Adoプロデュースのアイドルグループが表現する危うい友情関係
人気歌い手・Adoが初のプロデュースを手がけたアイドルグループ・ファントムシータが2024年6月26日にデビューを果たしました。ファントムシータはレトロホラーをコンセプトに掲げており、懐かしさと日本らしさを持ちつつも全く新しいアイドル像を体現することを目指して活動を行うとのこと。
メンバーはオーディションによって約4000人の中から選ばれたもな、美雨、凛花、灯翠、百花の5名です。
彼女たちのデビューシングルとなる「おともだち」は、チャラン・ポ・ランタンの小春が作詞・作曲・編曲を手がけた書き下ろし楽曲。
10代の少女たちの間に見られる友情の奥に潜む本音や疑心暗鬼の気持ちをテーマにしたダークな雰囲気で、日本で古くから親しまれてきた「こっくりさん」のモチーフも取り入れられています。
また、その独特の世界観を盛り上げるメンバーの高い歌唱力と表現力を感じる歌声にも引き込まれます。
どのような内容となっているのか、さっそく歌詞の意味を考察していきましょう。
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嘘ついてるの だあれ
裏切らないって言ったよね
嘘ついてるの だあれ
隠しても無駄だよ
おともだち
≪おともだち 歌詞より抜粋≫
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冒頭のサビの歌詞から不穏な様子が伝わってきます。
友達の間で「裏切らない」と約束を交わしたにも関わらず、誰かが裏切った上に自分はしていないと嘘をついているようです。
そもそも友達との関係で「裏切らない」と言葉にして約束している時点で、裏切られることへのトラウマや過度な恐怖心を抱えていることが読み取れます。
大切な関係が壊れることを恐れるのは当然の感情ですが、ここで描かれている少女たちは信頼しきってない危うい関係だったのでしょう。
そのため、危惧していた通りに裏切られたことを知り「隠しても無駄だよ」と詰め寄っているのだと思われます。
なかよしなのに誰かいつも独り
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私たち なかよしだよね
いつもの約束
ハブかれたらもう終わり
命懸けの指切り
≪おともだち 歌詞より抜粋≫
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サビの歌詞を見た後だと、1番の「私たちなかよしだよね」というフレーズからも圧を感じます。
学校という狭い世界で、この子たちに「ハブかれたらもう終わり」。
その後何が起こるかを想像するだけで恐ろしいので、お互いに「命懸けの指切り」で約束を交わします。
「いつもの約束」ともあり、これが日常的に行われていることの怖さも垣間見えますね。
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いつの日もいつでもずっと
私たち一緒
ペンタゴンの隅で
誰かいつも独り
お揃いのしるし
みんな 赤い色
私だけ 黒いの チャーム
誰かのせいよ
「お答えください」
≪おともだち 歌詞より抜粋≫
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この部分の「ペンタゴン」というフレーズから、5人の友情関係を描いていると分かります。
つまり、歌詞の中の少女たちがファントムシータのメンバーに投影されていると解釈できるでしょう。
5人のように奇数人数の友達グループは、いつも一緒にいて仲良く見えても「誰かいつも独り」の状況が生まれがちです。
さらには「お揃いのしるし」として持っているチャームは「みんな赤い色」なのに「私だけ黒いのチャーム」とも歌われています。
誰かが意図して彼女を貶めるために細工をしたとしか思えない状況です。
この裏切り者を探すため、「こっくりさん」で「嘘ついてるの だあれ」と問いかけていたことが理解できます。
偽りの友情に見られる少女たちの本音
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嘘ついてる「知らない」
掌返し茶飯事
可愛いって嫌味で
裏垢行って叩きます
「親友」って口だけ
「絶対内緒」今日まで
物語消したって
スクショ撮って流すね
≪おともだち 歌詞より抜粋≫
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2番では彼女たちの本音と現実が綴られています。
「知らない」と言っている子は嘘をついているだけで、自分の都合のいいように掌返しするのは日常茶飯事です。
「可愛い」と褒める子もただの嫌味で、実はSNSの「裏垢」で叩いています。
さらに「親友」と呼ぶのは口だけで、「絶対内緒」と約束しても明日には言いふらされてしまいます。
「物語」はInstagramのストーリーのことで、本人が削除してもスクリーンショットで保存しているため、広めるのは簡単です。
現代人ならではのSNSを用いた足の引っ張り合いの実情が明らかにされています。
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よくある指切り 効力無くて
加工した過去が多すぎて
なにが本当のことだっけ
誰とした約束だっけ
≪おともだち 歌詞より抜粋≫
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古くから約束を守ることを誓うための慣習として行われてきた「指切り」ですが、ただ小指を引っかけ合うだけの行為に効力はありません。
ましてや初めから守るつもりのない者同士がした指切りには少しも意味はないでしょう。
今や写真は加工するのが当たり前の時代。
顔も景色も加工された写真が何枚あろうと、そこに「本当のこと」はあるのでしょうか?
「なかよし」や「親友」という言葉を使っていても本当は友情なんて欠片もない偽りの関係には、偽りの思い出ばかりが増えていきます。
適当に交わされた約束はもはや誰が相手なのかも分からず、いずれ立ち消えてしまうのでしょう。
上っ面だけの“おともだち”の関係に翻弄される少女たちの姿に、恐ろしさと共感を覚えます。
ファントムシータのレトロホラーな世界観に引き込まれる!
ファントムシータの『おともだち』は、女性同士の友情に見られる独特な関係性にスポットを当てた楽曲です。YouTubeで公開されているMVには歌詞で描かれている情景をリアルに想像させるシーンが盛り込まれ、楽曲のレトロホラーな雰囲気を際立たせています。
これからのファントムシータの活動に期待が高まるデビューシングルを存分に味わってくださいね!