切なさ溢れるワンダーランズ×ショウタイムの楽曲
『ぼくのかみさま』はスマホで遊べるリズムゲーム「プロセカ」の楽曲で、2024年11月20日からプレイできるようになりました。
作詞作曲は「阿吽のビーツ」などで知られるボカロPの羽生まゐご(はにゅう・まいご)で、今作のための書き下ろし楽曲となっています。
歌い手はゲーム内に登場するユニット「ワンダーランズ×ショウタイム」(通称ワンダショ)と鏡音レンです。
ワンダショは明るく楽しい気分にさせる楽曲が多いのが特徴ですが、「ぼくのかみさま」は大切な人との別れを描いた切ない曲となっています。
果たしてどのような曲なのか、さっそく歌詞を見ていきましょう。
「かみさま」が誰なのか考察
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夕立ちとカラスの群れを
影が飲み込んでいました
かみさまは覚えてますか
僕の声が聞こえますか
≪ぼくのかみさま 歌詞より抜粋≫
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曲は寂しげな雰囲気から始まります。
夕立は夏の夕方に降る雷を伴った激しい雨のことで、ある夏の日の出来事と解釈できそうです。
夏の暑く眩しい昼間と一転して、夕闇が雨と飛んでいくカラスの群れを包み込みます。
そしてそんな光景の中にいる主人公は「かみさま」に語りかけるのでした。
「僕の声が聞こえますか」と。
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貴方はいつからここにいて
誰かの帰りを待っていた
生きたいな強くならなくちゃ
まずは、狼煙をあげてくれ
≪ぼくのかみさま 歌詞より抜粋≫
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歌詞に登場する「かみさま」ですが、おそらく主人公にとって身近な人物だと思われます。
神話に登場するような人知を超えた存在ではなく、主人公をいつも温かく見守ってくれる人。
歌詞中で「神様」ではなくひらがなで「かみさま」としているのも、主人公が親しみを感じている様子や「かみさま」の優しげなイメージを表現しているためと言えそうです。
「かみさま」は「誰かの帰りを待っていた」とありますが、それが誰なのか主人公には分かりません。
主人公はいつも誰かを待っている「かみさま」と出会い、少しずつ交流を深め仲良くなっていったのではないでしょうか。
そして「かみさま」と一緒に過ごしたい主人公の願いが、「(かみさまと一緒に)生きたいな」という歌詞になったと考えられます。
続く「狼煙をあげる」ですが、狼煙とは火や煙で合図や居場所を教える手法であり、または大きな出来事のきっかけを起こす言葉としても使われます。
この場合の「狼煙をあげる」は、「かみさまと一緒にいたい」主人公の気持ちを指していると感じました。
まるで「かみさま」の隣が自分の居場所だと合図しているかのように、主人公の中で「かみさま」の存在が大きく大切なものになっていったと考えられます。
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行かなくちゃ、ぼくのかみさま
かみさまが大好きでした
大人にはなれないぼくは ぼくは、
ぼくはまた貴方に会いに行く
≪ぼくのかみさま 歌詞より抜粋≫
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サビに登場する「大人にはなれないぼくは」とは、主人公が幼い子供であることを表現しています。
幼く未熟な子供だからこそ、優しく守ってくれる「かみさま」に心を開き懐いたのではないでしょうか。
言えない「さよなら」
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ありがとね、大事にするね
しばらくは、寂しくなるね
見えないね 煙が染みて
≪ぼくのかみさま 歌詞より抜粋≫
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2番目の歌詞ですが、おそらく主人公が何らかの理由で「かみさま」と離れてしまうことになり、そのときの会話が歌詞になっているようです。
「ありがとね、大事にするね」は主人公が「かみさま」に別れを惜しんで何かをプレゼントする様子を、「しばらくは、寂しくなるね」は主人公との別れを寂しく思う「かみさま」のセリフを表しているようです。
「かみさま」も主人公に親しみを感じていたようで、寂しくて思わず涙ぐんでしまうのを「煙が染みて」と誤魔化したのではないでしょうか。
以上のことから両者の間には温かな絆があったと分かります。
そのため別れは一層寂しく悲しいものだったはずです。
