うちの親父おやじはとても無口むくちで 昔むかしかたぎのマジメな男おとこ
毎日まいにち同おなじ時間じかんに起おきて 毎日まいにち熱あつい味噌汁みそしるすすって
仕事しごとばかりで疲つかれた親父おやじの 後姿うしろすがたをずっと見みていた
お袋ふくろは言いう「ダメな人ひとだ」と だけど親父おやじに憧あこがれていた
そんな親父おやじと生うまれて初はじめて二人ふたりきりで釣つりへ出掛でかけた
二人乗ふたりのりの錆さびた自転車じてんしゃで胸むねを躍おどらせて釣つりへ出掛でかけた
川かわへと続つづく長ながい砂利道じゃりみちを 俺おれは親父おやじの背中せなかにしがみついて
ゆっくりとただゆっくりと 無口むくちな親父おやじにしがみついて
誰だれもいない川かわのほとりで 俺おれと親父おやじは自転車じてんしゃを降おりて
二人ふたり並ならんで竿さおをたらした 親父おやじはいつものタバコをふかして
この時ときまでは あんな悪夢あくむが起おこるなんて夢ゆめにも思おもわなかった
何時間なんじかん経たっても魚さかなが釣つれねぇ 親父おやじの周まわりは吸殻すいがらだらけさ
すると親父おやじは急きゅうに立たち上あがり 網あみを片手かたてにすそをめくり始はじめた
一歩いっぽずつ一歩いっぽずつ 何なにも言いわずに川かわの中なかへと入はいっていった
すると親父おやじは今度こんどは急きゅうに立たち止どまり なぜか一歩いっぽも動うごかなくなった
俺おれが親父おやじに「どーしたの?」そう言いうと 親父おやじは一言ひとこと「足あしが抜ぬけん」
水みずかさが増ましていく どんどん増ましていく そろそろ肩かたまで浸つかりそうなんだ
川かわの流ながれが激はげしさを増ます 親父おやじがちっちゃな声こえで「やべっ!うわぁあ、やべっ」
ついに親父おやじが流ながされ始はじめた 息子むすこの目めの前まえで流ながされ始はじめた
無口むくちなあの親父おやじがリアルな顔かおで 「助たすけてー!助たすけてー!」もろに泣ないている
時速じそく60ろくじゅっキロで流ながされる親父おやじ ついに親父おやじが見みえなくなった
親父おやじ 親父おやじ 親父おやじ 親父おやじ 親父おやじ 親父おやじー!
下流かりゅうに着つくと体育たいいく座ずわりでガタガタシクシク震ふるえていた
親父おやじの肩かたにはメガネがぶらさがり
鼻はなから小魚こざかなの尾おびれが出でてた
そんな親父おやじを錆さびた自転車じてんしゃの後うしろに乗のせて家いえへ帰かえった
親父おやじは一言ひとこと「母かあちゃんには言いうなよ」
俺おれも一言ひとこと「あたりめーだろ」そう言いった
うちの親父おやじはとても無口むくちで 昔むかしかたぎのマジメな男おとこ
うちのuchino親父oyajiはとてもhatotemo無口mukuchiでde 昔mukashiかたぎのkataginoマジメmajimeなna男otoko
毎日mainichi同onaじji時間jikanにni起oきてkite 毎日mainichi熱atsuいi味噌汁misoshiruすすってsusutte
仕事shigotoばかりでbakaride疲tsukaれたreta親父oyajiのno 後姿ushirosugataをずっとwozutto見miていたteita
おo袋fukuroはha言iうu「ダメdameなna人hitoだda」とto だけどdakedo親父oyajiにni憧akogaれていたreteita
そんなsonna親父oyajiとto生uまれてmarete初hajiめてmete二人futariきりでkiride釣tsuりへrihe出掛dekaけたketa
二人乗futarinoりのrino錆saびたbita自転車jitensyaでde胸muneをwo躍odoらせてrasete釣tsuりへrihe出掛dekaけたketa
川kawaへとheto続tsuduくku長nagaいi砂利道jarimichiをwo 俺oreはha親父oyajiのno背中senakaにしがみついてnishigamitsuite
ゆっくりとただゆっくりとyukkuritotadayukkurito 無口mukuchiなna親父oyajiにしがみついてnishigamitsuite
誰dareもいないmoinai川kawaのほとりでnohotoride 俺oreとto親父oyajiはha自転車jitensyaをwo降oりてrite
二人futari並naraんでnde竿saoをたらしたwotarashita 親父oyajiはいつものhaitsumonoタバコtabakoをふかしてwofukashite
このkono時tokiまではmadeha あんなanna悪夢akumuがga起oこるなんてkorunante夢yumeにもnimo思omoわなかったwanakatta
何時間nanjikan経taってもttemo魚sakanaがga釣tsuれねぇrenee 親父oyajiのno周mawaりはriha吸殻suigaraだらけさdarakesa
するとsuruto親父oyajiはha急kyuuにni立taちchi上aがりgari 網amiをwo片手katateにすそをめくりnisusowomekuri始hajiめたmeta
一歩ippoずつzutsu一歩ippoずつzutsu 何naniもmo言iわずにwazuni川kawaのno中nakaへとheto入haiっていったtteitta
するとsuruto親父oyajiはha今度kondoはha急kyuuにni立taちchi止doまりmari なぜかnazeka一歩ippoもmo動ugoかなくなったkanakunatta
俺oreがga親父oyajiにni「どdoーしたのshitano?」そうsou言iうとuto 親父oyajiはha一言hitokoto「足ashiがga抜nuけんken」
水mizuかさがkasaga増maしていくshiteiku どんどんdondon増maしていくshiteiku そろそろsorosoro肩kataまでmade浸tsuかりそうなんだkarisounanda
川kawaのno流nagaれがrega激hageしさをshisawo増maすsu 親父oyajiがちっちゃなgachitchana声koeでde「やべっyabextu!うわぁあuwaaa、やべっyabextu」
ついにtsuini親父oyajiがga流nagaされsare始hajiめたmeta 息子musukoのno目meのno前maeでde流nagaされsare始hajiめたmeta
無口mukuchiなあのnaano親父oyajiがgaリアルriaruなna顔kaoでde 「助tasuけてketeー!助tasuけてketeー!」もろにmoroni泣naいているiteiru
時速jisoku60rokujuxtuキロkiroでde流nagaされるsareru親父oyaji ついにtsuini親父oyajiがga見miえなくなったenakunatta
親父oyaji 親父oyaji 親父oyaji 親父oyaji 親父oyaji 親父oyajiー!
下流karyuuにni着tsuくとkuto体育taiiku座zuwaりでrideガタガタシクシクgatagatashikushiku震furuえていたeteita
親父oyajiのno肩kataにはnihaメガネmeganeがぶらさがりgaburasagari
鼻hanaからkara小魚kozakanaのno尾oびれがbirega出deてたteta
そんなsonna親父oyajiをwo錆saびたbita自転車jitensyaのno後ushiろにroni乗noせてsete家ieへhe帰kaeったtta
親父oyajiはha一言hitokoto「母kaaちゃんにはchanniha言iうなよunayo」
俺oreもmo一言hitokoto「あたりめatarimeーだろdaro」そうsou言iったtta
うちのuchino親父oyajiはとてもhatotemo無口mukuchiでde 昔mukashiかたぎのkataginoマジメmajimeなna男otoko