用されています。
『日本沈没』は小松左京によるSF小説で、日本列島が未曾有の大地震に襲われ沈没するというもの。
1973年、1980年にはラジオドラマ、2020年にはWebアニメとして話題を集め、現在はTBSにてドラマ放送されています。
過去に何度も音声や映像になって世に放たれていることから、作品に対する関心の高さを感じますね。
また、取り扱っている内容が地震であり、『日本沈没』というタイトルもインパクト大。
近年、地震を始め自然災害に幾度も晒されている我々にとって身近な題材になっていることもあり、ドラマ放送前から話題になりました。
原作の舞台は197X年でしたが、現在放送中のドラマの舞台は2023年。
近い将来、こんな未来が待ち受けているかもしれない。非常にリアルな時代設定も人々の注目を集めている理由の一つでしょう。
『日本沈没』というタイトルを見ると、重く暗いイメージを受けがちですが、ドラマのタイトルは『日本沈没-希望のひと-』。
未曾有の大災害に見舞われて翻弄される人々を描くだけでなく、前向きな要素も盛り込まれているのです。
菅田将暉の『ラストシーン』は重厚なバラード。イントロから静かでどこか切なさすら感じさせる楽曲ですが、決して暗いだけではありません。
では、一体どんな「ラストシーン」が待っているのか、歌詞の考察に入っていきたいと思います。
見慣れた日常への憧れ
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世界中の灯りをともしてさ
君の涙に手を伸ばすんだよ
夜明け間近の彗星みたいに
ほら、ラストシーンは凛とした青だ
≪ラストシーン 歌詞より抜粋≫
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優しい歌声で始まる『ラストシーン』。最初の歌詞は、とても静かで「青」という色から連想する冷たさではなく、温かさに包まれています。
泣いている「君」にそっと手を差し伸べるように、照らし出す灯りは人々の心の灯りでしょうか。
誰かの悲しみから目を逸らさず、受け止め、寄り添い、支え合う。
そんなぬくもり溢れる歌詞です。
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戦うのさ 僕らは強く生きるため
君の涙が教えてくれた
迷わないで信じた一筋の光
残したいものはたったひとつだけ
似た者同士だねって笑う、そんな景色だ
≪ラストシーン 歌詞より抜粋≫
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未曾有の災害を前に、為す術もなく路頭に迷う人たち。
自然災害というものはいつも理不尽で、あっという間に大切なものを呑み込んでしまいます。
これまで日本で起きた数多くの自然災害。その度に涙を流してきた人たちの、一人一人に寄り添うような歌詞が印象的です。
「君の涙が教えてくれた」という歌詞はまさに、災害を経験し、悲しみに暮れる人たちを前にし、それでも生きなくてはならないという現実に重なります。
一人でいると心が折れてしまっても、誰かと支え合えれば、勇気が湧いてくるのかもしれません。
もう少し頑張ってみようと、顔を上げることができるかもしれません。
そうやって乗り越えた先にあるのは、いつもの日常。
これまでも、大きな災害に見舞われる度に涙を乗り越えて、見慣れた日常を手に入れてきたはずです。
「似た者同士だねって笑う、そんな景色」は、大好きな人と眺める景色でしょうか。
大切な友人と交わす、他愛ない会話でしょうか。
残したいものはきっと、特別な景色ではないのです。
昨日まであった、当たり前の、見慣れた景色が残したくて、人々は困難に立ち向かうのだと思わされます。
数多の悲しみを越えてなお、守りたいもの
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守りたいと願った なりふり構わず
君の涙を僕に預けて
大丈夫さ 小さく頷いてほしい
手に入れたモノも失ったモノも
その先で輝くモノも、いつかきっとさ
≪ラストシーン 歌詞より抜粋≫
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『日本沈没-希望のひと-』は、日本を襲う大災害への恐怖やリスク、現実的な問題だけでなく、希望という要素を描いた作品です。
どんなに過酷な状況でも、人は他人を思いやることができるし、支え合うことができる。
人は一人では弱いですが、誰かと協力し合えば戦える、強さをも兼ね備えた生き物なのです。
誰かを支える、誰かを守る。それは、決して簡単なことではありません。
「君の涙を僕に預けて」この歌詞に込められた決意は、言葉で言うほど簡単なものではないでしょう。
それでも、一緒に生きたいその人のために、すべてを背負って共に困難に立ち向かおうとしているのです。
災害はこれまでの人生で築き上げてきた大切なもの、思い出もすべて奪ってしまいます。
それでも、逃げ惑う中で手に入れたものもあるはずです。
未曾有の災害に襲われて初めて気づけることも数多くあるでしょう。
失ったもの、手に入れたもの、まだ見ぬ未来で出会えるかもしれないもの。
乗り越えられるか分からない困難の中でも、未来を見据えた歌詞が非常に心強いのです。
2021年という時代を生きる人々へのメッセージ
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2021年しるしをつけよう
君と僕がおんなじ世界で息をした
その証として
≪ラストシーン 歌詞より抜粋≫
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物語の舞台は2023年ですが、我々が生きているのは2021年です。
突然「2021年」という年号が出てくることによって、歌の世界に現実味が生まれますね。
まさに今、生きている時代。
「おんなじ世界で息をした」証として、印をつけるのは日記でしょうか。
ドラマの世界では大地震、現実の世界ではコロナ。先の見えない状況が続いています。
今隣にいる人が、この先もずっと傍にいてくれるとは限らない。
そんな不確かな「今」を生きているからこそ、一緒に生きた証を残すことが大切なのです。
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迷わないで信じた一筋の光
残したいものはたったひとつだけ
似た者同士だねって笑う、そんな景色だ
夜明け間近に星は輝いた
ほら、ラストシーンは凛とした青だ
≪ラストシーン 歌詞より抜粋≫
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いつ大切なものを失ってしまうかもしれない今だからこそ、瞬間瞬間を大切に生きることを忘れてはいけません。
たった一つ、残したい景色を胸に刻み、その景色を守り続けるために困難に立ち向かう。
その姿はきっと「凜とした青」です。
ドラマも現実も、この先どんなラストシーンが待っているのか、予想もつきません。
しかし、どんなラストシーンであったとしても、最後は「凜とした青」で終われるよう、「今」という時間を大切に、誠実に向き合っていきたいですね。
「ほら、ラストシーンは凛とした青だ」
曲を締めるこの歌詞には、そんなメッセージが込められているのかもしれません。