魔夜峰央の未完のマンガを実写映画化!
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2019年に公開された映画『翔んで埼玉』の原作者は、『パタリロ!』で知られる少女漫画家・魔夜峰央。
埼玉県民が迫害されている関東地方を舞台に、差別からの解放を描いたコメディ作品です。
1982年当時、埼玉県民であった作者が自虐ネタとして描いた漫画でしたが、未完のまま連載を終了しています。
その幻の続きが、映画『テルマエ・ロマエ』の武内英樹監督と脚本家・徳永友一の手によって実写映画化されました。
エンターテイメント性の高さ、完成度の高さなどが高く評価され、興行収入は37億円を記録。
第43回日本アカデミー賞では優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞を含む計12もの賞を受賞しました。
笑いあり感動あり、ボーイズラブありの郷土愛あふれる映画の魅力を紹介していきましょう。
映画「翔んで埼玉」のあらすじ
埼玉県熊谷市に住む菅原家3人は、娘の愛海の結納のため、車で東京に向かっていました。
その移動中、彼らはカーラジオから埼玉の都市伝説を耳にします。
19××年、埼玉県民は東京都民からひどい迫害を受けていました。
通行手形なしでは東京都に入ることができす、彼らを取り締まる特殊部隊隊員たちに撃退されてしまうのです。
もちろん、東京都に住んでいる元埼玉県民も例外ではありません。
名門校・白鳳堂学院では、埼玉県出身の生徒は一番格下のクラスに押し込まれ、都民達からの軽蔑の眼差しを向けられていました。
その名門校で生徒会長を務め、さらには東京都知事の息子でもある、主人公壇ノ浦百美は、美しい顔立ちの帰国子女・麻実麗と出会います。
百美は次第に麗に惹かれていくようになり、自宅に招待するまでになりました。
しかし、麗は都知事に仕える執事・阿久津に正体がばれてしまいます。
なんと彼は、差別や通行手形を撤廃すべく、都知事を目指していた“隠れ埼玉県人”だったのです。
東京から埼玉へ逃避行する百美と麗でしたが、その道中で「千葉解放戦線」と「埼玉解放戦線」との戦いに巻き込まれてしまいます。
果たして、麗は埼玉県民を差別から解放することができるのでしょうか?
千葉と埼玉の抗争や神奈川、群馬など関東の近県を巻き込んだ壮大なスケールに及ぶ革命の物語が始まります。
実力派俳優陣の熱演、再現度が凄い
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本作は豪華キャスト陣が本気の演技を見せることで爆笑を誘いました。
特に二階堂ふみとGACKTの体当たりの演技には、目を見張るものがあります。
二階堂ふみ演じる主人公・壇ノ浦百美は、都知事を父に持つ中性的な美少年。
中世ヨーロッパ風の衣装や金髪おかっぱヘアもよく似合っていて、役にはまった演技を魅せてくれています。
時に白目をむいて倒れるなど、身体を張ったギャグや演技にも注目です。
コミカルな演技や麗とともに埼玉のために立ち上がる姿は、観る者を惹きつけます。
そして、本作で一番カッコいい役どころ、麻実麗を演じたのは「芸能人格付けチェック」で品格の高さや教養の深さが知られている一流アーティストのGACKT。
クールで美しく、教養深くてカリスマ性のある彼にぴったりです。
県民達を奮い立たせる熱い演技にも注目です。
彼らの行く手を阻む、千葉解放戦線のリーダー阿久津翔役を大河ドラマ『龍馬伝』『花燃ゆ』に出演した伊勢谷友介が担当。
台詞一言ひとことに情熱や気迫が感じられ、ゾクゾク震えてしまうほどです。
他にも、東京でクーデターを試みた伝説の埼玉県人の埼玉デューク役に、時代劇『必殺仕事人』で知られる京本政樹が出演。
顔面偏差値の高いメインキャラクター達が格好良くて、思わず見入ってしまいますよ。
他にも、中尾彬、竹中直人、小沢真珠、ブラザー・トム、麻生久美子などベテラン俳優も多数出演。
有名俳優陣の体当たりの熱演によって、笑える映画に仕上がりました。
実力派俳優それぞれの魅力が光っていて、見応え抜群です。
