恋する男女を「ロミオとジュリエット」に重ねたラブソング
テイラー・スウィフトが2008年にリリースしたヒット曲『LOVE STORY』は、彼女が世界的にブレイクするきっかけとなった名曲です。熱烈に愛し合っていながらも周囲に認められない恋に悩む女性が、自分たちの恋模様を劇作家ウィリアム・シェイクスピアの名作『ロミオとジュリエット』に重ねるラブソングとなっています。
この楽曲は、2021年リリースの2ndアルバム『Fearless(フィアレス)』の再録版『Fearless(Taylor’s Version)』の収録曲にも選ばれました。
約13年の時を経て大人の魅力が増した歌唱は楽曲の世界をさらに引き立て、オリジナル版を凌ぐ勢いで人気を獲得しました。
どのようなストーリーなのか、英語の歌詞を和訳しながら意味を考察していきましょう。
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we were both young when I first Saw you
i close my eyes and the flashback starts
i'm standing there, on a balcony in summer air
≪LOVE STORY 歌詞より抜粋≫
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1番冒頭の歌詞では、主人公の女性が自らの恋について回想している様子が描かれています。
歌詞は「we were both young when I first saw you(私があなたに初めて会った時、私たちはまだ若かった)」という言葉で始まります。
当時からは随分と時が経過したものの、目を閉じるだけでその頃の記憶がフラッシュバックするほど、強烈な思い出として心に刻まれているようです。
彼女は「あの夏の空気」の中にいるような気持ちで、バルコニーに立っています。
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seE the lights see the party the ball gowns
see you make your way through the crowD
And say hello
little did i know
≪LOVE STORY 歌詞より抜粋≫
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2人が出会ったのはあるパーティーの時です。
「ball gowns」は舞踏会で女性が身に着けるロングドレスを指す言葉ですが、これは『ロミオとジュリエット』になぞらえていることを表すためのものでしょう。
パーティーの眩い光と美しいドレスを楽しんでいた彼女の元に、人混みをかき分けてやってきたのが「あなた」でした。
「little did I know」は「思いも寄らなかった」と訳すことができ、彼が挨拶をしてきた時はまだ自分たちの関係がこんなにも大きく人生を変えるものになるとは思わなかったという意味で用いられていると考えられます。
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that you were romeo You were throwing pebbles
and my daddy said stay away from juLiet
and i was crying on the staircase
begging you pLease don't go
and i said
≪LOVE STORY 歌詞より抜粋≫
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『ロミオとジュリエット』には、ロミオがジュリエットの部屋の窓に小石を投げて合図するシーンがあります。
彼が同じようにしたので、主人公は彼のことを自分のロミオだと感じるようになったのでしょう。
そして、物語の中のジュリエットがそうだったように父親は彼との交際を認めず、彼に「ジュリエットに近づくな」と言います。
彼女はショックを受け、階段で彼に泣きながら「行かないで」と縋りました。
これは私たちだけのラブストーリー
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romeo take me somewhere we can be alone
i'll be waiting all there's leFt to do is run
you'll be the prInce and i'll be the princess
it's a love story baby just say yes
≪LOVE STORY 歌詞より抜粋≫
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主人公は彼に「どこか2人きりになれるところに連れて行って」と願います。
自分たちの恋を成就させるにはもう逃げるしかないと感じていて、彼がそうしてくれるのを待っていると告げています。
そこでは「あなたは王子になって私はプリンセスになる」、「これはラブストーリー」だから必ず幸せになれると信じていることが伝わってきますね。
最後に「ただイエスと言って」と願い、自分の提案を受け入れてここから攫ってくれるよう求めます。
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so i sNeak out to the garden to see you
we keep quiet cause we're dead if they knew
so close your eyes
escape this town for a little while
≪LOVE STORY 歌詞より抜粋≫
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秘密の逢瀬のために、彼女は部屋をこっそり抜け出して庭に出ます。
2人の再会はいつも感動的でしたが、黙って傍にいるだけでした。
「cause we're dead if they knew」は「彼らに知られたら私たちは死んでしまうから」と訳せます。
実際にそうなるかは分かりませんが、命は守られたとしても2人の恋が終わってしまうという意味では死んでしまうも同然といえるかもしれません。
「so close your eyes」は「だから目を閉じて」となりますが「Escape this town for a little while(しばらくこの街から逃げるの)」と続くため、その時だけは周りのことを忘れてただお互いのことを考えていたいというニュアンスも感じさせます。
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cause you were romeo, i was a scarlet letter
and my Daddy said stay away from juliet
but you were everything to me
i was begging you please don't go
and i said
≪LOVE STORY 歌詞より抜粋≫
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「a scarlet letter」はナサニエル・ソーホーンの小説『緋文字』で生まれたもので、不義の罰として服に縫いつけられる赤いAの文字のことを指します。
