久石譲の代表曲はジブリ音楽だと思っている人が多いかもしれません。
しかし、ジブリ以外でも多数の有名曲や人気曲があります。
誰もが懐かしさを覚えるような彼の曲は、映画音楽やCMソングなどで、日頃から耳にしている曲も多いでしょう。
この記事でわかること
久石譲の代表曲といえば「Summer(サマー)」
久石譲の代表曲と言われる「Summer(サマー)」は、北野武監督の映画「菊次郎の夏」のメインテーマ。
車や清涼飲料水のCMソングにも起用され、久石譲自身のセルフカバーもある人気曲です。
日本の懐かしい夏の雰囲気があり、聴く人それぞれの幼い頃に過ごした夏が蘇るでしょう。
この曲は、映画の主題曲ではなく第2テーマ(副題)として作曲されたのですが、北野武監督が気に入ったため、主題と副題が入れ替わったというエピソードがあります。
久石譲の代表曲9選|ジブリ
作曲家久石譲の名前を世界的に広めたのは、ジブリ映画の映画音楽と言っても過言ではないでしょう。
1984年の「風の谷のナウシカ」から、最新作「君たちはどう生きるか」までの約40年間に渡って、ジブリの長編アニメ映画の音楽を全て担当しています。
次は、ジブリ作品で使用された久石譲の代表曲を紹介します。


ナウシカ・レクイエム
久石譲が初めて宮崎駿監督の映画音楽を担当した、記念すべき長編アニメ映画「風の谷のナウシカ」で使用された曲です。
幼いナウシカが「ランラン、ランララランランラン」と歌う、叙情的なシーンで流れます。
この曲を歌ったのは、なんと当時4歳だった久石譲の娘・麻衣さんで、現在は歌手として活躍していますよ。
「風の谷のナウシカ」の音楽は細野晴臣が担当する予定でしたが、作品のイメージに合わないからと、中止になりました。
そして、漫画版のイメージアルバムを制作した久石譲に白羽の矢が立ち、伝説的な名コンビが誕生したのです。
君をのせて
1986年のジブリ映画「天空の城ラピュタ」の主題歌です。
「君をのせて」は映画のエンディングテーマとして久石譲作詞、作詞は宮崎駿で制作されました。
最初はサウンドトラックの1曲でしたが、人気が高まったことで後にシングルカットされています。
劇中曲「シータとバズー」に、歌詞が当てはまるようにサビを追加して作られた曲で、映画のクライマックスを盛り上げる、感動的な曲調です。
オリジナルは井上あずみが歌っており、他にも家入レオや高橋洋子など、さまざまなアーティストによってカバーされています。
海の見える街
1989年のジブリ作品「魔女の宅急便」で、使用されている楽曲です。
キキが魔女の修行をするために引っ越した街コリコをイメージして作曲されています。
この曲を聞くと作品に登場する海辺の街の風景を思い出す人も多いでしょう。
宮崎駿監督はこの作品の制作にあたり、スウェーデンでロケハンを行い、ヨーロッパの落ち着いた佇まいを作品の舞台として再現しました。
「海の見える街」は街の雰囲気を感じさせるだけでなく、新しい環境に胸を弾ませているキキの心情も表現しています。
人生のメリーゴーランド
「人生のメリーゴーランド」は2004年のジブリ映画「ハウルの動く城」のテーマ曲として、オープニングやエンディングで使われている、クラシックなムードの曲です。
どこか物悲しいワルツの響きとともに、舞台となったヨーロッパの町並みや、物語の世界観が広がっていく曲で、ジブリ音楽としても人気の高い曲です。
交響曲以外でもいろいろなバージョンがあり、ピアノで演奏されることも多いでしょう。
「ハウルの動く城」の主題歌で、久石譲作曲、谷川俊太郎作詞の「世界の約束」のカップリング曲にも収録されています。
風のとおり道
「風のとおり道」は1988年のジブリ作品「となりのトトロ」の劇中歌です。
ジブリ作品は「ナウシカ」や「ラピュタ」など、壮大なファンタジー作品も多いのですが「トトロ」は昭和30年代の日本が舞台で、ほのぼのとした雰囲気の作品です。
子どもにしか見えない不思議な生き物、トトロが住む森の様子がイメージできるような、幻想的で温かいムードの楽曲で、世代を超えて愛されています。
BGMバージョンの他に、井上あずみが歌うボーカルが入ったバージョンも人気が高い曲です。
アシタカせっ記
1997年のジブリ映画「もののけ姫」の劇中歌として、オープニングや重要なシーンで何度も使われている曲です。
せっ記とは宮崎駿監督の造語で、正史ではなく耳から耳へと伝えられてきた物語を意味します。
日本人が古代から大切にしてきた自然への真摯な気持ちと、運命と戦うアシタカの強い意思が感じられるような、力強い楽曲です。
この作品から、久石譲は映画音楽をフルオーケストラで書くようになり、演奏は常設のプロオーケストラが担当するようになりました。
