7thアルバム「×と○と罪と」収録曲
2013年12月11日にリリースされたRADWIMPSの7thアルバム『×と○と罪と』。同アルバムに収録された『会心の一撃』は「逆転」を描いた1曲。
作詞作曲はボーカルの野田洋次郎です。
MVでは野球選手の熱い逆転劇がコミカルに描かれており、動画再生回数は2000万回を超える人気ぶりです。(2022年6月時点)
ちなみに『会心の一撃』は当サイトのRADWIMPS人気歌詞ランキングでも上位をキープしています。
大ヒットアニメーション映画「君の名は」の『前前前世』や「天気の子」の『グランドエスケープ』などを手がけ、今や国民的ロックバンドともいえるRADWIMPS。
そんな彼らが2013年に発表した「逆転の歌」とはどのようなものなのか。
『会心の一撃』の歌詞から、その「逆転」の中身を考察していきます。
本心から目をそらす主人公
まずは1番の歌詞から見ていきましょう。
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「お前なんかいてもいなくても」がお得意の 意地悪いこの世界の口癖で
僕の耳元で飽きもせずに 話がしたいなら顔を見せなよ 今すぐさ
≪会心の一撃 歌詞より抜粋≫
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多くの場合、人一人いなくなったところで世の中に大した影響はありません。
『会心の一撃』の主人公は、そんな「自分のちっぽけさ」を痛感する事態に見舞われているようです。
また「この世界の口癖」とあることから、主人公は「お前がいてもいなくても世の中は大して変わらない」という社会の冷酷さに何度も直面していることが分かります。
存在意義が脅かされるような社会からのプレッシャー。
そんな漠然とした脅威に対して主人公は「顔を見せなよ」と強がっているようです。
次の歌詞に入ります。
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あと何万回の後悔で 僕は僕の期待を超えられるだろう
この心に足が生えてたら 今日の行き先は違っていたかな
≪会心の一撃 歌詞より抜粋≫
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前半2行から察するに、主人公はこれまで納得できる結果を出せず、たくさんの後悔を重ねてきたようです。
続く「この心に足が生えてたら」は「本心に忠実に道を選んでいたら」といったニュアンスでしょうか。
「自分に正直にやりたいことを貫いていたら、もっと良い人生になったのでは」という後悔や弱音のように聴こえますね。
おそらく主人公は「やりたいことがある」という本心から目をそらして生きてきたのでしょう。
続く歌詞は以下です。
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就職試験の合格通知 面白い人間の不合格通知
心は彼方 全力疾走で もういないだろう 「俺に用はないだろう」
≪会心の一撃 歌詞より抜粋≫
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うまいこと就職できた様子の主人公。
しかし「就職」は主人公にとって「面白くない人間の象徴」のようです。
そして本当にやりたいことを知っている「心(=本心)」は「全力疾走で もういない」。
「俺に用はないだろう」と言い残して「彼方」へ去ってしまったと解釈できます。
いつからか身についた妥協
次は2番の歌詞を見ていきます。
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近頃いつ僕は僕のことを 驚かせてやってあげたかな
逃げられてしまう前に早いとこ 一生お前についていくって言わせてやる
≪会心の一撃 歌詞より抜粋≫
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己の期待を超えられず、平坦な人生を歩んできたらしい主人公。
それでも自分自身さえ驚かせるような大きなことをしたい願望があるようです。
「一生お前についていくって言わせてやる」からは、自らに愛想が尽きる前に「自分を誇れる何か」を成し遂げてやる!という意志が伝わってきます。
次の歌詞です。
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自分で自分予測変換 説明書などなしで充分だって
じゃあどこのページに書いてあった?
