助たすけて 助たすけて と 誰だれかが 呼よんでる
霧深きりぶかい森もりの中なか 館やかたの奥おくから 悲かなしげな声こえで
「助たすけて……助たすけて……」
「私わたしを呼よぶのは……誰だれ?」
「ようこそ、私わたしはこの呪のろわれし館やかたの管理人かんりにん。
貴方あなたをご案内あんないいたしましょう」
「あなたもここに迷まよいこんだんだ。
私わたしはアカリ。よろしくね!」
「巫女みこのカリンと申もうします。
よろしくお願ねがいしますっ!」
呪のろいの霧きりに閉とざされ 館やかたから出でられない
それでも家いえに帰かえるの 家族かぞくの待まつ家いえに
呪のろいを解といて帰かえろう 「ほんと!?」
私わたしにできることなら 「頑張がんばろうね!」
ふたりできっと 「いいえ!」
絶対ぜったい
呪のろいさえ 乗のり越こえ
「コウメお嬢様じょうさま、マユ様さま。お客様きゃくさまをお連つれしました」
かならず帰かえりたい
帰かえる理由りゆうはない
私わたしのいる場所ばしょは
愛いとおしい我わが家や
あたたかいおうち
「ようこそ 愛あいでいっぱいのこの家いえに」
「今日きょうから貴方あなたも私わたしたちの家族かぞくだよ」
「いや!私わたしは自分じぶんのお家うちに帰かえりたいの!」
「言いうこと聞きかない悪わるい子こは……おしおき」
「アカリちゃん、逃にげましょう!」
「逃にがさないよ」
「危あぶなかった……ここは?」
「うふ……ようこそ、私わたしのお部屋へやへ。
紹介しょうかいしますね。この人ひとが私わたしの愛いとしい人ひと」
「ひっ!?が、骸骨がいこつ……!?」
アイシテル アイシテル
貴方あなたといる此処ここが
イトオシイ イトオシイ
永遠えいえんの 愛あいの巣箱すばこだから
「あの骸骨がいこつさん、泣ないているみたい」
「祓はらってあげませんか?
そうすればきっと、マユさんも」
「わかりました」
「何なにを、しているの?
余計よけいなことをしないで!」
「悲かなしい魂たましいよ、還かえるべき場所ばしょへ……」
「ああ、貴方あなた……行いかないで。
私わたしを置おいて、行いかないで。
貴方あなたと一緒いっしょにいるために、
私わたしはこの手てで……このナイフで、貴方あなたを……!」
「そんなっ……!?」
「許ゆるさない……絶対ぜったいに許ゆるさない!」
「はぁはぁ……何なんとか、逃にげられたみたい」
「巫女みこの力ちから、見みせていただきましたよ。
貴方あなたに一ひとつ、聞きいていただきたい昔話むかしばなしがあるのです」
「昔話むかしばなし?」
大おおきな屋敷やしきに一人ひとり
孤独こどくに暮くらす少女しょうじょが
流行はやり病やまいで死しんだ
家族かぞくにも 看取みとられず
愛あいに飢うえて 死しんだ
「あのお方かたを救すくってはくださいませんか」
「私わたしにできることなら」
「そうしたら呪のろいは解とけるんですね!」
「みんなここにいたんだね。探さがしたよ。
おしおきはもういいや。遊あそぼう?」
楽たのしくみんなで遊あそびましょう
「カード、それともダイス?
サンドウィッチを作つくってお茶会ちゃかいにする?」
旅行りょこうにだって行いきたいな
家族かぞくみんなで
「コウメちゃん、帰かえりましょう。
帰かえるべき場所ばしょへ」
「ふふ、おかしい。私わたしの家いえはここ。
家族かぞくがいる、このお屋敷やしき」
「カリンちゃん、お祓はらいを…!」
「でも、本人ほんにんが心こころから空そらに還かえることを望のぞんでいないと……」
「また悪わるい子こがイタズラ?
