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ピノキオピー「T氏の話を信じるな」歌詞の意味を考察!”真っ赤な嘘”と救済の危険性

こちらは初音ミクと重音テトが歌唱する楽曲で、『T氏の話を信じるな』という何とも不気味なタイトルになっています。 初音ミク・重音テトは、『メズマライザー』や『オブソミート』などといった人気楽曲でもよく見かける組み合わせですね。 この不思議なタイトルの楽曲は何を歌っているのか、詳しく考察していきます。

信じられない信仰者。「あくまで」の意味とは?

まず、『T氏の話を信じるな』というタイトルについてですが、こちらは「洋子の話を信じるな」という、一時期話題になった都市伝説をパロディとして扱っているのかもしれません。

とあるテレビ番組にて、失踪した女性の家族がインタビューを受けている映像に、そのメッセージが映り込んでいるという内容です。

未だ未解決の非常に不気味な事件です。

楽曲を手掛けたピノキオピーは、そのキャッチーさとインパクトからこのタイトルを付けたのでしょうか。

曲を聴いてみると、重音テトは水晶を覗き込み導きを解く”教祖”であり、初音ミクは手を組み祈りを続ける”信仰者”という立場であることが分かります。

▲ピノキオピー feat.初音ミク,重音テト-T氏の話を信じるな【OFFICIAL MUSIC VIDEO】

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ねえ知ってる?
人生って舐めると甘い味がするの へえ
ねえ知ってる?
艱難辛苦 裏技使えばイージーモード へえ
そして 僕に課金すれば君はもっと幸せになれるよ
へえ そうなんだ~ ためになるなあ
T氏の話を信じましょう
≪T氏の話を信じるな 歌詞より抜粋≫
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では歌詞を読み解いていくと、冒頭から重音テトは、いくつも歌詞通りの甘い言葉を投げかけています。

それを初音ミクは全て飲み込み、盲目的に信じているように感じさせます。

ですが「僕に課金すれば君はもっと幸せになれるよ」と言い、直後にチャリンチャリンとコインの効果音が鳴っていることから、純粋に幸せを願っているのではなく、金儲けの道具としか考えていなさそうだと分かります。

その後の短い間奏では、重音テトが催眠術をかけているシーンが続きます。

5円玉を振りながら「あなたはだんだん眠くなる~」と繰り返す催眠術があるように、この楽曲でも甘い言葉を何度も繰り返しているのは、催眠術と同様の効果を狙っているのかもしれませんね。

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よしよし 僕の教えに従順な君を愛してあげるよ
へえ そうなんだ~ 好きになっちゃう
T氏にすべてを捧げましょう
≪T氏の話を信じるな 歌詞より抜粋≫
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その言葉を繰り返す最後に、「よしよし 僕の教えに従順な君を愛してあげるよ」とあります。

その妄信的な姿勢を買っていることが伝わってきますね。

ですが、注目してほしいのは初音ミクの方です。

「へえ そうなんだ~ 好きになっちゃう T氏にすべてを捧げましょう」と返答していますね。

一見すると、”好き”や”捧げる”といった好意的な言葉が羅列されているようですが、その実、「へえ そうなんだ~」という非常に薄いリアクションと、現時点では「まだ好きではない」という完全に信仰していない気持ちが現れているように感じました。

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T氏の話を信じるな
フェイクの愛に依存すんなって
言わないで やだ
信じなきゃ 狂っちゃうわ
≪T氏の話を信じるな 歌詞より抜粋≫
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その後は、「信じることを否定された」ことへ狂気を孕んだ哀しみが見えます。

初音ミクはどこかで自分自身が良くないものを信仰している、と気付いているように窺えます。

このようなポップな曲調の中で、初音ミクは何かしらの悲惨さを味わっているのかもしれません。

「信じなきゃ 狂っちゃうわ」という言葉から、どんな人(教祖)でも良いからと。

縋りつくように、”盲目の信仰”を能動的にしているように見えました。

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私はあくまで正常です あくまで正常です
そうそう あなたは正常です って
≪T氏の話を信じるな 歌詞より抜粋≫
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みんなが悪魔で異常です 悪魔で異常です
そうそう みんなが異常です って
≪T氏の話を信じるな 歌詞より抜粋≫
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次に気になったのがこちらの対比する歌詞です。

自分は「あくまで正常」と言いつつ、他のみんなが「悪魔で異常」と言い放っています。

“例外のない”という意味で用いられる「あくまで」と、自分を否定するみんなを悪魔だと直喩する言葉遊びが面白いですね。

しかし、はじめの「あくまで」という言葉を「飽くまで」、つまり「飽きるまでは正常だよ」と言っていると解釈しました。

この解釈に関して、MVの初音ミクの恰好を見ると、身に着けているアイテムが、缶バッジやキーホルダーといった量産可能なファングッズであることから、教祖の存在を「すぐに変えが利くコンテンツ」のような扱いをしているように受け取れます。

現代には”推し文化”があるように、新たなコンテンツで飽和する中で「飽きるまで沼にハマろう」というようなカジュアルな信仰である一面も窺えました。

絶望の淵での回避行動が孤独を引き寄せた


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FAKEか? REALか? 見分けつかん愛
FAKEか? REALか? 悩む時間ないわ
TはTRUEのT そう答えてダンシング
≪T氏の話を信じるな 歌詞より抜粋≫
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少し曲調が変わり「FAKEか REALか」という問いかけをしていますが、結局出た答えはFAKEでもREALでもなくTRUEという第三の答えでした。

