不器用さの裏側に隠れた想い
2025年5月28日リリースのシングル『GRIT』の収録曲で、4月28日に先行配信されたBE:FIRSTの『夢中』は、ドラマ『波うららかに、めおと日和』の主題歌として書き下ろされました。シンガーソングライターのeillと音楽プロデューサーのRyo ‘LEFTY’ Miyataがタッグを組み、ゴスペルをベースにした温かみのあるラブソングとなっています。
昭和11年を舞台に、交際ゼロ日婚から始まる甘酸っぱい新婚生活を描いたドラマのストーリーにマッチしていて、メンバーたちの歌声の魅力を存分に感じられる楽曲でもあります。
愛をどのように表現しているのか、さっそく歌詞の意味を考察していきましょう。
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ねぇ 言いかけた
昨日のごめんも
頼り甲斐のない相槌も
裏側で泣いてる I love you
≪夢中 歌詞より抜粋≫
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1番冒頭では、男性主人公が自分の不器用さを語っています。
「言いかけた 昨日のごめん」とあるため、主人公は自分が悪いと分かっていて謝ろうとする意思もあったのに、素直になれなかったようです。
さらに「頼り甲斐のない相槌」しかできず、話をきちんと受け止めていないように感じさせてしまったことにも気づいています。
そこには「I love you」の気持ちがあるのに、それをうまく表せず心で泣いているもどかしい気持ちが示されています。
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気にしてないって嘘はつけたけど
たまに胸騒ぐのもわかってよ
好きが募ってローラーコースター
回って揺れて落ちて君に届くかな
≪夢中 歌詞より抜粋≫
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彼女とトラブルがあり「気にしてない」とは言ったものの、それは「嘘」。
本当は気になるけれど我慢して気にしてないふりをするから、「たまに胸騒ぐのもわかってよ」と複雑な男心を理解してほしいと思っています。
「好き」という想いが募れば募るほど、ジェットコースターのように激しく気分が浮き沈みします。
こんなにも揺れ動いている気持ちが「君に届くかな」という不安も浮かびます。
純粋に相手を愛しているからこそ湧き出る不安定な感情に、共感する方も多いのではないでしょうか。
愛しているから何度でも名前を呼びたい

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今夜の恋模様
流れる星うららかな
言葉のつづきを贈るよ
Hey, look at me baby
≪夢中 歌詞より抜粋≫
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ドラマタイトルにも含まれている「うららか」は春の季語で、春の暖かく穏やかな陽の光を浴びて、全てのものが柔らかく見えるさまを表す言葉です。
また、心が晴れ晴れとした明るい状態を指して使われる場合もあります。
恋はいつも順風満帆とはいきませんが、晴れた空に瞬く流れ星のように日常に煌めきをもたらしてくれるはずです。
心に穏やかさが訪れる瞬間、言い出せずにいた「言葉のつづきを贈る」つもりです。
だから「look at me (僕を見て)」と語りかけます。
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君に夢中
I say, I love you
僕の瞳にずっといて
来世でも 前世でも
ずっと会いたくて
君に夢中
四六時中
ちゃんと言うから ねぇ聞いて
何回でも 何万回でも
名前を呼ぶよ
Will you stay with me forever?
≪夢中 歌詞より抜粋≫
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「君に夢中」な主人公が伝えたい言葉は「I love you」。
さらに「僕の瞳にずっといて」という言葉は、自分の目の前にいつもいてほしいという願いの表れです。
たとえ生まれ変わってもまた巡り合いたいと思っているので、口下手で不器用でも「四六時中 ちゃんと言うからね」と約束しています。
そして「何回でも 何万回でも 名前を呼ぶよ」と伝えているのも印象的です。
人の名前を呼ぶのは、一種の愛情表現といえます。
だから人生を共にする間、何度でも名前を呼んで想いを伝えたい気持ちが込められています。
「Will you stay with me forever? (ずっと僕と一緒にいてくれる?)」という問いかけに、結婚の誓いが垣間見えるでしょう。
日常の中で大きく育つ恋の花

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月夜照らされる横顔
見惚れる時間がもっと欲しいよ
心に君映るたび
Make me hot
正直になれずにずっと
Torn in love
≪夢中 歌詞より抜粋≫
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ここでは月夜に愛する人と過ごし、その美しい横顔に見惚れる穏やかな時間が描かれています。
その時間がこれからも続いてほしいと願っているのでしょう。
それでも、ときめく気持ちが心を熱くしてくれるのに「正直になれずにずっと Torn in love (愛に引き裂かれて)」いるとも明かしています。
気持ちをうまく言葉にできないことに、本人が一番苦しんでいることが伝わってきます。
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ただいまとおかえり
幸せ跳ね返し
傍らにさりげなく咲いた
恋の花
ずっと一緒
言葉はいらないよ
心のもっと奥で覚えてるから
≪夢中 歌詞より抜粋≫
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「ただいまとおかえり」を繰り返す何気ない日常は「幸せの跳ね返し」。
「傍らにさりげなく咲いた恋の花」とあるように、その日常の中で二人の恋はゆっくりと育まれていきます。
具体的な言葉はなくても「心のもっと奥で覚えてるから」、これからも変わらずずっと一緒にいて心を通わせていきたいという深い愛情が示されています。
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Please
その涙と一緒に
溢れ落ちそうな祈り
すぐ拭いに行くから
僕を呼んで
抱きしめるずっと
ひとり泣かないよう
≪夢中 歌詞より抜粋≫
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人生には涙が堪え切れない瞬間がいくつもあるものです。
そして、愛する人が悲しむのを見たくないと思うのも当然の気持ちでしょう。
「祈り」は普遍的な希望や感謝を込めた行為です。
それが「涙と一緒に溢れ落ちそう」になっているということは、当たり前の想いすら搔き消されてしまいそうなほど困難な状況にあると解釈できそうです。
しかし、そんなときは「すぐ拭いに行くから 僕を呼んで」と伝えています。
そして「抱きしめるずっと ひとり泣かないよう」と約束しています。
愛する人が悲しむときには、自分が支えになり癒したいという温かな思いが読み取れるでしょう。
誰かに夢中になるということは、相手や自分の不器用さや弱さを受け止めて全てを愛するということなのかもしれませんね。
愛する気持ちの尊さを感じるピュアなラブソング!
BE:FIRSTの『夢中』は、少しずつ愛を深めていく二人の温かく優しい心情が凝縮された楽曲です。身近な相手だからこそ素直に気持ちを表現するのが難しいことがありますが、名前を呼んだり悲しいときに駆けつけたりするだけでも十分に想いは伝わります。
人を想う気持ちの尊さを思い出させてくれる歌詞と歌声をじっくりと味わってくださいね。