作曲やアドリブなどの音楽理論を学んでみたいけど、分からない言葉が多くて悩んでいる人も多いのではないでしょうか?
その中でもコード理論の基本であるダイアトニックコードは、コツや仕組みを理解するまでが大変なので挫折する人も多いです。
この記事のもくじ
ダイアトニックコードとは
ダイアトニックコードとはポップスやロック、ジャズなどを含めたポピュラー音楽と呼ばれる音楽に使用される音楽理論です。
代理コードや転調などの応用理論と違って複雑な響きはありませんが、ダイアトニックコードだけでも十分に素敵な曲が作れます。
ダイアトニックコードの概要や見つけ方、コードの成り立ちについて紹介するので、コードを深く知りたい人は参考にしてみてくださいね。
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キーとダイアトニックスケール
ダイアトニックコードとは、キーの主音を出発点としたダイアトニックスケールから作られるコードです。
キーとは主音、もっとも安定する音を表したもので、ダイアトニックスケールは主音から決められた間隔で並べられた7音の音階を指します。
代表的なものは、キーC(ハ長調)のときのCメジャースケール「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ(C・D・E・F・G・A・B)」。
ほかにも、キーEのときのEメジャースケール、キーCmのときのCmスケールなど、キーごとに1つずつ存在します。
このダイアトニックスケールの各音に、ルールに沿った音を2~3個積み上げ、コードにしたものが「ダイアトニックコード」です。
コード進行や曲を作るときの基盤になるコード
ダイアトニックコードはコード進行、楽曲を作るときの基盤となるコードです。
一部の民族音楽や現代音楽では使われないこともありますが、ポップスやジャズ、ロックなどのポピュラー音楽のほとんどがこのコードをもとに作られています。
これは、キーの中で自然に響くダイアトニックスケールの構成音のみで作られているため。
加えてポピュラー音楽ではキーを中心に考えることが多いので、自然に響く音で構成されたダイアトニックコードも頻繁に使われます。
プロレベルの曲を作るには転調や借用なども必要になりますが、このコードをマスターするだけでもアレンジや作曲が快適になるでしょう。
トライアド・セブンスコードのいずれかで表記される
3音構成のトライアド、4音構成のセブンスコードのいずれかで表記されるのも、ダイアトニックコードの特徴です。
ダイアトニックスケールの音を使えば、5音以上で構成される「テンションコード」を作ることもできますが、基本的にトライアドがセブンスコードのいずれかで考えられます。
トライアド(3和音)とは
トライアドは3つの音から成り立つコードです。
CやDmなどアルファベットのみで表記されるコードで、Bm(♭5)という5度が半音下がった特殊なトライアド以外は、右側に数字は記載されません。
コード音は、
- ベース音を表す1度(ルート)
- 音の明るさに影響する3度
- コードに力強さを与える5度
の3音構成です。
「度」は音の距離を表す単位で、音同士の関係やコード内の音の役割を表す時に使われます。
トライアドはコードの最小単位といわれており、サウンドもシンプルで使いやすいコードなので、まずはトライアドのダイアトニックコードから覚えるのが良いでしょう。
例:Cメジャーの場合
Key=C | ド | レ | ミ | ファ | ソ | ラ | シ |
コード名 | C | Dm | Em | F | G | Am | Bm(♭5) |
音階位置 | Ⅰ | Ⅱm | Ⅲm | Ⅳ | Ⅴ | Ⅵm | Ⅶm(♭5) |
トライアドはダイアトニックスケールの各音をベースに、同じスケール内の音を3度ずつ積み上げて作られます。
ポイント
- ドの音はCメジャーコードのベース音になる。
- 次に「ド(1)レ(2)ミ(3)」で数えた3番目のミの音に。
- その上にミから「ミ(1)ファ(2)ソ(3)」と数えて3番目のソを積むとCのトライアドの完成。
他のコードも同じ方法で作られますが、ミとファ、シとドの間は半音なので、
- DやE、A⇨3度が半音低いマイナーコード
- B⇨3度と5度がフラットしたマイナーフラットファイブコード
になります。
セブンスコード(4和音)とは
セブンスコードとは、トライアドに7度の音を積み上げて作った4和音のことです。
トライアドよりも深みのある響きで、ポップスやジャズでよく使われます。
