Vaundyがドラマ「ライオンの隠れ家」の主題歌を担当!
2024年10月12日に配信リリースされたVaundyの『風神』は、TBS系金曜ドラマ『ライオンの隠れ家』の主題歌です。『ライオンの隠れ家』は市役所勤めの平凡で真面目な優しい青年・小森洸人と、その弟で自閉スペクトラム症の美路人が突然現れた“ライオン”と名乗る少年と出会い、ある事件に巻き込まれていくヒューマンサスペンス。
家族や周囲の人との関係、その中で生まれる愛や絆といった結びつきがテーマとなっています。
主題歌として書き下ろされた『風神』は人とのコミュニケーションを風に例えて表現しています。
Vaundyが自ら監督を務めているMVには、同ドラマに出演している元乃木坂46メンバーの齋藤飛鳥が登場し、1人4役を演じ分けて楽曲のメッセージをさらに際立たせている点が見どころです。
ドラマのメッセージをどのように歌に込めているのか、さっそく歌詞の意味を考察していきましょう。
----------------
誰よりも
「救いたい」 と悲劇を気取ってた
面倒よりも
それが砕いても、煮込んでも
食べれない故に
大脳の意思では
静観がキメの一手なんだって
だが、心臓が言うには
芽吹けば栄養さ
≪風神 歌詞より抜粋≫
----------------
誰かを「救いたい」と思い行動するのは簡単にできることではありません。
しかし主人公はそう思う自分の感情を「悲劇を気取ってた」と表現し、自己満足でしかないという考えを示しています。
他人のために何かをしようと思うこと自体素晴らしいことですが、周囲の目を気にしてどんなときにでも立派に行動するのを難しく感じることもあるでしょう。
そのようなときには相手のことを大切に思っているはずなのに、本当は自分自身を認めてもらいたくてしているだけなのではないかと考えてしまうのも無理はないことです。
固い食材は小さくして時間をかけて煮込んでいるうちに食べやすくなるものですが、胸に抱えた弱さや葛藤はまるでどうやっても飲み込むことすらできない食材のように扱いに困ります。
続く部分で出てくる「大脳」と「心臓」は、それぞれ「頭」と「心」と置き換えられるでしょう。
頭では深入りせずに状況を「静観」していたいと考えるものの、心はその状況が種のようにいずれ芽吹いて自分の栄養になってくれるから行動しようと促してきます。
どうするかに答えはありませんが、心が感じるままに思い切って自ら行動することで人との良い関係を築いていけることを示していると解釈できます。
誰もが風を操る風神になれる
----------------
ジリジリ
頬つたって痛いよ
芽吹いた
ヒラヒラ
喉元つたって
吸い込み
肺が痛いよ
でもね
トクトク
あたたかいね
それが
大脳の意思では
食わず嫌いがキメの一手だったって
また、心臓が言うには
君もそう、風神さ
≪風神 歌詞より抜粋≫
----------------
時には人間関係に思い悩み、涙を流し心の痛みを感じることもあるでしょう。
最も身近なはずの家族とですらうまく関係を維持するのが難しい場合があります。
うまくいったかと思えばまた振り出しに戻ることもあり、呼吸をするのもつらく思えてきます。
しかしそのように苦しみを感じていても、完全に離れてしまいたいと思わないのはその関係に温もりを感じられる瞬間があるからです。
人と深く関わらず孤独に生きることもできますが、命あるものと関わることでしか得られない安らぎや満足感は少なくありません。
とはいえ、良いものを得るのと引き換えにつらい思いをするのを躊躇ってしまう気持ちは誰にでもあるものです。
だから頭は「食わず嫌いがキメの一手だった」と、初めから関わらない方が身のためだったんだと囁いてきます。
ところが心は「君もそう、風神さ」と伝えてきます。
タイトルでもある「風神」は、風を司る神のことです。
この楽曲で風はコミュニケーションを指すモチーフのため、風神が風を操るように人間関係をコントロールできると心が励ましてくれていると解釈できるでしょう。
誰でもこのような気持ちを育てれば、きっと不安や葛藤に押しつぶされずに済むはずです。
----------------
この先も誰かを想うたび
