ドラマ「結婚するって、本当ですか?」主題歌を考察
作詞・aimerrhythm、作曲・Misty mintで制作されたAimerの『Ivy Ivy Ivy(読み方:アイビー・アイビー・アイビー)』は、Amazon Prime Videoにて独占配信中のAmazon Originalドラマ『結婚するって、本当ですか』の主題歌です。『結婚するって、本当ですか』は週刊ビッグコミックスピリッツに連載中の若木民喜の漫画が原作で、旅行代理店の同僚タクヤとリカがお互いに自分の生活を守るために計画結婚を企てるも次第に惹かれ合っていく“偽装結婚コメディ”。
劇中ではAimerの楽曲計10曲が各話で使用されており、ドラマのストーリーを美しく彩るAimerの歌声も見どころのひとつとなっています。
そのなかでも主題歌として一際輝く『Ivy Ivy Ivy』については、「物語が進むごとに、人間らしい矛盾でいっぱいになっていく、愛すべき主人公のふたりに寄り添い祝福できるような楽曲」を目指して制作したとコメントされています。
それでは、主人公たちの気持ちの変化が綴られた歌詞の意味を考察していきましょう。
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一晩ひとり泣き明かしました 口の中 砂漠みたいに乾きました
それでも マシだと思いました 濁った懺悔の雨に打たれるよりは
でも あの日の僕らは間違っていました
世界の美しさに 今ごろ 気付きました
≪Ivy Ivy Ivy 歌詞より抜粋≫
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冒頭ではひとりでいた時の心情が、重々しく表現されています。
寂しさや苦しさに「一晩ひとり泣き明かし」、誰にも慰めてもらえない日々。
「口の中 砂漠みたいに乾きました」という歌詞は、愛に飢えた心の渇きを示していると解釈できます。
そんな状態でも「濁った懺悔の雨に打たれる」ように、愛する人に対する不安や後悔に襲われながら誰かと生きることを選ぶくらいなら、孤独に泣きながらひとりで生きる方がマシだと思っていたようです。
しかし、偽装結婚を計画し一緒に過ごす時間が増えるにつれて、「あの日の僕らは間違って」いたことを悟ります。
それはふたりで見る世界が美しいことに気づいたからでした。
これが最高で最後の出会いですか?
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せつなくなるよ ふたりなら 寂しくたって ひとりじゃない
もう二度と無いこの一瞬に抱かれてみよう
どうしようもなくうれしくて泣く かなしすぎて笑えるね
もう一度だけ飛び込んでみた沼に咲いた花
ちょっとした悲劇に溺れました そっとしておいた罠 崩れ落ちた
ひょっとして評判の運命ですか? 最高で最後の出会いですか?
≪Ivy Ivy Ivy 歌詞より抜粋≫
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「ふたりなら寂しくたってひとりじゃない」ということを実感できたのは幸せなことに思えますが、「せつなくなるよ」ともこぼしています。
さらに「どうしようもなくうれしくて泣く」一方で「かなしすぎて笑えるね」とも明かしています。
これは自分が相手を愛するようになっても、相手から愛してもらえているわけではない偽装関係ゆえの苦しさを表しているのかもしれません。
また、いつか訪れるであろうこの関係が終わってしまう時のことを想像しているとも考察できます。
そんなもどかしく複雑な感情を抱えながらも「もう二度とないこの一瞬に抱かれてみよう」と、今ある幸せに身を任せることを決めました。
「もう一度だけ飛び込んでみた沼に咲いた花」の歌詞は、自身の濁った人生の中に突如生まれた愛を信じてぶつかってみたいという前向きな気持ちを表しているのでしょう。
このサビにあるように以前の自分からすれば愛を求めるなんて「ちょっとした悲劇」で、触れないように「そっとしておいた罠」だと分かってはいるけれど、心のどこかで眠っていた憧れの気持ちに突き動かされます。
「ひょっとして評判の運命ですか? 最高で最後の出会いですか?」と問いかける様子に、期待と不安が垣間見えます。
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ごめんね 余裕がなくて閉ざした
