花になれたら 歌詞 藤巻亮太 ふりがな付

ライナーノート

日々是好日。声に出して読んでみた。「ひ・び・こ・れ・こ・う・に・ち」。精一杯に生きていれば、例え辛い日々であっても好日に変わる。そんな意味の「禅」の言葉である。「他力」ではなく「自力」。そう、ここが肝心だ。藤巻亮太はセカンド・アルバムのタイトルに、こんな言葉を選んだのか…。前作『オオカミ青年』とは、エラい雰囲気が違うぞ。さっそく聴かせてもらって思ったのは、彼の中の様々な仕切りが取っ払われていること。バンドとソロということはモチロン、歌の題材からしてそうだ。＜らしい・らしくない＞、＜そぐう・そぐわない＞も一旦ハズしてみて、残した基準は藤巻亮太で＜ある・ない＞という、このことのみだったと推測した。そして藤巻亮太で＜ある＞ことに、いたく忠実なのだった。「Weekend Hero」の"ヒーロー"は、ちょっとトホホでもあり、「おくりもの」では素直に父や毋のことを想い、歌う。「春祭」は近所の祭り囃子のようでいて、遥かアフリカへも地下水脈で繋がっていくかのよう(このあたりは彼の行動半径の広さゆえか…)。コがオ、ナがアヘと、「母音」が「子音」へほどけた時の説得力が彼らしい「8分前の僕ら」に感涙した。「花になれたら」のテーマは、まさに「好日」という考えに通じる。いま、僕がこの文章を書いているのは春が待ち遠しい冬の最中だから、「かすみ草」が一番季節とハモって響く。「夏のナディア」に会えるまでには、そう、まだ少し、時間が必要だ。でもヘコたれたりブーたれたりしそう時は、「回復魔法」を聴こうと思う。そのすべてを「日々是好日」というタイトル・ソングが包み込んでいる。「ひ・び・こ・れ・こ・う・に・ち」。もう一度、声に出してこの言葉を読んでみた。なんか楽しくなってきた。とはいえ別に、はしゃいでいるわけじゃない。見慣れた景色が、ちょっと昨日より違って見えそうなだけ。でもそのちょっとが、どれだけ僕を救ってくれることだろう…。

文:小貫信昭