作り方はトライアドと同じで、5度から3つ数えた音を積むとセブンスコードの完成です。
- ⅠとⅣのコード⇨ベース音より半音低い長7度
- Ⅱm・Ⅲm・Ⅴ・Ⅵm・Ⅶm(♭5)⇨ベース音よりも1音低い短7度
がそれぞれ積まれます。
キーCメジャーを当てはめると、CMaj7、Dm7、Em7、FMaj7、G7、Am7、Bm7(♭5)となります。
ダイアトニックコードの役割
ダイアトニックコードには、コードごとに役割が決まっています。
この役割を生かして作られるのがコード進行で、コードの使い方次第で曲の雰囲気が大きく変わるのです。
コードの役割は単体で鳴らすよりも、他のコードと交互に鳴らしたり、組み合わせたりした方が分かりやすいので、ギターやピアノなどのコード楽器を使いながら学ぶのがおすすめ。
ダイアトニックコードの役割や基本的なコード進行、関連する用語を紹介するので、コードを深く知りたい人は参考にしてくださいね。
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トニックコード:T
トニックコードとは安定感を演出する役割・機能を持つコードのことです。
ダイアトニックコードのなかでは、キーの中心となる「主音」をベース音に作られたコード、もしくは似た構成のコードが該当します。
メジャーキーの場合にトニックとなるのが「Ⅰメジャー、Ⅲマイナー、Ⅵマイナー」。
Cメジャーキーの場合で考えると、CやCMaj7、Em、Amがトニックとなります。
コード進行のはじめや最後など、落ち着きがほしい場面で使われるケースが多く、曲中で長く伸ばしても違和感がありません。
ドミナント:D
ドミナントは主音の完全5度上にある音で、ドミナント音をベースにして作られたコードをドミナントコードと呼びます。
ドミナントコードは不安定なサウンドを演出する役割があるコードで、トニックに帰ろうとする響きが特徴的です。
メジャーキーでは「Ⅴメジャー・Ⅴ7」が該当し、キーがCの場合にはG、またはG7となります。
Gコードだけでも雰囲気は出せますが、3度のシと7度のファが不安定な響き方をする4和音のG7を使うとさらに不安定になり、トニックに帰ろうとする響きが強くなりますよ。
また、ⅢmやⅦm7(♭5)も似た構成音を持つためドミナントと考えられますが、前後のコード次第で響き方が変わるため、Ⅴ7の響きを覚えてから使うのがおすすめです。
サブドミナント:SD
やや不安定な響きを演出する役割を持つコードが、サブドミナントコードです。
メジャーキーで考えると「Ⅳメジャー・Ⅱマイナー」が該当します。
キーがCメジャーの場合にはFコード、Fメジャーセブンスコードと、Dマイナー、Dマイナーセブンがサブドミナントコードです。
浮遊感のある、少し不安定な響きが特徴なので、
- トニックに向かってゆるやかに進行させたい時
- 段階的に不安定にさせてドミナントを際立たせたい時
に使うのが良いでしょう。
ダイアトニックコードの使い方
ダイアトニックコードの特徴や役割は分かったけれど、使うシーンがイメージできないという人も多いのではないでしょうか?
コードの並びや機能だけを見ても、なかなか作曲や演奏に応用するのは難しいものですよね。
次はダイアトニックコードのおすすめの使い方を紹介するので、この理論の使い方が分からない人は参考にしてみてくださいね。
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カデンツを意識して使う
ダイアトニックコードを使ってコード進行を作りたいなら、カデンツを意識して並べるのがおすすめです。
カデンツ(ケーデンス)はコード進行の最小単位で、コードの展開からトニックへの解決までを表したもの。
このカデンツを考えて並べるだけでも、音楽的な響きのコード進行が作りやすくなりますよ。
定番のコード進行例:Cメジャーの場合
カデンツを使いこなすには、まず定番のコード進行を覚えるところからはじめましょう。
基本形には
- 「T→D→T」で解決するシンプルな進行
- 「T→SD→D→T」のストーリー性のある進行
- 「T→SD→T」の浮遊感のある進行
の3種類があります。
キーがCメジャーの場合だと最初の進行が「C→G→C」、次の進行が「C→F→G→C」、浮遊感のある進行が「C→F→C」です。
基本形に慣れてきたら、基本のスリーコード以外の
- ⅥmやⅢm
- サブドミナントの機能を持つⅡm
- ドミナントのⅦm7(♭5)
などを使って色々な進行を作ってみましょう。
曲の分析に使う
ダイアトニックコードの知識は、曲の分析にも役立ちます。
