猫猫を想う壬氏の不器用な恋心
2025年1月10日にリリースされた平井 大の『幸せのレシピ』は、同日より放送されたTVアニメ『薬屋のひとりごと』第2期エンディング主題歌です。『薬屋のひとりごと』は日向夏が著、しのとうこがイラストを手がけるライトノベルを原作に、毒と薬に異常な執着を持つ薬屋の娘で毒見役の猫猫が、後宮の様々な難事件を解決する物語。
同作では、猫猫と謎多き美形の宦官・壬氏との恋模様も注目されています。
『幸せのレシピ』は、そんなふたりの関係性を壬氏の目線から描いていた楽曲となっています。
優しいメロディと平井 大の温かい歌声が壬氏の心情とリンクし、恋の切なさと喜びを感じさせてくれるでしょう。
YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」にて3月12日に公開された動画では、本人のギター弾き語りにピアノとパーカッション、ベースとストリングスを加えた豪華なアレンジで披露されました。
アニメを飛び越え、誰にも当てはまる普遍のラブソングとしても絶賛される『幸せのレシピ』の歌詞の意味を考察していきましょう。
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なぜか「キミ」にだけ「ボク」が伝わらない
募れば募るほどに苦しくなるよ
"良薬は苦し"なんて笑って言っていたけど
今更わかった
≪幸せのレシピ 歌詞より抜粋≫
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主人公にとって「キミ」は片思い中の相手です。
「なぜか「キミ」にだけ「ボク」が伝わらない」とあるように、好きな人にだけ自分の気持ちや考えが伝わらないもどかしさを感じています。
その想いが「募れば募るほどに苦しくなる」状況です。
良い薬は病気に効くものの苦いことを指して「良薬口に苦し」といわれますが、主人公は恋もそれに似ていることに気づきます。
叶えば大きな幸福を得られますが、いつも甘いわけではなく、叶うまでは苦い想いをしなければならない瞬間があります。
それでもこの恋を手放せないのは、この想いが薬のように境遇や立場も関係なく自分を癒してくれるのを感じるからなのではないでしょうか。
全ての瞬間が“幸せのレシピ”

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悪い夢なら醒めてと願う日も
誰にも言えない秘密も
掛け違えたボタンもあの夜も
幸せのレシピかもね
≪幸せのレシピ 歌詞より抜粋≫
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生きていれば、毎日様々な出来事が身に降りかかります。
「悪い夢なら醒めてと願う」ほどつらい日もあれば、「誰にも言えない秘密」に苦しめられる日もあるでしょう。
大切に思っているのに考えが噛み合わず「掛け違えたボタン」のようにすれ違ったことも、後悔や無力さを味わった「あの夜」も、思い返すと悪いことばかりが目につきます。
しかし、主人公はその日々を「幸せのレシピかもね」と肯定的に受け止めています。
苦しい状況に陥ると、そのときはひどく落ち込んでも、後になってその経験により心が強くなったり、別の道が拓けたりしたことに気づく場合があります。
そう考えると、どの出来事も、幸せになるために必要な瞬間だったと思えるのではないでしょうか。
このように前向きな見方をしていれば、うまくいかない恋に対してもポジティブな気持ちでいられるでしょう。
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例えば「ボク」がボクじゃなければ
「キミ」がキミじゃなければ…
なんで でも記憶の一つ一つが
「キミ」を呼ぶんだ
閉ざしていた日々と鎖していたココロ
魔法みたいに溶かしてく
いろんな「キミ」がいる
この世界が結局 ほら、好きなんだ。
≪幸せのレシピ 歌詞より抜粋≫
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人を好きになっても、必ず相手から好きになってもらえるわけではないのが、恋の難しいところです。
主人公も「例えば「ボク」がボクじゃなければ 「キミ」がキミじゃなければ…」と考えてしまうことがあります。
もしかしたら、自分の何かが違えば好きになってもらえたかもしれない、相手の何かが違えば想いは通じ合ったかもしれない。
そんな不毛な考えが頭を過ぎりますが、心は違うことを伝えてきます。
「記憶の一つ一つが 「キミ」を呼ぶんだ」とあるように、全ての記憶は「キミ」だから起こったこと。
自分の「閉ざしていた日々と鎖していたココロ 魔法みたいに溶かしてく」のは、「キミ」にしか成し得なかったことです。
その事実を振り返り、主人公は「キミ」が「キミ」だから好きになったことを思い出したようです。
報われない恋に心が痛んでも、平井 大「幸せのレシピ」アニメMV│TVアニメ『薬屋のひとりごと』第2期 EDテーマという言葉に、晴れやかな気持ちが垣間見えます。
奇跡のような出会いから生まれる大きな愛

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なぜか「ボク」にだけ「キミ」がわからない
知ろうとすればするだけ難しいのさ
"案ずるより…"なんてわかっているつもりだけど
今更言えない
≪幸せのレシピ 歌詞より抜粋≫
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ほかの人はうまく関係を築いているように見えるため、「なぜか「ボク」にだけ「キミ」がわからない」と感じます。
「知ろうとすればするだけ難しい」から、どうすればいいのかわかりません。
「案ずるより産むが易し」ということわざには、物事はあれこれと心配するよりも実際に行動してみると案外容易いものだという意味があります。
その言葉が真実であることは理解していても、関係が近くなるにつれて想いを「今更言えない」とためらってしまうのは仕方がないことでしょう。
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態度の割に繊細なことも
口は悪いけど優しいとこも
照れ隠しのトゲも正義感も
キミだけのレシピなんだ
≪幸せのレシピ 歌詞より抜粋≫
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この歌詞では相手の特徴を並べて、それら全てが「キミだけのレシピなんだ」と告げています。
それはその人を構成する重要な部分であると同時に、主人公が惹かれる部分でもあるのでしょう。
まさしく壬氏の猫猫への想いが伝わってくる歌詞ですね。
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例えば「ここ」がここじゃなければ
「今」が今じゃなければ…
出会えてない そう想えばなんか
悪くはないな
閉ざしていた過去と鎖していた明日を
魔法みたいに繋いでく
幸せのレシピが溢れる
世界がとっても ほら、好きなんだ。
≪幸せのレシピ 歌詞より抜粋≫
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広い世界の中で場所やタイミングが少しでも違えば、出会うことすらなかったはずの二人。
奇跡のような確率で出会えたことを考えれば、想いが通じ合わない間も「悪くないな」と思えます。
「閉ざしていた過去と鎖していた明日を 魔法みたいに繋いでく」この出会いは尊いものです。
共に過ごす毎日に「幸せのレシピが溢れる」のを感じます。
ラストの「世界がとっても ほら、好きなんだ。」というフレーズから、たった一人の人を愛する気持ちがもっと大きな愛に繋がっていくことが読み取れます。
苦くて甘い恋の魅力が詰まったラブソング!
平井 大の『幸せのレシピ』は、恋の難しさや苦しい心情を描きながらも、出会えた喜びや愛の煌めきを思い出させてくれる温かなラブソングです。誰にとっても恋は簡単ではないからこそ、全ての人が共感し前向きな気持ちになれる歌詞だといえるでしょう。
壬氏と猫猫の恋だけでなく自分自身の恋とも重ね合わせながら、じっくりと聴いてみてくださいね。
