NHKから全国へ広まった「めだかの学校」の歌詞の由来は?
日本人なら誰もが一度は歌った経験があるおなじみの童謡『めだかの学校』。
作詞を茶木滋が担当し、作曲者には当時新進気鋭の作曲家だった中田喜直が抜擢され、1951年にNHKのラジオ番組『幼児の時間』にて発表されました。
この楽曲が制作されたのは、茶木滋と幼い息子との会話が由来と言われています。
神奈川県小田原市に在住していた茶木は、戦時中は家族で箱根に疎開していて無事だったものの自宅が全焼したため、戦後はバラックのような家で過ごし食糧を確保するためにたびたび買い出しに出ていたようです。
ある日、買い出しのために息子と山を下り荻窪用水周辺を歩いていたところ、息子がめだかを見つけました。
息子が大声を出してめだかが隠れてしまい「あんまり大声を出すんで逃げてしまったんだよ」と話すと、息子が「大丈夫、またくるよ。だってここはめだかの学校だもん」と返したとのこと。
のちにNHKのプロデューサーから「春らしいのんびりした明るい歌」の作詞を依頼された際にこのエピソードを思い出し、『めだかの学校』の歌詞が生まれたそうです。
ではその歌詞にはどんな世界が描かれているのか、改めて意味を考察してみましょう。
親子がめだかの学校を眺める温かな風景
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めだかのがっこうはかわのなか
そっとのぞいて みてごらん
そっとのぞいて みてごらん
みんなで おゆうぎしているよ
≪めだかの学校 歌詞より抜粋≫
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川の中でめだかが群れているのは、そこが「めだかのがっこう」だから。
親は驚かせてしまわないように「そっとのぞいてみてごらん」と子供を促します。
当初はこの歌詞は「そっとのぞきにいってみな」だったそうですが、もっと柔らかい表現の方が良いと変更したのだそうです。
この歌詞からは親が子供と一緒になって川を覗き込んでいる姿が想像でき、より優しい雰囲気を感じることができますよね。
そのめだかたちがお遊戯をしているように見えたという発想も、子供らしい視点でワクワクさせてくれます。
めだかたちの楽しそうな様子が伝わるフレーズ
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めだかのがっこうのめだかたち
だれがせいとか せんせいか
だれがせいとか せんせいか
みんなで げんきにあそんでる
≪めだかの学校 歌詞より抜粋≫
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見ている人間からすれば「めだかのがっこうのめだかたち」はどれも同じような姿で、誰が生徒で誰が先生なのか迷ってしまいます。
しかし、それはめだかたちがみんな分け隔てなく仲良く過ごしているからこそ、見分けがつかないとも言えるかもしれません。
「みんなでげんきにあそんでる」様子は、見ている方も楽しい気持ちにしてくれるでしょう。
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めだかのがっこうはうれしそう
みずにながれて つーいつい
みずにながれて つーいつい
みんながそろって つーいつい
≪めだかの学校 歌詞より抜粋≫
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今度の「めだかのがっこうはうれしそう」に見えます。
それは「みずにながれて つーいつい」と揃って泳いでいるからのようです。
めだかは綺麗な水の中でしか生息しない魚なので、透明度の高い川の水の中をメダカたちが気持ち良さそうに泳いでいるのがはっきり見えたことでしょう。
泳ぐ様子は大抵“すいすい”という擬音語で表現されますが、めだかが泳ぐ様子に使うのは適切ではないと考えて「つーいつい」になったそうです。
確かに流れの緩やかな川の中で生きるめだかは“すいすい”と速く泳ぐというよりも“つーいつい”とゆったり泳いでいるイメージの方が近いのではないでしょうか。
細かな点までこだわっているところに、茶木滋の息子への愛情やこの曲を聴き歌う子供たちへの温かな思いが垣間見えます。
めだかがいる穏やかな風景に心が温まる!
戦後間もなくまだ人々が身も心も疲弊していた時代に、親子の何気ないやり取りから生まれたという『めだかの学校』。穏やかな春の自然を子供の純粋な視点で切り取った温かみのある童謡です。
現在、めだかは絶滅危惧種に指定されるほど、数が減り身近で見られる機会はなくなってしまいました。
しかし、この童謡の歌詞を聞けば、70年以上経った今も新鮮な気持ちで情景を思い浮かべることができるはずです。
自然を愛し大切にする気持ちを歌と共に、いつまでも後世の子供たちに受け継いでいきたいですね。