二つの選択肢から答えずに、オリジナルの選択肢を生み出し選ぶというのは、一種の回避行動に思えました。

本当でも嘘でも良いから、今だけは支えになってほしい」という願いのようにも感じます。

そのポップな曲調や可愛らしいキャラクターに隠れているのかもしれませんが、もしかしたら本当に極限状態での信仰なのかもしれませんね。

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ねえ知ってる?
脳内のお花畑には枯れないように水をやるといいよ へえ
それを邪魔するあの子といたら不幸になる 縁を切るといいよ へえ
そして 僕を否定する馬鹿はこの世から消そう
≪T氏の話を信じるな 歌詞より抜粋≫
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そんな彼女を洗脳する言葉は何度も繰り返されます。

「脳内のお花畑には枯れないように水をやるといいよ」と言うように、もう既に”お花畑が完成して”手中に収まっていることを告げています。

立て続けに「それを邪魔するあの子といたら不幸になる 縁を切るといいよ」「そして 僕を否定する馬鹿はこの世から消そう」と、初音ミクを孤立させようと様々な言葉を投げかけ続けます。

はじめは軽い気持ちで信仰しようとしていましたが、その洗脳が続くうちに、本当に孤立してしまい助けてもらえる選択肢を消してしまったようです。

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へえ そうなんだ~ それは名案
T氏の話を信じましょう
T氏の言う通り〇しましょう
≪T氏の話を信じるな 歌詞より抜粋≫
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そんな精神状態でのこの思考は、とても危険に映ります。

はじめの「へえ」は薄いリアクションだと感じましたが、こうなってしまうと完全に自我を失ってしまった上での「へえ」というリアクションのように感じます。

最終的には「T氏の言う通り〇しましょう」という答えに辿り着き、家族・友人・恋人などの近しい人がいなくなってしまったように思えます。

本当に孤独になってしまいましたが、この洗脳が解けた時、彼女は一体どうなってしまうのでしょうか。

「真っ赤な嘘」と重音テトの関係性。騙された悲劇のヒロイン


ラストにかけて、信仰心を強固にしていったけれど、その気持ちが抜けていった後が描かれています。

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T氏の話を信じるな
真っ赤な嘘に期待すんなって
言わないで やだ
真実じゃ救われないから!
≪T氏の話を信じるな 歌詞より抜粋≫
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ここでも「真っ赤な嘘に期待すんな」と信仰を否定されていますね。

この”真っ赤な嘘”とは、重音テトの存在を表しているようにさえ感じます。

単に髪色だけでなく、重音テトとは、架空のボーカロイドとして”嘘から生まれた存在”だからです。

そうした背景も込めて、「真っ赤な嘘(=重音テト)に期待すんな」と言っているようにも思えますね。

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T氏の話を信じるな
レアな命を棒に振んなって
言っても無駄さ
走馬灯がきらきら
≪T氏の話を信じるな 歌詞より抜粋≫
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特にここで出てくる「レアな命を棒に振んなって」という言葉が印象に残りました。

誰かが言っている数々の言葉は、きっと彼女を心配して掛けてくれた言葉だと思います。

強い怒りの感情が見える言い方ですが、それすらも彼女には届かないものであり、その言葉はどこかへ消えてしまう。

そんな哀しみを感じ取りました。

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T氏の話を信じてた
騙されていたんです 私は騙されていたんです
T氏の話を信じてた
幸せだったんです 確かに幸せだったんです
≪T氏の話を信じるな 歌詞より抜粋≫
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そして最後、「T氏の話を信じてた」という過去形の表現と、MVでの缶バッジやキーホルダーが弾け飛んだような演出から、ようやく洗脳が解けたことが分かります。

しかし「騙されていたんです」の繰り返しから、あくまで自分は被害者であったと、多くの人たちに対して”悲劇のヒロイン”として振舞っているようです。

続く、「幸せだったんです」の繰り返しは、どこの誰でもなく、自分自身への洗脳として作用させたいのだと考えます。

これまで繰り返されることで洗脳されてしまった体験を、今度はそれを自分のために使おうと奮闘しているのかもしれません。

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T氏の話を信じるな
いやいや
そして この歌も信じるな
≪T氏の話を信じるな 歌詞より抜粋≫
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そして「T氏の話を信じるな」と完全に教祖を敵と見なしている発言があり、同時に「いやいや そして この歌も信じるな」とメタ的に視聴者に訴えかけることで、この曲を歌うボーカロイド達との壁を無くし「誰もがこうなる」と危険通告をされた感覚に陥りました。

これは、誰しもが色々なコンテンツに手軽に触れられる時代になったことで、様々な危険も潜んでいることを示唆しているのではないかと考えました。

匿名であることが良くも悪くもあり、見えない誰かに救いを求めることは危険が伴うことを忘れてはならないといったメッセージが隠されているのかもしれません。

信仰することの怖さを歌った楽曲

初音ミク・重音テトが歌う『T氏の話を信じるな』は、楽し気な曲調の中で、誰かを信仰して依存することへの危険性が描かれていました。

また、重音テトが生まれた背景を存分に活かし、「真っ赤な嘘」という言葉を編み出しているところがユーモラスで面白かったですね。

ピノキオピーは、知っている人がクスッと来るようなネタを組み込んでおり、色々と調べてみると楽しい曲が多いので、他の楽曲も色々と聴いてみるのも良いのではないでしょうか。

この特集へのレビュー

男性

Azure

2025/09/15 11:57

この曲最後で「そしてこの歌も信じるな」って言ってるのが天才だと思う

そのほか

かめさん

2025/08/06 19:10

T氏の話を信じるな
真っ赤なウソに期待すんなって
言わないで やだ
真実じゃ救われないから

そのほか

おーおーばーらいど

2025/07/29 14:57

重音テトって2ちゃんねるのエイプリルフールで誕生したんだっけ?

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