貴方あなたはこの家いえの子こだってこと、
痛いたくしないと、わからない?」
「カリンちゃん、お願ねがい。このままじゃ私わたしたち……!」
「わかりました、やってみます。
この家いえを出でましょう、コウメちゃん!」
帰かえるべき時間じかんだ
帰かえる理由りゆうはない
あなたのいる場所ばしょは
あたたかいおうち
「お嬢様じょうさま、落おち着ついて。
少すこし、旅たびに出でるだけです。
何なにも怖こわいことはありません」
「本当ほんとうに?貴方あなたもいっしょ?」
「…ええ。ですから、安心あんしんしてください」
光ひかりあれ 光ひかりあれ
悲かなしき 迷まよい子こたちに
空そらに舞まえ 羽広はねひろげ
おうちにかえろう
「ううん、ここは……お屋敷やしきは!?
どこにもない……それに、すっかり晴はれてる。
きっと、みんな帰かえれたよね」
「待まって、待まって!置おいて行いかないで……!
どうして、呪のろいは解とけたんじゃ……」
「コウメお嬢様じょうさまにかかった呪のろいは、です」
「どういうこと?」
「まだ、気きづいておられないのですか。
貴方あなたはもう、亡なくなっているのです。
もう元もとの家いえには帰かえれないのですよ」
「嘘うそ……嘘うそだ!
助たすけて……助たすけて……!」
助tasuけてkete 助tasuけてkete とto 誰dareかがkaga 呼yoんでるnderu
霧深kiribukaいi森moriのno中naka 館yakataのno奥okuからkara 悲kanaしげなshigena声koeでde
「助tasuけてkete……助tasuけてkete……」
「私watashiをwo呼yoぶのはbunoha……誰dare?」
「ようこそyoukoso、私watashiはこのhakono呪noroわれしwareshi館yakataのno管理人kanrinin。
貴方anataをごwogo案内annaiいたしましょうitashimasyou」
「あなたもここにanatamokokoni迷mayoいこんだんだikondanda。
私watashiはhaアカリakari。よろしくねyoroshikune!」
「巫女mikoのnoカリンkarinとto申mouしますshimasu。
よろしくおyoroshikuo願negaいしますっishimasuxtu!」
呪noroいのino霧kiriにni閉toざされzasare 館yakataからkara出deられないrarenai
それでもsoredemo家ieにni帰kaeるのruno 家族kazokuのno待maつtsu家ieにni
呪noroいをiwo解toいてite帰kaeろうrou 「ほんとhonto!?」
私watashiにできることならnidekirukotonara 「頑張ganbaろうねroune!」
ふたりできっとfutaridekitto 「いいえiie!」
絶対zettai
呪noroいさえisae 乗noりri越koえe
「コウメkoumeおo嬢様jousama、マユmayu様sama。おo客様kyakusamaをおwoo連tsuれしましたreshimashita」
かならずkanarazu帰kaeりたいritai
帰kaeるru理由riyuuはないhanai
私watashiのいるnoiru場所basyoはha
愛itoおしいoshii我waがga家ya
あたたかいおうちatatakaiouchi
「ようこそyoukoso 愛aiでいっぱいのこのdeippainokono家ieにni」
「今日kyouからkara貴方anataもmo私watashiたちのtachino家族kazokuだよdayo」
「いやiya!私watashiはha自分jibunのおnoo家uchiにni帰kaeりたいのritaino!」
「言iうことukoto聞kiかないkanai悪waruいi子koはha……おしおきoshioki」
「アカリakariちゃんchan、逃niげましょうgemasyou!」
「逃niがさないよgasanaiyo」
「危abuなかったnakatta……ここはkokoha?」
「うふufu……ようこそyoukoso、私watashiのおnoo部屋heyaへhe。
紹介syoukaiしますねshimasune。このkono人hitoがga私watashiのno愛itoしいshii人hito」
「ひっhixtu!?がga、骸骨gaikotsu……!?」
アイシテルaishiteru アイシテルaishiteru
貴方anataといるtoiru此処kokoがga
イトオシイitooshii イトオシイitooshii
永遠eienのno 愛aiのno巣箱subakoだからdakara
「あのano骸骨gaikotsuさんsan、泣naいているみたいiteirumitai」
「祓haraってあげませんかtteagemasenka?
そうすればきっとsousurebakitto、マユmayuさんもsanmo」
「わかりましたwakarimashita」
「何naniをwo、しているのshiteiruno?