Aは姦通者を意味する「adulterer」の頭文字です。
しかしこの曲の主人公は不義を犯しているわけではないので、「許されない恋に溺れる罪人」という意味で用いられていると解釈できるでしょう。
父親は許してくれませんが、彼女の愛はますます高まっていて「あなたは私のすべて」だから何もかも捨ててもいいとさえ思っている様子が読み取れます。
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romeo save me they're trying to tell me
how to feel
this love is difficult but it's real
don't be afraid we'll make it out of this mess
it's a love story baby just say yes
≪LOVE STORY 歌詞より抜粋≫
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彼女は「みんなが私の気持ちを決めつけようとする」ことにうんざりしていて、彼に助けを求めます。
大人たちはその気持ちを一時の迷いだ、恋に恋しているだけだと言って彼を忘れさせようとするのでしょう。
しかし、彼女は「この愛は確かに困難なものかもしれないけど本物よ」と確信を持って語ります。
そして、未だ連れ去ってくれない彼に「怖がらないで わたしたちならこの混乱から抜け出せるわ」と告げています。
彼からのロマンチックなプロポーズ
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i got tired of waiting
wondering if you were ever coming around
my faith in you was fading
when i met you on the outskirts of town
and i said
≪LOVE STORY 歌詞より抜粋≫
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そのうち、彼は彼女に会いに来なくなりました。
「i got tired of waiting(私は待ちくたびれてしまった)」というフレーズが切ないですね。
来る日も来る日も彼が来てくれることを願っていましたが、その願いは叶わず寂しさに苦しみます。
やがて彼への信頼が薄らぎそうになった頃、街のはずれで2人は再会します。
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romeo save me i've been feeling so alone
i keep waiTing for you but you never come
is this in my head i don't know wHat to think
≪LOVE STORY 歌詞より抜粋≫
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この歌詞からは、彼女が彼に自分がどれほど寂しかったかを分かってもらおうとしている姿がありありと見えてくるのではないでしょうか。
「私はあなたを待ち続けていたのにあなたは決して来なかった」という言葉からも、孤独と戦い心が疲弊していく彼女の気持ちが読み取れるでしょう。
そんな風に苦しんでいる時には来てくれなかったのに突然姿を現した彼に、「これは私の妄想?もう何を考えたらいいか分からない」と胸の内を吐露します。
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he knelt to the ground and pulled out a rIng
and Said
marry me Juliet never have to be alone
i love you and that's all i really know
i talked to your dad go pick out a white dress
it's a love story baby just say yes
≪LOVE STORY 歌詞より抜粋≫
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混乱し感情をぶつける彼女を前に、彼はその場にひざまずいて指輪を取り出し「僕と結婚して」とプロポーズをします。
そして「もう二度と君を1人にしない」と誓いました。
彼女を1人にしてしまったものの、「君を愛している それだけは確かなことだ」と想いを伝えます。
彼が彼女の元を離れた理由は「I talked to your dad(君のお父さんと話をした)」というフレーズから伝わってきます。
彼は何とか彼女の父親を説得して、結婚の了承を得て彼女を迎えに来たのです。
だから「white dress(ウエディングドレス)」を選びに行こうと言います。
それから彼女がいつも言っていた言葉を引用して「これはラブストーリーだよ、ただイエスと言って」と乞いました。
ちなみにファンの間では、ライブで『LOVE STORY』を歌唱中にプロポーズされると幸せになれると言われています。
そのジンクスは2018年に米テキサス州ヒューストンで行われたコンサートで、あるカップルがこのサビの歌詞に合わせてプロポーズをした様子がSNSで拡散されたことが始まりです。
その投稿はテイラー本人の目にも留まり祝福のメッセージが送られたことから、今やライブ中のプロポーズが定番化しています。
美しい生歌と共に贈られるロマンチックなプロポーズは、女性を幸せな“ジュリエット”にしてくれるはずです。
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cause we were both young
when i first saw you
≪LOVE STORY 歌詞より抜粋≫
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曲のラストは冒頭で出てきた歌詞で締めくくられます。
出会った当時を回想している曲のため、結婚して心穏やかに暮らす主人公が燃えるような愛情と孤独の悲しみを経験した時期を「若かった」と思い起こしているのかもしれません。
一方で見る角度を変えると、若かったからあんな風に愛に生きることができたのだと言っているようにも見えます。
そう解釈すると、別れてしまった2人の恋を思い起こしているとも考えられます。
どちらにしても、若い頃の情熱的な恋を糧に幸せに生きる大人の女性の姿が見えてきますね。
恋心を加速させるテイラーの名曲!
テイラー・スウィフトの『LOVE STORY』は、若かりし頃の恋の思い出と心情を綴った楽曲でした。1つの恋の中に見られる様々な感情が入り乱れる歌詞を紐解くと、主人公に共感する方も多いでしょう。
きっとあなたの恋する気持ちをさらに盛り上げてくれますよ。
Photo by BETH GARRABRANT 1989年12月13日生まれ、28歳。グラミー賞を10度受賞。また、グラミー賞史上グラミー賞で最も栄誉のある「年間最優秀アルバム賞」を最年少(20歳)で受賞し、「年間最優秀アルバム賞」を2度受賞歴のあるテイラーは、女性ソロアーティストとしては史上初。 過去の作品の···