なぜならダイアトニックコードは、1つのキーに対して7つのコードを割り当てる手法であるため。
曲中でどのコードが使われているか、どのコードが安定して響くかなどをチェックし、照らし合わせれば簡単にキーが割り出せるのです。
各コードをローマ数字(音階位置)に変換すれば、トニック・サブドミナント・ドミナントの組み合わせパターンが一目で分かるのもポイント。
分析のために耳コピするときにも、次のコードの予想を立てながら進められるので、より快適に作業を進められるでしょう。
スケール選択の参考にする
どのスケールを使うか考えるときにも、ダイアトニックコードの知識は便利です。
ダイアトニックスケールから派生したものなので、ダイアトニックコードのみで作られた進行には、同じキーのダイアトニックスケールが使えます。
例えばキーCがメジャーで「C→F→G→C」という進行の場合は、ダイアトニックスケールである「Cメジャースケール」を使うだけでも自然なフレーズが作れますよ。
よりシンプルに考えたいなら、メジャースケールからF音の4度とB音の7度を抜いた「Cペンタトニックスケール」を使うのもおすすめ。
作曲や伴奏、分析だけでなくアドリブやソロにも使えるのが、この理論の魅力です。
ダイアトニックコードの覚え方
作り方の次は、ダイアトニックコードの覚え方をチェックしていきましょう。
毎回スケールとキーを使って作っても良いですが、簡単なコツを理解すれば全てを暗記しなくても正確なコードをスムーズに導き出すことができます。
さらに、作り方や使い方と組み合わせれば、応用するときに役立つのもポイント。
理論初心者でも比較的簡単に取り入れられる、シンプルな内容なのでぜひ気軽に取り組んでみましょう。
ローマ数字に変換する
ローマ数字に変換して覚えるのが、ダイアトニックコードを効率良く覚えるコツです。
7つのコードのベースとなるダイアトニックスケールの音の間隔は、キーが変わっても同じになっています。
さらに、ダイアトニックコードの各コードのメジャー・マイナー、5度の♭の有無なども同じです。
そのため全てのコードを「Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ・Ⅵ・Ⅶ」に置き換え、ダイアトニックスケールを当てはめれば、簡単に7つのコードのルート音が分かります。
スケールとローマ数字を覚える必要がありますが、両方を覚えれば全てのキーに対応できるので、理論や作曲のスキルをアップさせたい人は挑戦してみてくださいね。
メジャーとマイナーのパターンを覚える
ローマ数字を覚えたら、次はメジャーとマイナーのパターンを覚えていきましょう。
「マイナーコードを確認する」でも紹介したように、キーが変わってもメジャー・マイナーのパターンは変わりません。
そのため
- ⅠとⅣがメジャー、もしくはメジャー7th
- Ⅴがメジャー、ドミナント7th
- ⅡとⅢとⅥがマイナー、マイナー7th
- Ⅶがマイナー♭5、m7(♭5)
と覚えれば、スケールとキーの知識のみで全キーのダイアトニックスケールに対応できますよ。
数字順に覚えたいなら「Ⅰmaj7・Ⅱm7・Ⅲm7・Ⅳmaj7・Ⅴ7・Ⅵm7・Ⅶm7(♭5)」というパターンを暗記するのもおすすめです。
ダイアトニックコードの導き出し方
ダイアトニックコードの使い方と特徴の次は、導き出し方をチェックしていきましょう。
もちろん、表を使って丸暗記しても問題なく使えますが、はじめにスケールや音の位置を考えながら7つのコードを導き出す練習をしておくと、より深い知識が身につきますよ。
次はコードやスケールの成り立ちが一緒に学べる、ダイアトニックコードの導き出し方を紹介します。
キーからメジャースケールを割り出す(キー=E)
ダイアトニックコードはスケールを元に作られたコードなので、キーやメジャースケールから割り出す方法がおすすめです。
12音のうち7音をルールに沿って並べた音階がメジャースケールであり、キーが違っていてもルールと音の間隔は変わりません。
キーを表すアルファベットを鍵盤のドの位置に当てはめ、ルール通りに調節すると正確なメジャースケールが作れるので、C以外のメジャーキーを使って練習してみましょう。
一番目の音から並べる
メジャースケールを割り出すために、まず主音であるEの音を鍵盤に当てはめましょう。
メジャースケールは1オクターブを7つに分けた音なので、オクターブ上のEまでを記載しておくと良いですよ。
Cメジャースケールをイメージしながら、#や♭をつけずに音を埋めます。
この時に
- 「次の音は1音なのか?」
