デビュー10周年で再リリースするミセスの隠れた名曲
Mrs. GREEN APPLEが2025年7月8日にリリースした、デビュー10周年を記念するアニバーサリーベストアルバム『10』。その収録曲のひとつである『慶びの種』が、ファンの間で大きな話題を呼んでいます。
『慶びの種』は大森元貴が17歳の頃に書いた楽曲であり、インディーズ時代に制作された初の音源作品である1stミニアルバム『Introduction』のシークレットトラックとして収録されていました。
ライブ会場限定で販売されていたもので現在は入手困難のため、新しいファンの間ではほとんど知られていないでしょう。
今回『10』に収録するにあたり新たにレコーディングされ、アコースティックギターのみで歌い上げるシンプルな構成から、オーケストラのメロディと優しく語りかけるような歌声が、美しい壮大なアレンジにブラッシュアップされています。
制作から10年の時を経て改めてどのような想いを伝えようとしているのか、歌詞の意味を考察していきましょう。
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夜が来ると不安になってさ
朝が来ると忘れちゃって
所詮僕の悩みなんかは
日の光で助かるんだもん
≪慶びの種 歌詞より抜粋≫
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年齢や立場に関係なく、人生には悩みがつきものです。
特に暗く静かな夜を過ごしていると、過去の失敗や自分の不甲斐なさ、将来への迷いなど様々な暗い考えが浮かんできて不安になるでしょう。
それなのに、朝が来ると不思議と何で悩んでいたか忘れてしまうことがあります。
主人公はそうした日々を繰り返しているため、「所詮僕の悩みなんかは 日の光で助かるんだもん」と明るく語っています。
これには毎日降りかかる悩みは一時的な感情だから悩みすぎる必要はないこと、考え方次第で悩みは晴らせることを示しているように感じます。
良いときも悪いときも前向きでいよう

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案外いつも答えってやつは
いつも近くに隠れててさ
怖いなら叫べばいい
何も恐れることはないよ
信じれないなら信じなきゃいい
空が晴れるのを待てばいい
≪慶びの種 歌詞より抜粋≫
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問題にぶつかると、答えが見つからず苦しむこともあるでしょう。
しかし、ここでは「案外いつも答えってやつは いつも近くに隠れててさ」と綴られています。
悩みを誰にも打ち明けられず1人で悩んでいると気が滅入りそうになりますが、ふと言葉にしてみると、途端に答えが見つかったという経験をした方も多いのではないでしょうか。
「怖いなら叫べばいい」というフレーズは、そのことを示していると思われます。
感情を押し殺さず素直に叫んでみれば、心が軽くなって答えの糸口に気づけるのかもしれません。
自分では気づけなくても、誰かが助けてくれることもあります。
「何も恐れることはない」し、「信じれないなら信じなきゃいい」。
たとえ何もできないとしても「空が晴れるのを待てばいい」という精神で、いつも前向きでいるよう優しく促してくれます。
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いつかきっと分かるんだろう
いろんなことに気づいちゃうのだろう
案外いつも幸せはさ
ずっと近くにあるのにさ
流れる汗はいつか
零れる涙はいつか
溢れる笑顔はいつか
大事な大事なものになるよ
大事な大事なものになるよ
≪慶びの種 歌詞より抜粋≫
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歳を重ねていくと、子どもの頃には分からなかったことが分かってきたり、見えなかったことに気づいたりするものです。
しかし、知っていることや考えることが増えれば増えるほど、目の前にあるシンプルな答えにさえ気づけないこともあります。
「案外いつも幸せはさ ずっと近くにあるのにさ」という言葉に、大人になることに付きまとう切なさが垣間見えますね。
「流れる汗」は努力、「こぼれる涙」は悲しみや後悔と言い換えられるでしょう。
そうした苦労や心を揺さぶる感情は、大人になるにつれて避けたいと思ってしまうものかもしれません。
しかし、それらの積み重ねが「あふれる笑顔」に繋がっています。
繰り返される「大事な大事なものになるよ」のフレーズから、人生で直面する良いことも悪いことも全てに価値があるというポジティブな見方が読み取れますね。
「慶びの種」に込められたメッセージとは?

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支えては支えられて
傷つけ傷つけられて
忘れては忘れられて
思っては思われてさ
本当にバカバカしいね
でも嬉しく思うよ
まだまだ捨てたもんじゃないってね
≪慶びの種 歌詞より抜粋≫
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人生は複雑な人間関係で成り立っています。
自分が助けた人に助けられる日もあれば、大切な人と傷つけ合ってしまう日もあります。
忘れがたい思い出なのに忘れてしまうのも、完璧ではない人間の性です。
そうした弱さで何度失敗しても、純粋に湧き上がる愛でまた繋がろうとする姿は「本当にバカバカしい」とさえ思えるでしょう。
しかし、その人間らしさが小さな幸せを生むため嬉しくも思えます。
「まだまだ捨てたもんじゃない」と感じるから、落胆や失望を乗り越えて人と繋がり続けるのではないでしょうか。
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愛しては愛されてさ
求めては求められてさ
疎んでは疎まれてさ
解れず解られずに
恋をして育まれては
生きてる歓びとなり
信じて信じられたら
生きゆく歓びとなる
≪慶びの種 歌詞より抜粋≫
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誰とでも簡単に愛し合えるなら問題は起こりません。
愛しているからこそ相手に過剰に求めてしまい、不和やすれ違いが生まれることがあります。
さらに、それぞれ違いがあるために疎んだり理解できなかったりして、関係の溝が深まってしまうのも避けられないことです。
それでも人は孤独や悲しみの中で想い合える人と出会い、「生きてる歓び」を見い出します。
そして繋がりを深め信頼関係を築けたら、それはこれからを「生きゆく歓び」になるでしょう。
今の歓びが未来の希望になっていく様子が示されています。

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いくつもの慶びの種が
花を咲かせ 空を晴らすの
≪慶びの種 歌詞より抜粋≫
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毎日の中で生まれる「いくつもの慶びの種」が大きく育つことにより、やがて心の曇りを晴らしてくれます。
またここまでは「歓び」と表現されていましたが、最後に「慶び」と表記が変わっている点にも注目しましょう。
「歓び」は願望が叶ったことで湧き上がる嬉しさを示す一方で、「慶び」は祝いに限定して用いられます。
この違いから、小さな歓びの積み重ねが人生そのものを慶事にしてくれるというイメージが伝わってくるのではないでしょうか。
だからつらい現実に打ちのめされる必要はないと慰めてくれているように感じます。
“慶びの種”が見つかる人生讃歌!

Mrs. GREEN APPLEの『慶びの種』は、人生でもっと歓びを得るためのヒントとなる考え方が綴られています。
大切なのは、身近なところにある幸せに気づけるかどうかです。
気分が落ち込むときにはぜひ『慶びの種』を聴いて、前向きな気持ちになれるよう力をもらってくださいね。
【Mrs. GREEN APPLE PROFILE】 大森元貴 (Vo/Gt) 若井滉斗 (Gt) 藤澤涼架 (Key) 2013年結成。2015年EMI Recordsからミニアルバム「Variety」でメジャーデビュー。 以来、毎年1枚のオリジナルアルバムリリースと着実なライブ活動を続け、2019年12月から行われた初の全国アリーナツアー「エデ···
