“初音ミャク”が歌う万博の楽しさ
2022年に“ボカロと歌うボカロP”としてデビューした、いま注目のボカロP・Kish.。彼が2025年5月5日にYouTubeにて公開し、6月5日より配信リリースした初音ミク歌唱のボカロ曲『パビリオン』は、大阪・関西万博非公式イメージソングとなっています。
この楽曲はKish.自身が万博開幕日に感じたワクワクを凝縮した作品です。
万博会場では各エリアで多様なサウンドが流れていますが、時報のタイミングになると同じEコードで会場全体に調和を生む演出が行われています。
『パビリオン』ではその要素を取り入れ、キーをEにしたりラストでEを伸ばしたりと会場のサウンドと調和することを意識して制作したそうです。
懐かしさも感じるポップな曲調で、万博の楽しい雰囲気が伝わってくるでしょう。
MVには公式キャラクターのミャクミャクと初音ミクをかけ合わせた二次創作キャラ「初音ミャク」が登場し、SNSで大きな盛り上がりを見せています。
歌詞には万博がどのように描写されているのか、意味を考察していきましょう。
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パビリオン
なあ なんでやろ?
ボクのカタチ 不定形の
赤と青が混ざり合う 細胞みたいなメロディ
ドロドロしちゃって
ギョロギョロしちゃって
気味悪がられる日もあるけど
ボクのカラダもチキュウの形も
境目なんて無いんやさかい!
≪パビリオン 歌詞より抜粋≫
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歌詞は関西弁を意識したフレーズで、テンポよく展開されているのが印象的です。
ミャクミャクは、細胞と水がひとつになって生まれた“脈”をイメージするキャラクター。
「不定形の赤と青が混ざり合う 細胞みたいな」姿を持っています。
なりたい自分を探して「ドロドロ」と様々な形に変化しながら、複数の「ギョロギョロ」した目で周囲を見つめます。
その奇妙な姿は「気味悪がられる日」もありますが、不思議と人の心を惹きつけていますね。
「ボクのカラダもチキュウの形も 境目なんて無いんやさかい!」の言葉にも、深いメッセージを感じます。
脈は「ひとすじになって続くもの」という意味がある言葉です。
血脈は全身を巡って各部位を支え、人脈は多様な人々を繋いでいきます。
世界も国ごとに異なるためぶつかり合うことがありますが、宇宙から見れば境目のないただひとつの星です。
世界が同じ方向を向いて繋がり合っていることの大切さを思い出させてくれます。
ゲートをくぐれば広がる夢見た世界

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BANPAK&U?
何やねんそれ 美味しいの?
よう分からんかも 知れへんけど
要は 世界の文化祭よ!
≪パビリオン 歌詞より抜粋≫
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万博は、万博のことや国々の文化について知らないと楽しめないというわけではありません。
「世界の文化祭」だから、そこに来てただ楽しめばいいのだという想いが伝わってくるでしょう。
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シテ…シテ…
んもぅ!
気になっちゃってんなら
おいでやす
脈 脈打って
いのちを描こう
此処で会えたら
どこでも行けそう!
ゲートをくぐれば 広がる
空 海 洲の
夢見た世界が
感情の輪の中で
どこでも行けそうや!
≪パビリオン 歌詞より抜粋≫
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万博のことが気になっているなら、ひとまず来るようにと誘っています。
感じる脈拍は命を表し、命があれば人脈が広がります。
万博会場に行けば様々な国のパビリオンがあり、文字通り「どこにでも行けそう」です。
ゲートをくぐれば「夢見た世界」が広がっています。
「感情の輪」は自分自身の感情と、会場のシンボルである大屋根リングをかけ合わせているのでしょう。
一人の人の心の中に複雑な感情が存在するように、万博会場には全く異なる文化を持つ国々が一堂に会しています。
「空 海 洲」を臨む小さな地球のような壮大な様子が垣間見えます。
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得阿耨多羅二藐三菩提
色即是空 空即是色
羯諦 羯諦
パビリオン
≪パビリオン 歌詞より抜粋≫
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この部分のフレーズは般若心経の一節です。
これには「最高の智慧によって仏の悟りを得るために行こう」という意味があります。
その行き先は万博です。
万博のパビリオンで国々の文化を見て、世界の在り方を知る価値が示されています。
EXP0から何にでもなれる

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脈 脈打って
いのちを探そう
EXP0でも
何にでもなれそうや。
知らんけど。
ミャクミャクニ…シテアゲル…
極東の国から こんにちは
関西の国から さようなら
≪パビリオン 歌詞より抜粋≫
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世界の文化を知ることは、そこに生きる人々の人生を見ることでもあります。
命ある限り自分とは異なる文化を知ろうとするのは、国々が関わっていくうえで大切なことです。
続く部分では、EXPO(エキスポ)を「EXP0(経験値ゼロ)」と表現しているのがユニークですね。
万博会場に辿り着いたときにはまだ何も知らないとしても、そこでそれぞれの文化を見たり感じたりすれば「何にでもなれそう」です。
VOCALOIDオリジナルの代表曲『みくみくにしてあげる♪【してやんよ】』をもじって使われている「ミャクミャクニ…シテアゲル…」のフレーズからも、万博で世界に魅了される体験ができることが伝わってきます。
そして1970年の大阪万博のテーマ曲として生まれた『世界の国からこんにちは』を思わせる言葉が続き、万博の歴史や世界の繋がりも感じられるでしょう。
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脈 脈 脈打って
いのちを 絶やさぬように
個 個 で会えたら
握手でもしよう
ゲートを抜けても 広がる
今日 明日 明後日の
輝く未来が
環状の和を外へ
パビリオン
≪パビリオン 歌詞より抜粋≫
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世界がひとつになれば罪のない命が奪われることはなく、命を繋ぎ続けられます。
「個 個 で会えたら 握手でもしよう」とあるように、人を国籍や人種で見て差別せずその人自身を見て知り合い絆を深めていくことこそが重要です。
万博会場で得たなと知識や楽しさは「ゲートを抜けても 広がる」でしょう。
万博はまるで世界の縮図です。
人々の心がひとつになれば、そこに築かれた境界のない世界という「輝く未来」が地球全体に広がっていくはずです。
そのような明るい希望と切実な願いが垣間見えます。
大阪・関西万博がもっと楽しくなる!
Kish.の『パビリオン』は、万博の情景とそこにある世界への思いがポップに綴られた楽曲です。日本から世界に広まった初音ミクの歌唱により、日本を中心に世界の輪が繋がっていくようなイメージも感じられます。
この先も大阪・関西万博を印象的な思い出にしてくれそうですね。