- 「半音なのか?」
を考えながら黒鍵、白鍵に割り当てましょう。
上記の図では、DとEが1音の幅になっていますが、次のステップで修正するのでそのままで大丈夫です。
主音のE音から始めて、次の音と1音の間隔になるようにF#とします。
F#の音から1音の間隔になるように次の音をG#と、全ての音が白鍵の上に来るように調節しましょう。
このように、主音のEから1オクターブ上のEまで全音(1音)、全音、半音、全音、全音、全音、半音の関係になるように#をつけるとEメジャースケールの完成です。
また、キーがEメジャーの楽譜を持っている人は
- ト音記号の横に付いている#の個数
- 付いている音階
を確認すると答え合わせができますよ。
マイナーコードを確認する
Eメジャースケールが完成したら、マイナーコードを確認してコードのパターンを把握しましょう。
各音に位置を表すローマ数字を振り、
- Ⅱ・Ⅲ・Ⅵ⇨マイナーコード
- Ⅶ⇨マイナーフラットファイブコード
にします。
キーが変わってもマイナーコードの位置、音の間隔などは一緒なので、ローマ数字表記に慣れていると簡単にマイナーコードが見つけられますよ。
ダイアトニックコードに変換する
ローマ数字に変換したものに各音のアルファベットを当てはめると、ダイアトニックコードが完成です。
- キーがE⇨E、F#m、G#m、A、B、C#m、 D#m(♭5)
- 4和音にする⇨EMaj7、F#m7、AMaj7、B7、C#m7、 D#m7(♭5)
になります。
4和音の時はドミナントの役割を持つⅤだけが短7度のドミナントセブンスコードになるので、コードに変換する時は気をつけてくださいね。
ダイアトニックコードの一覧表
ここで紹介する一覧表は、
- 素早くキーを知りたい時
- 自分好みのキーを探す時
などに便利なので、ぜひ使ってみてください。
Key | Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ | Ⅳ | Ⅴ | Ⅵ | Ⅶ |
C | C | Dm | Em | F | G | Am | Bm(♭5) |
D♭ | D♭ | E♭m | Fm | G♭ | A♭ | B♭m | Cm(♭5) |
D | D | Em | F#m | G | A | Bm | C#m(♭5) |
E♭ | E♭ | Fm | Gm | A♭ | B♭ | Cm | Dm(♭5) |
E | E | F#m | G#m | A | B | C#m | D#m(♭5) |
F | F | Gm | Am | B♭ | C | Dm | Em(♭5) |
G♭ | G♭ | A♭m | B♭m | C♭ | D♭ | E♭m | Fm(♭5) |
G | G | Am | Bm | C | D | Em | F#m(♭5) |
A♭ | A♭ | B♭m | Cm | D♭ | E♭ | Fm | Gm(♭5) |
A | A | Bm | C#m | D | E | F#m | G#m(♭5) |
B♭ | B♭ | Cm | Dm | E♭ | F | Gm | Am(♭5) |
B | B | C#m | D#m | E | F# | G#m | A#m(♭5) |
表には音の位置や役割を表すローマ数字、ローマ数字に対応するダイアトニックコードが キーごとに記載されています。
#の位置や数は楽譜のト音記号、ヘ音記号の横に付いているものと同じなので、演奏する曲のキーを知りたい時にも便利ですよ。
ダイアトニックコードを使えばコード進行が分かる!まずはメジャースケールから理解しよう
ダイアトニックコードの仕組みや役割が分かると、好きな曲のコード進行が分かったり、作曲する時の参考にすることができます。
まずは基本のメジャースケールから覚えると、
- 3度や6度
- 7度がフラットしたマイナースケール(KEY=Cだとミb、ラb、シb)
- マイナーキー
などの発展系も簡単に理解できますよ。
コード進行は難しいイメージがありますが、取り組んでみると楽しい分野なので、ぜひ今回の記事をコードについて学ぶきっかけにしてみてくださいね。
この記事のまとめ!
- ダイアトニックコードはキーの主音から作られた、ダイアトニックスケールを元にしたコード
- ダイアトニックコードには、トライアドやセブンスコードがあり、各コードに役割や響きなどの特徴がある
- キーの主音を鍵盤のドの位置に当てはめると、簡単にメジャースケールが作れる
- 主音からはじまるスケールを使ってコードを組み立てると、ダイアトニックコードになる