フェティシストの兄あにはいくじなし
フェティシストの兄あにはいくじなし
それでも僕ぼくの姉ねえさんと恋こいにおちました
フェティシストの姉あねはかわいくて
フェティシストの姉あねはかわいくて
それでも根性こんじょうなし男おとこと恋こいにおちました
僕ぼくの姉ねえさんは美うつくしかったが若わかくして死しんだ
姉あねは美うつくしかったが、いかれていた フェティシストだった
空模様そらもようの気嫌きげんの悪わるい日ひには 夕暮ゆうぐれまで近所きんじょをうろつきまわった
葬式そうしきの夜よる 姉ねえさんの恋人こいびとと称しょうする男おとこがやって来きて
僕ぼくに言いった「ケンジ君くん これからは僕ぼくを兄にいさんだと思おもってくれ」
その夜よる、兄にいさんは僕ぼくの手てを握にぎってこう言いった
「君きみの姉ねえさんとは理解りかいし合あっていたよ」
やがて彼かれは感極かんきわまったのかポロポロと涙なみだを流ながし始はじめた
僕ぼくの手てを握にぎりながら、涙なみだを流ながし始はじめた
その手ては妙みょうに暖あたたかく僕ぼくはちょっといやだなァと思おもっていた
それからしばらくして兄にいさんは僕ぼくの家いえに遊あそびに来くるようになった
遊あそびに来くるというのは言いい訳わけで僕ぼくに金かねをせびりに来くるのであった
「ケンジ君くん ちょっと都合つごうしてくれないか、
悪わるい友人ゆうじんにひっかかってしまってねぇ」などと言いいつつ
その日ひも僕ぼくの手てから金かねを受うけとり
兄にいさんはテレた笑わらいを浮うかべていたが、
ふいに真顔まがおになって僕ぼくに言いった「ケンジ君くん二人ふたりで旅たびに出でよう
どこか遠とおい旅たびに出でよう 見みたこともない国くにの風かぜに吹ふかれたら
姉ねえさんの事ことなんかすぐに忘わすれられるだろう
のんびり暮くらそう あまり金かねにはならないかも知しれないけれど
まっとうに生いきるということはそーいうことなんだなァ」
結局けっきょく二人ふたりでアンテナを売うりながら旅たびを始はじめた
テレビもないような村むらでもうれしそうに買かってくれて
「ありがたい」とまで言いってくれた 僕ぼくも何なんだか気分きぶんがよかった
アンテナは飛とぶように売うれて 僕ぼくたちはお金持かねもちになった
それはいい気分きぶんだった 一日中いちにちじゅうニコニコして暮くらした
そんなある日ひ 僕ぼくは生いき倒だおれの女おんなの人ひとを見みた
その人ひとは心こころなしか姉ねえさんに似にていて 気きにはなったが
助たすけずに通とおりすぎてしまった
次つぎの日ひ 結局けっきょくその人ひとは死しんだと聞きいた
その話はなしをすると兄にいさんは僕ぼくを怒鳴どなりつけた
「ケンジ君くん!ケンジ君くん!僕ぼくはそんな男おとこに教育きょういくした覚おぼえはない
姉ねえさんだってあの世よで悲かなしんでいるはずだ
ケンジ君くん!このいくじなしが!いくじなしが!この根性こんじょうなしが!」
僕ぼくと兄にいさんは鉄棒てつぼうが好すきだった
小学校しょうがっこうの校庭こうてい開放かいほうにいって 二人ふたりで鉄棒てつぼうでグルグルと回まわった
グルグル回まわっていると いやな事ことや姉ねえさんの事ことなんかは
不思議ふしぎと忘わすれてしまえるのだった
回まわりながら兄にいさんは僕ぼくに言いった「ケンジ君くんなんだか気持きもちがよいねぇ」
「なんだかとっても気持きもちがいいですねぇ」グルグルグルグル………
グルグル回まわりながら兄にいさんはこう言いった
「ケンジ君くん!ケンジ君くん!今いま思おもうと君きみの そして僕ぼくの姉ねえさんの事ことは
とてもいい思おもい出でだったよねぇ」
兄にいさん!兄にいさん!いくじなしの兄にいさん!
僕ぼくは君きみと姉ねえさんを脳髄のうずいは人間にんげんの中なかの迷宮めいきゅうであるという
観点かんてんからあえて許ゆるそう だから兄にいさん
どんなにたくさんの人ひとがバカにしても
君きみたちはフェティシストであり続つづけてほしい
兄にいさん 聞きいているのか? 兄にいさん 聞きいているのか?