あの夏へ
2001年のジブリ長編アニメ作品で、ジブリ映画最大のヒット作「千と千尋の神隠し」の劇中歌です。
普通の世界に住む少女が、八百万の神が住む不思議な世界に迷い込む話で、ノスタルジーとファンタジーが混在する独特な世界観を持つ作品は、世界中で高く評価されました。
「あの夏へ」は物語の導入部などで使用される曲で、見る人の心をそれぞれの夏の記憶へと誘います。
「千と千尋の神隠し」の映画音楽の制作では、エスニック楽器のサンプリングを使用するなど、さまざまな新しい試みが行われました。
帰らざる日々
少年少女が主役の作品が多いジブリ映画の中で、珍しく大人が主人公のジブリ作品「紅の豚」の劇中歌です。
作品の舞台は世界恐慌時代のイタリアで、主人公はブタの姿をした賞金稼ぎのマルコ。
「帰らざる日々」は、マルコが過ぎ去った過去をせつなく振り返るシーンの曲で、静かなピアノの響きがマルコの半生を物語るような、物悲しい雰囲気があるバラードです。
この作品のヒロインはシャンソン歌手のマダム・ジーナで、声を演じた加藤登紀子が主題歌「さくらんぼの実る頃」も歌いました。
崖の上のポニョ
歌詞もメロディーも覚えやすい、かわいい雰囲気の曲で、子ども向けの歌として今でも人気の高い楽曲です。
2008年に公開の「崖の上のポニョ」の主題歌ですが、この曲が発売されたのは半年前の2007年12月でした。
久石譲は映画の絵コンテを見た途端、この曲を思いついたものの、あまりにシンプルなメロディーなので、当初は発表をためらっていたとか。
この曲ができた当時、映画のエンディングはまだ決まっていませんでしたが、曲のイメージに合うようにハッピーエンドの作品が完成しました。
久石譲の代表曲6選|ジブリ以外
久石譲は長い音楽活動の中で、作曲家以外にもピアニスト、指揮者など、多岐にわたり活躍し、ジブリ以外にも代表曲と呼べる曲が多いです。
長年にわたって映画音楽を担当した北野武監督の映画音楽や、ドラマ、CMソングなど有名曲が多く、受賞作品も少なくありません。
続いては、久石譲のジブリ以外の人気曲を紹介します。


Stand Alone
「Stand Alone」は2009年から2011年にかけて、NHKで放送されたテレビドラマ「坂の上の雲」の主題歌です。
明治時代の日本人の活躍を描いたスケールの大きな作品で、オープニングは演奏のみのバージョン、エンディングはボーカル入りのバージョンが使われました。
ボーカライズは第一部がサラ・ブライトマン、第二部は森麻季で、第三部では久石譲の娘、麻衣が歌っています。
混迷期の日本を切り抜けた人々を描いたドラマのイメージから、災害の復興を願うイベントでの演奏や、卒業ソングとしても人気の高い曲です。
Spring
久石譲の代表曲「Summer」とシンクロするような、日本の季節を感じさせる曲「Spring」は、2003年から翌年にかけて進研ゼミのCMソングとして使用された曲です。
「Summer」が懐かしい夏の日のイメージを感じさせるように「Spring」も冬が過ぎて新しい季節を待ちわびる子どもの心のように、希望を感じさせる曲調になっています。
曲が作られた順番は「Summer」のほうが先なので「Spring」は「Summer」を意識して作られた曲なのかもしれません。
Silent Love
1992年の北野武監督の映画「あの夏、いちばん静かな海。」のメインテーマで、日本アカデミー賞の最優秀音楽賞を受賞したサウンドトラックです。
この曲は当初サブテーマとして制作されたのですが、北野武監督がこの曲を気に入ったため、メインテーマとして使用されることになりました。
耳が聞こえない青年の恋愛とサーフィンを描いた映画で、それまでの北野武監督の作品と異なり、叙情的な部分が強調されています。
そういった作風の今作を、久石譲の音楽が作品の芸術性を高めました。
Theme of Departures
本木雅弘が、自ら映画化の許可をとって主演した映画「おくりびと」のテーマ曲で「Memory」という副題がつけられています。
主人公は納棺師となり、人の死について考えを改めるようになった男で、彼の前職がチェロ奏者という設定だったため、映画にはオーケストラのシーンが登場します。
チェロを中心に演奏されたオーケストラのサウンドトラックは、主人公の心情の変化を描くような、深みのある楽曲が揃っています。
「おくりびと」はアカデミー賞外国語映画賞を受賞し、久石譲の楽曲も世界的に評価されました。
HANA-BI
1998年公開で、北野武監督及び主演映画「HANA-BI」のサウンドトラックです。