その「しょうがないだろう だってしょうがないだろう」
≪会心の一撃 歌詞より抜粋≫
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ここでの「しょうがないだろう」は、「やりたいことをやって生きていけるのは一握りなんだから安定を選ぶのは仕方ないことだ」というように読み取れます。
「妥協」を象徴するような文言ですね。
また「説明書などなしで充分」は、「誰の手も借りなくていい」といった解釈ができます。
主人公は誰の手も借りずに自分の裁量だけで「進みうる選択肢を展開(=予測変換)」し、結局「しょうがない」と妥協して道を捨てる癖があるのかもしれません。
そして「その妥協は誰に教わったんだ?」という自分へのイライラが、「どこのページに書いてあった?」で表されているのではないでしょうか。
まだ見ぬ未来に対する葛藤
ここからはサビを見ていきます。
サビの歌詞では、人生の分岐点に立っている主人公の「まだ見ぬ未来に対する葛藤」が描かれているようです。
まずは1番のサビを見てみましょう。
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圧倒的で感動的な 理想的超えて完璧な
運命的で冒険的な 時に叙情的な未来 VS
平均的で盲目的 半永久的に安泰な
無痛 無臭 無害 無安打無失点の 未来 未来 未来
≪会心の一撃 歌詞より抜粋≫
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前半は「刺激的で魅力的な未来」、後半は「刺激のない単調な未来」だといえます。
前者の未来はとてもキラキラしている一方、後者の未来は「安泰」ではあってもつまらない印象です。
後者は主人公にとっての就職の道なのかもしれません。
きっと主人公が本当に進みたいのは前者の「刺激いっぱいの未来」なのでしょう。
続いて2番のサビです。
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圧倒的で感動的な 無敵的超えて完璧な
創造的で本能的な 前人未到的な 世界 VS
退廃的で暴力的 悲劇的超えて残酷な
差別的ゆえに反逆的な世界 世界
≪会心の一撃 歌詞より抜粋≫
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「創造的で本能的な 前人未到的な 世界」という表現から、主人公が本当に進みたいのはアーティスト系の世界だと推測できます。
一方、後半の荒んだ様子の世界は「就職後の世界」にしては悲惨すぎる描写です。
これはおそらく1番の「刺激いっぱいの未来」の負の側面を表していると思われます。
外から見ると華々しいアーティストの世界。
しかし成功できるのはほんの一握りで、社会に認められずに終わるケースも多いでしょう。
自分にとって「理想的な未来」に進んだとしても、その先が悲惨な末路になるリスクはかなり高いわけです。
そんな「理想的な未来を選んだ先の世界」を二極化して表現したのが、この2番のサビの歌詞なのではないでしょうか。
果たして妥協癖のある主人公はハイリスク・ハイリターンな「理想的な未来」を選べるのか。
次の章でフィナーレです。
葛藤の果て、逆転のラスト
ここから終盤の歌詞に入ります。
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圧倒的で感動的な 理想的超えて完璧な
創造的で本能的な 奇跡的超えて幸福な
退廃的で暴力的で 悲劇的超えて残酷な
独善的で享楽的な 完膚なきまでに壮絶な
世界 世界 世界 世界 世界 世界
≪会心の一撃 歌詞より抜粋≫
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前半2行は「刺激いっぱいの明るい未来の世界」のことでしょう。
「奇跡的超えて幸福な」アーティストとしての成功を意味していると考えられます。
そして後半は「刺激こそあれど悲惨な世界」。
独りよがりに終始する(アーティストの)悲しい末路のことだと思われます。
進みたい道ではあるものの、理想とリスクが頭の中をぐるぐる駆け巡っている様子の主人公。
葛藤が爆発するような「世界」の連呼の果てに、最後のサビです。
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圧倒的で感動的な 理想的超えて完璧な
運命的で冒険的な 時に叙情的な未来 ×2×2
創造的で本能的 芸術的超えて幸福な
延長22回 二死 満塁 3点ビハインド 不敵な笑み
4番 目隠しスウィング 初球 逆転満塁弾な未来 未来
≪会心の一撃 歌詞より抜粋≫
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ここにきて「退廃的」や「独善的」といった悲惨な末路の描写がなくなりました。
一方、理想の未来のイメージは「×2×2(倍々)」に膨れ上がっている様子。
どうやら「創造的で本能的 芸術的超えて幸福な」未来に軍配が上がったようです。
そして畳みかけるように歌われるラスト2行のフレーズ。
通常の野球では考えられない「延長22回」。
一般的な大卒の就職年齢と掛けているのでしょうか。
「二死 満塁 3点ビハインド」は、ホームランで逆転勝利できる絶好のシチュエーションです。
そんな状況下、彼方へ消えた本心に全てを委ねるかのような「不敵な笑み」からの「目隠しスウィング」。
結果、初球で「逆転満塁弾」を打ち込む4番バッター。
伸るか反るかの大勝負で見事成果を上げるお手本のような情景です。
壮大な葛藤の果てにそこまで見通した主人公は、きっと本心に忠実な「自分らしい未来」へと一歩踏み出したのでしょう。
平均や妥協に抗う「逆転劇の始まり」で幕を閉じる、すこぶるパワフルな『会心の一撃』でした。
「会心の一撃」は本心の満足!
今回は、RADWIMPS『会心の一撃』の歌詞を考察しました。行く末を二極化する、畳みかけるようなサビの歌詞は圧巻でしたね。
今まさに人生の分岐点に立っている人にとっては、熱く込み上げるものがあったのではないでしょうか。
ちなみに「会心」という言葉の意味は「心に適う(かなう)」です。
一度は「俺に用はないだろう」と去っていった主人公の「心(=本心)」。
そんな「本心」を満足させる自分史上最強の一手こそ、ラッド流の「会心の一撃」なのかもしれません。