コメディ、シリアスいずれも見応え抜群
本作のもうひとつの魅力は、中毒性のあるカオスな世界観にあります。
百美や麗、白鳳堂学院の醸し出す中世ヨーロッパ風の世界観の中で、関東地方の地名やご当地ネタが大量放出。
そのギャップがシュールな笑いをもたらしてくれています。
特にまるで戦国時代の合戦のように大きな河川を挟み、壮大なスケールで展開される出身俳優カードバトルは必見です。
合戦で出されたカードは垂れ幕や横断幕、大凧などと、どれも大掛かり。
相手側カードの俳優の存在感に圧倒されたり、自分達のカードが相手側よりも知名度や印象の乏しいもので、出したカードを自ら下げてしまったりと、コミカルなシーンが満載です。
観ていて思わず吹き出してしまった人も多いのではないでしょうか。
また、本作は笑えるシーンだけでなく熱いシーンも見どころです。
クライマックスの東京都庁に侵攻する場面では、民衆達の底知れないパワーに圧倒されることでしょう。
この場面ではCGを使わず、実際に東京都庁前で撮影。
都庁前の道路を3日間全面封鎖するという大規模なロケを実施し、1000人ものエキストラが参加したそうです。
大規模なスケールと手に汗握る攻防戦に釘付けになりますよ。
都市伝説の一方で展開される菅原家のドラマも、娘のツッコミが効いたコミカルな会話が面白く観ている者を飽きさせません。
クライマックスでは、有名な企業が埼玉県発として紹介され、その意外性に驚きます。
見始めたらどんどんと話に引き込まれ、見終えたあとにまた何度も観たくなる中毒性のある作品です。
ディスりの裏に隠されたテーマが深い
本作の見どころは、笑いに隠された深いテーマにもあります。
埼玉、千葉、群馬をディスりつつ、差別に立ち向かう人々の奮闘が描かれているのです。
特に埼玉県に対してのディスりや差別が、コミカルな表現で至るところに出てきます。
なかには「埼玉県人にはそこらへんの草でも食わせておけ!」といった強烈なものも。
観ているだけで「それはないだろう」と否定し、ツッコミを入れたくなるほどです。
「差別や迫害はつまらないものだ」ということや「それぞれ違いがあるからこそ世界は美しい」といったメッセージに触れながら、是非映画を堪能してみてください。
はなわのご当地ソング『埼玉県のうた』が令和に復活
主題歌『埼玉県のうた』を唄うのはお笑い芸人のはなわです。
2003年にリリースした、彼の出身地を自虐的に唄った『佐賀県』は25万枚のヒット。
同年の『第54回NHK紅白歌合戦』にも初出場しました。
『埼玉県のうた』は、2003年にリリースしたCD『HANAWA ROCK』に収録された『埼玉県』のリメイク曲です。
佐賀県出身のイメージがある彼ですが、実は生まれは埼玉県春日部市。
そんな彼が埼玉県を深く掘り下げ、自虐ネタをノリノリに歌い上げたのがこの曲です。
武内英樹監督が自ら調べ上げ、この楽曲を主題歌に起用したそうです。
現在の埼玉県のネタを大幅に追加し、グレードアップした今作は、自虐的ながらも埼玉県愛が詰まった疾走感あふれるパンクな歌謡曲となっています。
繰り返される「ダンダンダンダダンダンダン」のパンチの効いた歌声が、聞いているうちに楽しい気持ちにさせてくれますね。
埼玉県を自虐しながらも、埼玉愛が伝わってくるこの曲は、映画の世界観とベストマッチ。
最後まで笑いが止まりません。
今まで知らなかった埼玉県の様々な一面を、笑いながら知れる楽しい1曲です。
観たら故郷と自分に誇りを持てる
映画『翔んで埼玉』は、自虐を駆使しながら埼玉県への愛を表現した作品です。
何もない場所だと決めつけていた故郷に、自虐で笑える魅力や知られていない良さが隠れていることに気づかされます。
また、故郷の地域性と照らし合わせることで、そこに生まれた自分自身にもこんな魅力があったのだと気づくきっかけも与えてくれるでしょう。
この映画を観ることで、故郷や自分自身に誇りを持って生きることがどれだけ大切で、立派なことなのかがきっと実感できます。
疲れた時こそ本作を観て、楽しんでみてはいかがでしょうか。
見終わった後はポジティブで元気な気持ちになれること間違いなしです。
TEXT Asakura Mika