夢への道のりで揺れる不安定な心
新世代クリエイター・いよわ制作の『ももいろの鍵』は、大人気リズムゲーム「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク」のゲーム内ユニット・MORE MORE JUMP!への書き下ろし楽曲です。この楽曲についていよわは「彼女たちの持つ優しさや強さ、ひたむきさと共鳴するような楽曲」とコメントしています。
ゲーム内イベント「Re-tie Friendship」では桃井愛莉と中学時代の友人との関係が描かれており、モモジャンの中では姉御肌の愛莉の中にもある年相応のか弱さや問題を乗り越えた先の成長を見ることができます。
『ももいろの鍵』はそのタイトルから、愛莉の心境に沿った楽曲であることが窺えるでしょう。
どんな想いが綴られているのか、いよわらしい美しい歌詞の意味を考察していきたいと思います。
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泣いてるの? 怒ってるの?
幼い声が問う
心配いらないよ 笑えてるよ
返事は宙に浮くだけ
あの日描いたもの 夢の色
しだいに濃くなる
1人じゃないことも 分かってるよ
横を見ている
ふと 振り返る
遠くなっていく
分かれ道はまるで ジオラマに
馴染んだ思い出のよう
≪ももいろの鍵 歌詞より抜粋≫
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「泣いてるの? 怒ってるの?」と問いかけてくるのは幼い頃の自分自身。
主人公は「心配いらないよ 笑えてるよ」と返しますが、過去の自分には届かないため「返事は宙に浮くだけ」です。
これは過去の自分とやり取りできないことだけでなく、その答えが相手を安心させるためのものであって本心ではないことを示しているようにも思えます。
本心は不安定で泣いたり怒ったりしていて思い悩んでいますが、未来を夢見ている幼い自分を心配させないように気遣っているのでしょう。
当時思い描いていた夢の色は、実際に夢に近づくにつれて濃く鮮やかになっていきました。
今の自分は1人ではなく支えてくれる仲間が隣にいることを感じているようです。
そこに辿り着くまでに選んできた道のりを振り返れば、ジオラマのようにリアルでありながらどこか遠く思えているところに不器用な人物像が見えてきます。
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いざなったクローバー この場所を選んで
輝くステージに立っている
共に行くあなたの手 掴んだその手が
痛くないようにと願っているから
≪ももいろの鍵 歌詞より抜粋≫
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「いざなった」は「いざ為った」と「誘った」のダブルミーニングと思われます。
クローバーの花言葉は「約束」や「幸運」なので、過去の自分の夢という約束が実を結んだことと自分が幸運へと導かれたことを表していると解釈できそうです。
その約束と幸運とは「輝くステージに立っている」こと。
共に夢に挑戦する仲間が傷つくことがないようにと願っている様子に、主人公の優しさが垣間見えます。
覚悟を持って成長していく
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かじかんで かじかんで
その度に温めて
煌めくライトも 落ちる影も
全て愛していたいから
泣かないで 泣かないで
そのために側にいる
震える指に この手を添えて今
鍵を開けるまで
≪ももいろの鍵 歌詞より抜粋≫
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サビの「煌めくライトも落ちる影も全て愛していたいから」のフレーズも、アイドルとして立つステージのことを連想させますね。
その中で見る良い面も悪い面も全て愛したいから、不安や悩みでかじかむ心を暖めて奮い立とうとする姿が表現されているように感じます。
「泣かないで」という言葉は主人公から仲間へのものかもしれませんし、過去の自分から今の自分へのものかもしれません。
どちらにしても誰かの支えがあるからこそ前進していく力が得られることを意味しているのではないでしょうか?