しかし その後ご兄あにはしがないアンテナ売うりで一生いっしょうを終おえた
このいくじなしが…………
フェティシストfetishisutoのno兄aniはいくじなしhaikujinashi
フェティシストfetishisutoのno兄aniはいくじなしhaikujinashi
それでもsoredemo僕bokuのno姉neeさんとsanto恋koiにおちましたniochimashita
フェティシストfetishisutoのno姉aneはかわいくてhakawaikute
フェティシストfetishisutoのno姉aneはかわいくてhakawaikute
それでもsoredemo根性konjouなしnashi男otokoとto恋koiにおちましたniochimashita
僕bokuのno姉neeさんはsanha美utsukuしかったがshikattaga若wakaくしてkushite死shiんだnda
姉aneはha美utsukuしかったがshikattaga、いかれていたikareteita フェティシストfetishisutoだったdatta
空模様soramoyouのno気嫌kigenのno悪waruいi日hiにはniha 夕暮yuuguれまでremade近所kinjoをうろつきまわったwourotsukimawatta
葬式soushikiのno夜yoru 姉neeさんのsanno恋人koibitoとto称syouするsuru男otokoがやってgayatte来kiてte
僕bokuにni言iったtta「ケンジkenji君kun これからはkorekaraha僕bokuをwo兄niiさんだとsandato思omoってくれttekure」
そのsono夜yoru、兄niiさんはsanha僕bokuのno手teをwo握nigiってこうttekou言iったtta
「君kimiのno姉neeさんとはsantoha理解rikaiしshi合aっていたよtteitayo」
やがてyagate彼kareはha感極kankiwaまったのかmattanokaポロポロporoporoとto涙namidaをwo流nagaしshi始hajiめたmeta
僕bokuのno手teをwo握nigiりながらrinagara、涙namidaをwo流nagaしshi始hajiめたmeta
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それからしばらくしてsorekarashibarakushite兄niiさんはsanha僕bokuのno家ieにni遊asoびにbini来kuるようになったruyouninatta
遊asoびにbini来kuるというのはrutoiunoha言iいi訳wakeでde僕bokuにni金kaneをせびりにwosebirini来kuるのであったrunodeatta
「ケンジkenji君kun ちょっとchotto都合tsugouしてくれないかshitekurenaika、
悪waruいi友人yuujinにひっかかってしまってねぇnihikkakatteshimattenee」などとnadoto言iいつつitsutsu
そのsono日hiもmo僕bokuのno手teからkara金kaneをwo受uけとりketori
兄niiさんはsanhaテレtereたta笑waraいをiwo浮uかべていたがkabeteitaga、
ふいにfuini真顔magaoになってninatte僕bokuにni言iったtta「ケンジkenji君kun二人futariでde旅tabiにni出deようyou
どこかdokoka遠tooいi旅tabiにni出deようyou 見miたこともないtakotomonai国kuniのno風kazeにni吹fuかれたらkaretara
姉neeさんのsanno事kotoなんかすぐにnankasuguni忘wasuれられるだろうrerarerudarou
のんびりnonbiri暮kuraそうsou あまりamari金kaneにはならないかもnihanaranaikamo知shiれないけれどrenaikeredo
まっとうにmattouni生iきるということはそkirutoiukotohasoーいうことなんだなiukotonandanaァa」
結局kekkyoku二人futariでdeアンテナantenaをwo売uりながらrinagara旅tabiをwo始hajiめたmeta
テレビterebiもないようなmonaiyouna村muraでもうれしそうにdemoureshisouni買kaってくれてttekurete
「ありがたいarigatai」とまでtomade言iってくれたttekureta 僕bokuもmo何nanだかdaka気分kibunがよかったgayokatta
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それはいいsorehaii気分kibunだったdatta 一日中ichinichijuuニコニコnikonikoしてshite暮kuらしたrashita
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そのsono人hitoはha心kokoroなしかnashika姉neeさんにsanni似niていてteite 気kiにはなったがnihanattaga
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次tsugiのno日hi 結局kekkyokuそのsono人hitoはha死shiんだとndato聞kiいたita
そのsono話hanashiをするとwosuruto兄niiさんはsanha僕bokuをwo怒鳴donaりつけたritsuketa
「ケンジkenji君kun!ケンジkenji君kun!僕bokuはそんなhasonna男otokoにni教育kyouikuしたshita覚oboえはないehanai
姉neeさんだってあのsandatteano世yoでde悲kanaしんでいるはずだshindeiruhazuda
ケンジkenji君kun!このいくじなしがkonoikujinashiga!いくじなしがikujinashiga!このkono根性konjouなしがnashiga!」
僕bokuとto兄niiさんはsanha鉄棒tetsubouがga好suきだったkidatta
小学校syougakkouのno校庭koutei開放kaihouにいってniitte 二人futariでde鉄棒tetsubouでdeグルグルguruguruとto回mawaったtta
グルグルguruguru回mawaっているとtteiruto いやなiyana事kotoやya姉neeさんのsanno事kotoなんかはnankaha
不思議fushigiとto忘wasuれてしまえるのだったreteshimaerunodatta
回mawaりながらrinagara兄niiさんはsanha僕bokuにni言iったtta「ケンジkenji君kunなんだかnandaka気持kimoちがよいねぇchigayoinee」
「なんだかとってもnandakatottemo気持kimoちがいいですねぇchigaiidesunee」グルグルグルグルguruguruguruguru………
グルグルguruguru回mawaりながらrinagara兄niiさんはこうsanhakou言iったtta
「ケンジkenji君kun!ケンジkenji君kun!今ima思omoうとuto君kimiのno そしてsoshite僕bokuのno姉neeさんのsanno事kotoはha
とてもいいtotemoii思omoいi出deだったよねぇdattayonee」
兄niiさんsan!兄niiさんsan!いくじなしのikujinashino兄niiさんsan!
僕bokuはha君kimiとto姉neeさんをsanwo脳髄nouzuiはha人間ningenのno中nakaのno迷宮meikyuuであるというdearutoiu
観点kantenからあえてkaraaete許yuruそうsou だからdakara兄niiさんsan
どんなにたくさんのdonnanitakusanno人hitoがgaバカbakaにしてもnishitemo
君kimiたちはtachihaフェティシストfetishisutoでありdeari続tsuduけてほしいketehoshii
兄niiさんsan 聞kiいているのかiteirunoka? 兄niiさんsan 聞kiいているのかiteirunoka?
しかしshikashi そのsono後go兄aniはしがないhashiganaiアンテナantena売uりでride一生issyouをwo終oえたeta
このいくじなしがkonoikujinashiga…………