広瀬すず出演のMVが話題に
10月8日(水)リリースのアルバム『あにゅー』に収録されている「筆舌」。10月22日(水)に公開されたMVに、広瀬すずが出演したことで大きな注目が集まっています。
MVは、RADWIMPSの公式YouTubeチャンネルにて公開されています。
映像では、広瀬すずが静かに歩きながら、過去の記憶を追うように進んでいく姿が印象的。
特別な動きがあるわけではないですが、歌詞のしっとりとした叙情と見事に呼応した演技から、涙がにじむような感情が伝わってきます。
筆舌の意味
「筆舌」とは、文字や言葉を意味する言葉で、通常「筆舌に尽くしがたい」と使われます。つまり、言葉にできない想い。
この曲には、まさにその名の通り、語り尽くせない人生の痛みや虚しさが込められています。
歌詞を見ていくと、「人生の断片や時間の経過を描くエピソードパート」「人生を受け止めるリフレインパート」「感情の核心・喪失と愛のサビパート」という3つの構成に分けられます。
それぞれのパートから、曲に込められたメッセージを紐解いていきます。
時間の経過と共に立ち現れる「生きる」という現実

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電話帳の中の人が少しずつ死んでいったり
唯一行きつけの居酒屋は潰れ変な店に変わったり
あんなに好きだった人が結婚して子供も産まれたり
その後シングルマザーになり久しぶりに連絡がきたり
ATMまで行って金貸した脚本家の彼は今や売れっ子だけど
あの時のなけなしの5000円はまだ返ってきてなかったり
≪筆舌 歌詞より抜粋≫
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これら「人生の断片や時間の経過を描くエピソードパート」では、淡々と描かれる日常の中に、確実に過ぎていく時間と喪失の積み重ねが表れます。
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ダチの腹に癌が見つかりなんかヤケに食らったり
いつ死んでもいいとか言ってた俺も検査に行ってみたり
小3だったあの生意気な親友の子供は今じゃ
高校にあがり親の金くすねコンドーム買っていたり
このペースで時が過ぎるなら一人ぼっちで死ぬ可能性が現実味を帯びて
人知れずぽつんと死ぬなら夏場は嫌だななんて思ったり
≪筆舌 歌詞より抜粋≫
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かつての友人、愛した人、思い出の場所。
それらが変わったり、失われたりするたびに、「生きるとは何か」という問いが深まっていきます。
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あの頃バンドを始めた仲間はほぼ辞めていたり
今の流行は歌って踊ったりヒップホップが占めていたり
「ただいま」も「おかえり」もない日々が人生の半分以上を占め
「それと引き換えに手にした喜びがあるじゃねぇかよ」なんて言い聞かしたり
「かつて音楽は人間の手によって作られた時代があったんだよ」なんてさ
そんな時代を前にまだ見ぬとんでもねぇ音楽を作りてぇなんざほざいたり
≪筆舌 歌詞より抜粋≫
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あの行きつけの店の店長は自殺だったこと
死ぬ3日前連絡があったけど 出られなかったこと
≪筆舌 歌詞より抜粋≫
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そしてRADWIMPSらしいリアリティのある言葉が、何気ない日常の一瞬を切り取りながら、ふと「死」や「老い」の気配を滲ませていく。
生きるということは、筆舌に尽くしがたいことの連続であり、その連なりの中で、悲しみも喜びも静かに受け入れていく。
そんな姿勢が感じられるパートです。
人生を受け止めるリフレイン

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生きてりゃ 色々あるよな
生きてりゃ 色々あるよなぁ そりゃそうだよなぁ
そりゃそういうもんだな
≪筆舌 歌詞より抜粋≫
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「生きてりゃ色々あるよな」の言葉が、まるで自分自身を落ち着かせるように繰り返されるパート。
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生きてりゃ 色々あるよな
生きてりゃ 色々あるよなぁ
きっとこれからだって想像をゆうに超えてこいや
≪筆舌 歌詞より抜粋≫
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生きてるって そういうもんだろ
生きてるって そういうもんだろ
きっとこれからだって そうありたいと思っちまうのさ
≪筆舌 歌詞より抜粋≫
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生きてりゃ色々あるよな
生きてりゃ 色々あるよな
生きてりゃ色々あるよな
生きてりゃ 色々あるよな
≪筆舌 歌詞より抜粋≫
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誰もが経験する痛みや喪失を肯定するように、「生きてりゃ色々ある」と呟く。
その繰り返しの中に、人生の「どうしようもなさ」と「それでも生きる」という決意が同居しています。
このパートは、物語の「地」を支えるような存在。
過去の出来事を受け入れ、次に進むための「呼吸」のような役割を果たしています。
曲全体の中で最もシンプルでありながら、最も普遍的なメッセージを放つフレーズです。
感情があふれ出る、「筆舌」の核心

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「ずっと」とか「絶対」とか「一生」とかないのはもうわかったから
せめてもう少しだけこのままで ねぇこのままでいさせて
失ってからしか気づけないような出来損ないとわかってるんだ
それなら俺は 俺をあと何回無くせば気づけるんだろう
君はいないのに 全然いなくなんないのは ねぇなんでなんだろう
≪筆舌 歌詞より抜粋≫
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「君はいないのに 全然いなくなんない」というフレーズは、喪失の痛みと愛情が交錯する象徴的な一節。
消えた存在を心の中で抱え続ける、その苦しさと温もりを、まるで祈るように歌っています。
「筆舌」というタイトルがここで真価を発揮します。
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「ずっと」とか「絶対」とか「一生」とかないのはもうわかったから
せめてもう少しだけこのままで ねぇこのままでいさせて
例え「さよなら」が来るとしても 出逢えた喜びでおかしくなんだ
俺は俺をあと何回だって 何回だって繋ぎ止めるよ
君はいないのに ずっとずっとここにいるのはねぇなんでなんだよ
≪筆舌 歌詞より抜粋≫
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どんなに言葉を尽くしても語りきれない想い。
それが「筆舌に尽くしがたい」という感情そのもの。
しかしこの曲は、そのような感情をそのままにせず、歌詞に書き、歌っています。
RADWIMPSは、筆舌に尽くしがたい「生の証」を、音楽という形で残しているのです。
RADWIMPS「筆舌」が描く、生きるということ

広瀬すずが歩く姿のように、私たちもまた、過去の記憶を背負いながら歩き続けています。
あなたは「生きてりゃ色々あるよな」という言葉に、どんな感情を重ねましたか?
言葉では語り尽くせない想いを、あえて言葉にする。
まさに「筆舌」というタイトルの意味を、あなた自身の人生の中にも見出してみてください。