この楽曲で印象的に出てくる「鍵を開ける」という表現は、成長することの比喩と考えられます。
扉はあっても鍵を開けなければその向こうの景色を見ることはできません。
とはいえ過去の自分や仲間が手助けできるのは「鍵を開けるまで」。
行動を起こすために大切なのは、自分自身の覚悟と決意であることが伝わってきます。
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やがて背負うもの 託す音
輪郭は濃くなる
1人じゃないことも分かってるよ
前を見ている
ふと 振り返る
見えなくなっていく
分かれ道はまるで
写真立てにしまった記憶のよう
いざなったクローバー
その葉を手にとって
新たなステージを待っている
共に行くあなたの目
見つめたその目の
星が褪せぬように 願っているから
≪ももいろの鍵 歌詞より抜粋≫
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鍵を開けた後も仲間との関係は深まっていきます。
しかし横を見て仲間に頼っていた時とは違い、自信を持って前を見ている様子に主人公の変化が感じられるでしょう。
時間が経つにつれて見えなくなっていく過去も、「写真立てにしまった記憶」のように心の中に大切に飾って前進していきます。
そして仲間との約束を実現するために幸運のチャンスを掴み、「新たなステージ」を見据える主人公。
過去の自分の夢を背負い、仲間と共に希望を持って進もうとする姿が魅力的に描かれています。
“百色”の鍵でドアを開けて
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眩しくて 眩しくて
その先に手を伸ばして
触れたものも 受けた傷も
全て憶えていたいから
負けないで 負けないで
そのために側にいる
隔たりの奥 見えない世界まで
届いてほしい 夢
≪ももいろの鍵 歌詞より抜粋≫
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眩しすぎて触れるのをためらってしまうような夢の輝きにもひるまず、懸命に夢を追いかけます。
そうして経験した喜びもその過程で「受けた傷」も、全て憶えていて自分の糧にしたいという強い想いを持っているようです。
自分自身と仲間に「負けないで」と言い聞かせながら、今はまだ扉の向こうにあって「見えない世界」までその想いが届くようにと願います。
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泣いてるの? 怒ってるの?
幼い声が問う
心配いらないよ 笑えてるよ
返事を歌にして 届けてく今
≪ももいろの鍵 歌詞より抜粋≫
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冒頭では届かないまま宙に浮いていた過去の自分への返答が、ここでは歌になって届けられようとしています。
今度は本心からの言葉だからこそ、何としてでも届けようとしていると解釈できるでしょう。
そのために歌にすることを選んでいるという点に、ミュージシャンであるモモジャンといよわの想いが共鳴しているように感じます。
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今 微笑んで 微笑んで
優しさはその頬へ
煌めくライトも 落ちる影も
全て持っていくから
乗り越えて その先へ
ただ前へ歩いていく
震える指に この手を添えて今
鍵を開ける
錆び付いていても 消えない色で今
ドアを開ける
≪ももいろの鍵 歌詞より抜粋≫
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優しい微笑みを携えてステージの上で輝く主人公は、そこから見える景色を全て持って未来へ踏み出そうとしています。
抱える問題や不安は簡単にはなくならないかもしれません。
それでも乗り越えて前へ進み、次の扉の鍵を開ける覚悟はできています。
タイトルにある「ももいろ」は桃色だけでなく“百色”と表記することもできます。
つまり自分自身というたったひとつの鍵さえあれば、どんな扉も開けることができるのです。
困難に遭って自分を見失いそうになると錆び付いた鍵のように前進するのが難しくなりますが、それでも自分の中に秘めた百色もの可能性は消えません。
諦めない限り扉の先へ進むことができるのだという確信のこもったメッセージが読み取れます。
いよわ×モモジャンが送る成長のための応援歌
『ももいろの鍵』はプロセカの物語の中でモモジャンがもっと輝くための成長の歌であり、挑戦することに足踏みしているリスナーを力づけてくれる応援歌でもありました。オリジナルMVに描かれているストーリーや謎めいたモールス信号にも注目すると、いよわからのメッセージをさらに深掘りできます。
いよわとモモジャンが織りなす歌の世界を堪能してください。