孤独な刑事の壮絶な生き様を描き、胸が締め付けられるような作品で、ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞しました。
久石譲による映画音楽は、日本アカデミー賞の最優秀音楽賞を受賞しています。
それまでの北野武監督の作品で、久石譲はシンセサイザーやサンプリングで映画音楽を制作していました。
しかし、この作品では作品の世界観を壊さないために、ストリングスをメインにした繊細な曲調で楽曲を制作しました。
あなたになら…
「あなたになら…」は大林宣彦監督作品のファンタジー映画で、1993年に公開された「水の旅人 侍KIDS」のエンディングテーマです。
久石譲が同作品の映画音楽を担当する際に、主題歌を中山美穂に依頼した曲で、久石譲作曲、中山美穂作詞で制作し、レコーディングはロンドンで行われました。
メインテーマはロンドンシンフォニーオーケストラが演奏し、迫力のある楽曲でした。
そのため、エンディングは優しい雰囲気の女性ボーカル曲で、温かい雰囲気を作り上げました。
久石譲の隠れた名曲4選
久石譲は映画音楽以外にもたくさんのタイアップ曲を制作、演奏しており、いろいろなジャンルの作曲や編曲、演奏を行っています。
昔から耳馴染みのあるあの曲も、実は久石譲の作品かもしれません。
最後は、久石譲の隠れた名曲を紹介します。


明日の翼
JALのテーマ曲として2011年から使用されている曲で、機内でも搭乗時のウェルカムビデオや到着時のBGMなどで耳にする曲です。
フルオーケストラの壮大なスケールの演奏で、安全性が感じられる楽曲で、国際線を利用する人も、この曲を聞くと和の雰囲気を味わえるような、格調の高い楽曲です。
2024年1月にリニューアルされたビデオは、日本の文化を象徴する人々が紹介されており、継続して使われている久石譲の音楽は、日本の美しさを再認識させてくれるでしょう。
Oriental Wind
長年にわたってお茶の「伊右衛門」のCMで使用されている曲で、楽器やアレンジを替えた複数のバージョンがあります。
お茶のCMソングだけに、和を感じる曲調になっているのが特徴的で、オーケストラの演奏で和楽器は使っていないのに、日本の伝統的な雰囲気が感じられます。
この曲を聞くと、本木雅弘と宮沢りえが出演した、時代劇仕立てのCMを思い出す人も多いでしょう。
CMでは一部しか聴けませんが、全体では5分以上ある曲なので、機会があれば全曲を通して聞いてみたい名曲です。
Cinema Nostargia
長寿テレビ番組「金曜ロードショー」の2代目オープニングテーマとして、1997年から2009年にかけて使われていた楽曲です。
「映写機おじさん」と呼ばれる男性が、映写機を回しているアニメのバックで流れた音楽で、久石譲らしいノスタルジックな雰囲気がある曲調に、映画への期待が高まりました。
ちなみに、初代は夕陽とヨットハーバーの映像とともに流れた「フライデーナイト・ファンタジー」です。
Nostargia
1998年にサントリーのウィスキー「山崎」のCMソングとして使用された曲です。
日本で醸造されるウイスキーの特徴をアピールするような、清々しく深みのある曲調で、CMだけでなくコンサート会場でじっくり聞きたくなる楽曲です。
海外からも人気があり、辛いときに聞くと心が癒やされると言う人も多い名曲。
久石譲はこの曲以外にも「山崎」のCMソングを制作しており「Angel Springs」「Dream」も、日本の美しさを表現した曲だと高く評価されています。
久石譲の代表曲はジブリ以外にも名曲がいっぱい!意外なところで耳にしている有名曲もある
久石譲は映画音楽を中心に多岐にわたる活動を続ける作曲家、指揮者、ピアニストで、多くの代表曲があります。
1984年のジブリ作品「風の谷のナウシカ」の映画音楽を手掛けてから、ジブリの長編アニメの音楽は全て担当しており、世界的に有名になりました。
また、北野武監督の映画音楽、ドラマのテーマ曲など、ジブリ以外の名曲も多く「Summer(サマー)」は代表曲の1つと評価されています。
CMソングやタイアップ曲も多く、意外なところで耳にしている有名曲もあるでしょう。
久石譲の曲を聞いて、日本の四季の美しさやノスタルジーをじっくり感じてみませんか。
この記事のまとめ!
- 久石譲の代表曲は北野武監督の映画「菊次郎の夏」のテーマ曲「Summer(サマー)」
- 「風の谷のナウシカ」以来、ジブリの長編アニメの音楽を全て担当している
- ジブリ以外の映画やドラマのテーマ曲なども名曲が多く、数々の賞を受賞した
- CMソングや企業のイメージソングなど、タイアップ曲、隠れた人気曲も多い
- 久石譲のノスタルジー溢れる作品を聞いて、日本の美しさを再認識しよう