風纏い擦り傷が絶えないだろう
だがやがてこの風、受けるたびに
その、変え難い
ぬくい痛みに
報われていたい
はず
≪風神 歌詞より抜粋≫
----------------
風はそよ風のように優しいものばかりではなく、台風のように激しく吹き荒れて周囲を傷つけてしまうものもあります。
同じように人との関係も常に変化して、周囲も自分自身も傷つけてしまいます。
誰かを想ってした言動が失敗したときはなおさら、自分にがっかりしてしまうかもしれません。
しかし、その経験があったからこそ絆が強まったり心が強くなったりもします。
次第に強烈に感じていた痛みは和らいでいき、「ぬくい痛み」に変化していきます。
主人公はそんな風に人間関係をうまくコントロールしようとする今の自分の努力が報われてほしいと願っているようです。
ここではあえて「報われていたいはず」と用いることで、自分自身の心も未来のことも確証はないものの全てが良い方向に進んでくれたらいいとぼんやり考えているような雰囲気が伝わってきます。
小さな愛と温もりが隙間風から心を守る
----------------
もしもこの世の隙間に
愛を少し分けられたなら
それでこのぬくもりに
隙間風も
凪ぐだろうか
≪風神 歌詞より抜粋≫
----------------
「隙間風」は家の隙間から室内に入り込む風のことを指します。
また、そのように本来は密着しているはずのものに隙間が空いてしまうという意味で、人間関係に隔たりができることのたとえとしても用いられる言葉です。
世の中は人間関係がギクシャクしていて、まさに隙間だらけの状態です。
それでも身近な家族や友人など、目の前にいる人にほんの少しでも愛を注ぎ合っているなら、その温もりが隙間風による肌寒さを忘れさせてくれるでしょう。
主人公は「凪ぐのだろうか」と疑問形で語っているため、自分の小さな愛で本当に何かが変わるのかと疑問に思っているようです。
とはいえこのように考えるということは、そうであってほしいという願いの表れでもあるはずです。
不器用なりに大切な人をきちんと愛したいと思う主人公の真っ直ぐな心が感じられますね。
----------------
僕が、誰かを想うたび
風纏い擦り傷が絶えないだろう
だがやがてこの風、受けるたびに
その、変え難い
ぬくい痛みに
拭われて
あなたを想うたびに
風纏い擦り傷が絶えないだろう
だがやがてこの風、受けるたびに
その、変え難い
ぬくい痛みに
救われていた
はずだから
≪風神 歌詞より抜粋≫
----------------
最後のサビでは主語を入れて「僕が、誰かを思うたび」と強調し、自分自身のこととしてより真剣に状況を見つめていることが読み取れます。
自分は誰かのために何かをしたくても失敗ばかりで、その度に人を傷つけるので自分の心にも痛みを感じています。
しかし悲しむ自分を慰めてくれたり優しさを示してくれたりする人がいると、傷を拭ってくれるかのように心が穏やかになっていくのを感じるでしょう。
その先も人と関わり続ける限り痛みも生じ続けますが、その痛みすら尊いものに感じられる瞬間があるのです。
さらに続く歌詞では「あなたを想うたびに」と具体的に大切な相手を思い浮かべています。
どれほど愛していて大切に思っていても、必ずしも良い関係を保ち続けられるとは限りません。
それでも過去を振り返れば、その人と結んだ絆に何度も救われた経験があることに気づきます。
誰かを「救いたい」と願っていた自分も誰かによって救われていたことに思い至ると、また自分も誰かを救うために少しでも行動したいという気持ちになるでしょう。
そうした愛の連鎖が、世の中の隙間も埋めていくのではないでしょうか。
心を包み込む愛のメッセージを感じよう
Vaundyの『風神』は人間関係の難しさを示しながらも、人と関わることから生まれる愛や温もりの価値を改めて思い出させてくれる楽曲です。ドラマのストーリーと重ねてみると、主人公の洸人だけでなく登場人物がそれぞれに同じような思いを抱えていることが窺えて、リスナーにとっても誰もが共感できる歌だと感じられるでしょう。
人間関係に悩むとき、ぜひ心を優しく包み込んでくれる『風神』を聴いて力をもらってくださいね。