余計yokeiなことをしないでnakotowoshinaide!」
「悲kanaしいshii魂tamashiiよyo、還kaeるべきrubeki場所basyoへhe……」
「ああaa、貴方anata……行iかないでkanaide。
私watashiをwo置oいてite、行iかないでkanaide。
貴方anataとto一緒issyoにいるためにniirutameni、
私watashiはこのhakono手teでde……このkonoナイフnaifuでde、貴方anataをwo……!」
「そんなっsonnaxtu……!?」
「許yuruさないsanai……絶対zettaiにni許yuruさないsanai!」
「はぁはぁhaahaa……何nanとかtoka、逃niげられたみたいgeraretamitai」
「巫女mikoのno力chikara、見miせていただきましたよseteitadakimashitayo。
貴方anataにni一hitoつtsu、聞kiいていただきたいiteitadakitai昔話mukashibanashiがあるのですgaarunodesu」
「昔話mukashibanashi?」
大ooきなkina屋敷yashikiにni一人hitori
孤独kodokuにni暮kuらすrasu少女syoujoがga
流行hayaりri病yamaiでde死shiんだnda
家族kazokuにもnimo 看取mitoられずrarezu
愛aiにni飢uえてete 死shiんだnda
「あのおanoo方kataをwo救sukuってはくださいませんかttehakudasaimasenka」
「私watashiにできることならnidekirukotonara」
「そうしたらsoushitara呪noroいはiha解toけるんですねkerundesune!」
「みんなここにいたんだねminnakokoniitandane。探sagaしたよshitayo。
おしおきはもういいやoshiokihamouiiya。遊asoぼうbou?」
楽tanoしくみんなでshikuminnade遊asoびましょうbimasyou
「カkaードdo、それともsoretomoダイスdaisu?
サンドウィッチsandowitchiをwo作tsukuっておtteo茶会chakaiにするnisuru?」
旅行ryokouにだってnidatte行iきたいなkitaina
家族kazokuみんなでminnade
「コウメkoumeちゃんchan、帰kaeりましょうrimasyou。
帰kaeるべきrubeki場所basyoへhe」
「ふふfufu、おかしいokashii。私watashiのno家ieはここhakoko。
家族kazokuがいるgairu、このおkonoo屋敷yashiki」
「カリンkarinちゃんchan、おo祓haraいをiwo…!」
「でもdemo、本人honninがga心kokoroからkara空soraにni還kaeることをrukotowo望nozoんでいないとndeinaito……」
「またmata悪waruいi子koがgaイタズラitazura?
貴方anataはこのhakono家ieのno子koだってことdattekoto、
痛itaくしないとkushinaito、わからないwakaranai?」
「カリンkarinちゃんchan、おo願negaいi。このままじゃkonomamaja私watashiたちtachi……!」
「わかりましたwakarimashita、やってみますyattemimasu。
このkono家ieをwo出deましょうmasyou、コウメkoumeちゃんchan!」
帰kaeるべきrubeki時間jikanだda
帰kaeるru理由riyuuはないhanai
あなたのいるanatanoiru場所basyoはha
あたたかいおうちatatakaiouchi
「おo嬢様jousama、落oちchi着tsuいてite。
少sukoしshi、旅tabiにni出deるだけですrudakedesu。
何naniもmo怖kowaいことはありませんikotohaarimasen」
「本当hontouにni?貴方anataもいっしょmoissyo?」
「…ええee。ですからdesukara、安心anshinしてくださいshitekudasai」
光hikariあれare 光hikariあれare
悲kanaしきshiki 迷mayoいi子koたちにtachini
空soraにni舞maえe 羽広hanehiroげge
おうちにかえろうouchinikaerou
「ううんuun、ここはkokoha……おo屋敷yashikiはha!?
どこにもないdokonimonai……それにsoreni、すっかりsukkari晴haれてるreteru。
きっとkitto、みんなminna帰kaeれたよねretayone」
「待maってtte、待maってtte!置oいてite行iかないでkanaide……!
どうしてdoushite、呪noroいはiha解toけたんじゃketanja……」
「コウメkoumeおo嬢様jousamaにかかったnikakatta呪noroいはiha、ですdesu」
「どういうことdouiukoto?」
「まだmada、気kiづいておられないのですかduiteorarenainodesuka。
貴方anataはもうhamou、亡naくなっているのですkunatteirunodesu。
もうmou元motoのno家ieにはniha帰kaeれないのですよrenainodesuyo」
「嘘uso……嘘usoだda!
助tasuけてkete……助tasuけてkete……!」