イヌガミ邸神懸りミステリヰ 歌詞 てにをは ふりがな付

「夜露よつゆが一粒ひとつぶだけ零こぼれ落おちるとしたら誰だれの頬ほおを選えらぶだろう。
ぼくはこれから永遠えいえんと指切ゆびきりするんだ。紅あかい襖ふすまを開あければ儀式ぎしきの間ま。
哀かなしいわけじゃない。そうか……これが切せつないってことなんだ。
豊ゆたかな旋律せんりつがまぶたの裏うらに浮うかぶ。椛もみじが舞まう。
何代なんだいも何代なんだいも受うけ継つがれる。救すくいを乞こう。崇拝すうはい。土着どちゃく信仰しんこう。
球体きゅうたいの先端せんたんを探さがし続つづけ、ぼくはきみを救すくうためにヒトをやめ、
きみに巣食すくうモノを払はらう。病魔びょうまよ去され。薄倖はっこうよ散ちれ。
ぼくはきみのために狗いぬになる。
『桜花おうかとは春はるに咲さくにあらず。
春はるに散ちって春夏秋冬ひととせ閉とじるものなり。』
幽遠ゆうえんな回廊かいろうに迷まよい続つづけ、髪かみは牡丹ぼたんの花はなに絡からまり、
ぼくの恋こいは最後さいごまで空回からまわり。
山菜さんさいを洗あらう父様とうさまの背せに小ちいさな小ちいさな箒星ほうきぼし。
鶫つぐみの羽はねは船ふねの帆ほのように、他ほかにはない新あらたな花はなを描えがく。

家いえを継つぐのよ。強つよくおなりと言いった。母様かあさまぼくに言いった。
うん、うまくやるよ平気へいきだよ。でもきみと遊あそべなくなるのは寂さびしいな。
土地とちを救すくうため贄にえを捧ささげ、ヒトが神かみを造つくる山村さんそんに、
探偵たんてい團だん名乗なのる子供こどもら。嗚呼ああどうかどうか邪魔じゃましないでおくれ。」

謎なぞを暴あばくは探偵たんていなれど
恋こいを暴あばくはぼくらの仕事しごとじゃない

「一歩いっぽ歩あゆむごとに蘇よみがえる、幼おさなき日ひの情景じょうけい。
麦藁帽子むぎわらぼうしの下したで笑わらうきみ。とても綺麗きれいだ、綺麗きれいだった」

「まどろむ縁側えんがわそろそろ起おきて。
一族いちぞくの掟おきて守まもるため――なんて
もうそんなの本当ほんとうはどうだっていいんだ。きみを救すくいたいそれだけなんだ
母様かあさまにだって内緒ないしょだよこんな想おもい。
朽くちた蟻地獄ありじごくにそっと放ほうり込こんで仕舞しまい込こんで秘密ひみつなんだ、ぼくの恋こいは。
そしてぼくの中なかに神かみ降おりる。
きみの腕うでに胸むねに噛かみつきたい。自分じぶんが自分じぶんでないみたい。
そうかぼくはもうとうにヒトじゃない。
ヒトじゃない。ヒトじゃなかったんだ。
それでも笑わらい転ころげふたりで絵えを描かき、昼寝ひるねをし、喧嘩けんかをしたこと、
幼おさない足取あしどりで沢さわをまたいだこと、忘わすれない――忘わすれないよ。」

牙きばが生はえても心こころは子供こども
獣けものに見みえて心こころは子供こども
謎なぞを暴あばくは探偵たんていなれど
恋こいを暴あばくはぼくらの仕事しごとじゃない

「どこかで誰だれかが愛あいを告白こくはくしている。
落おちてきそうな濃こい空そらの下したで誰だれかが。
伏ふせたきみの瞼まぶたに初雪はつゆきが降ふるを見みたあのときから、
ぼくはきみのことを――」

ぼくはきみの狗いぬになる

キミノシアワセダケヲネガフ