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夜が来る前に さよなら
言わなくちゃ、ほら言葉にして
ぼくはそんな 強くなくて
見ていてね、忘れないからね
だから、狼煙をあげてくれ
≪ぼくのかみさま 歌詞より抜粋≫
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「夜が来る前にさよなら」とあることから、会う時間も限られ早く「さよなら」を言って別れなければならないのに、その一言がなかなか言い出せないと解釈できます。
「言わなくちゃ、ほら言葉にして」と自分を奮い立たせようとする主人公ですが、「ぼくはそんなに強くなくて」と未熟な面が出てしまいます。
本当はちゃんと「さよなら」を言いたいのに言えない、主人公の未熟さが垣間見える場面です。
「かみさま」と別れる主人公ですが、「見ていてね、忘れないからね」とあるように、離れてしまっても「かみさま」は大切な存在のままです。
そのためこの絆を忘れずいつまでも残るように「狼煙をあげてくれ」と表現したのかもしれません。
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行かなくちゃ、ぼくのかみさま
かみさまが大好きでした
ぼくはもっと話がしたい、だから
だから、また貴方に会いに行く
≪ぼくのかみさま 歌詞より抜粋≫
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「ぼくはもっと話がしたい、だからだから、また貴方に会いに行く」とあることから、主人公はいつかまた「かみさま」と会える日を望んでいると分かります。
主人公にとって「かみさま」は、信仰のように尊い存在だと言えるでしょう。
僕はまた貴方に会いに行く
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さよならだ、ぼくのかみさま
かみさまが大好きでした
貴方にはもっと見せたかったけど
仕方がないね
≪ぼくのかみさま 歌詞より抜粋≫
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これまでは「行かなくちゃ」としていたサビの出だしが「さよならだ」となっていることから、「かみさま」と別れた後だと分かります。
「貴方にはもっと見せたかったけど」とありますが、主人公が見せたかったのは2人で過ごした思い出でしょう。
「もっと一緒に過ごしたかった」
「もっと2人でいろんな思い出を作りたかった」
「そして2人で思い返して笑い合いたかった」
そのような主人公の切ない思いが「もっと見せたかったけど」という歌詞に込められているように思います。
また「仕方ないね」という歌詞からは、この別れは主人公にはどうにもできないものであり、寂しさや諦めの感情がうかがえます。
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行かなくちゃ、ぼくのかみさま
わかってる、帰りは一人
これからは貴方の歌を歌う
僕はまた会いに行く
≪ぼくのかみさま 歌詞より抜粋≫
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「わかってる、帰りは一人」とありますが、これまでの帰り道は「かみさま」と二人だったのでしょう。
それが「一人」と表現されていることで、主人公の寂しさがより一層強調されています。
寂しさを埋めるため、主人公は「これからは貴方の歌を歌う」と決めたのでした。
その歌は「かみさま」と一緒に歌ったものかもしれないし、二人で過ごした思い出を歌にしたものかもしれません。
いつでも「かみさま」を身近に感じられるように、寂しくなったら口ずさむのではないでしょうか。
そして最後の歌詞では、主人公が自分を「ぼく」から「僕」と称しています。
これは幼い子供から大人に成長したと考えられるでしょう。
そして曲の冒頭でも「僕の声が聞こえますか」とあることから、大人になった主人公が幼い頃の「かみさま」との思い出を振り返っていたと思われます。
「かみさま」が大好きだった幼い主人公は、時の流れを経て大人になりました。
きっと内面も未熟な子供からたくましい大人に成長していることでしょう。
ですが「かみさま」が大好きなことには変わりありません。
「僕はまた貴方に会いに行く」という歌詞は、大人になった主人公が「かみさま」と再会する期待や喜びの気持ちが込められています。
温かな余韻を感じられる一曲
ワンダーランズ×ショウタイムの楽曲『ぼくのかみさま』は、大切な人との別れと寂しさを歌った曲です。ですが最後には再会を予感させる歌詞で終わっており、聴く人の心に温かな余韻を残します。
寂しくも優しい本楽曲をぜひ聴いてみてくださいね。