ぐしゃぐしゃに散らかった部屋だけど ようこそ
いま 選んだ扉の先は見えないけど
確かめに行こうよこの手は繋いだまんま
≪Ivy Ivy Ivy 歌詞より抜粋≫
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ここで出てくる「部屋」は文字通りの部屋だけでなく、自分の心のことでもあると解釈できるでしょう。
余裕がなくて自分の気持ちを悟られないように心を閉ざしたり、色んな考えや感情が散らかって手がつけられなかったりするものの、それでもやはりその心に入ってきてほしいと思っているのです。
この選択が正しいかどうかを今は知ることができませんが、ふたりで「確かめに行こうよ」と誘っています。
「この手は繋いだまんま」という歌詞から、ずっと一緒にいたいという気持ちが固まったことが伝わってきます。
Ivy(アイビー)に込めた想いとは
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カスタムせずにあるがまま どうなったって許せる
やっと出会えたこの一瞬を抱きしめてみよう
どうしようもなく溢れる 願いを口にして
もう一度だけ水をあげよう 一緒にいよう
ちょっとした喜劇にハマりました ぐっとこらえたから零れました
ひょっとしてこじらす感情ですか?
舞い降りたフラワーシャワー涙でぬれた
≪Ivy Ivy Ivy 歌詞より抜粋≫
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この人といる時だけは「カスタムせずあるがまま」の自然体の自分でいられる。
そんな貴重な出会いを手にしたから大切にしたいと思うだけでなく、この先たとえ望むような結果にならないとしても「どうなったって許せる」とさえ考えられるようになっています。
そして以前は砂漠のように乾いていた主人公が水をあげるという描写から、水は愛を意味していると考察しました。
植物に水をあげるのと同じくふたりの愛が育つように相手の心に愛を注ぎ、「一緒にいよう」というあふれる願いを伝えます。
ふたりで過ごす日々は「喜劇」みたいに楽しく、夢中になってしまいます。
「ぐっとこらえたから零れ」たのは笑い声であり、涙でもあるのでしょう。
気づけばもう抜け出せないところまで想いは進んでいて、どうなってもいいと言いながらもこの恋が終わったら気持ちをこじらせてしまいそうな予感もしています。
だからこそ結婚までたどり着いてフラワーシャワーを浴びた今、幸せとこれからへの決意に思わず涙があふれるのです。
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I'll remember that, Ivy Ivy
I'll remember that
Ivy Ivy Ivy
≪Ivy Ivy Ivy 歌詞より抜粋≫
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最後の英語詞は意訳すると「アイビーのことを覚えておく」となるでしょう。
「Ivy」はヘデラという学名を持つ蔦直物のアイビーのこと。
その花言葉には「友情」や「忠誠」などがあり、同志のような関係から始まった主人公たちの関係と重なります。
そして、日陰や寒い環境でもツルを伸ばし続ける強さから「永遠の愛」のシンボルとして結婚式の飾りにもよく用いられています。
ふたりが自分たちの結婚式を飾るアイビーを見つめ、永遠の愛を誓い合ったこの日のことを大切に覚えておこうと心に決める様子が浮かびますね。
また、この楽曲はAimerからファンへの想いを込めた曲でもあるそう。
主人公のふたりが愛の冒険に旅立っていくように、応援してくれるファンとずっと共に進んでいきたいという温かな気持ちが示されています。
「Ive Ivy Ivy」と繰り返されるところに、想いの強さが感じられます。
令和の歌姫Aimerが描く世界観を堪能して
『Ivy Ivy Ivy』は人を愛することや大切な人と生きることの素晴らしさを、Aimerらしい世界観で綴った爽やかなポップチューンです。デビュー10周年の締めくくりとして12月14日にリリースされたミニアルバム『Deep Down』にも収録されています。
令和を代表するシンガー・Aimerの深みのある甘い歌声と共に、想いの伝わる歌詞をじっくり楽しんでください。