学校の先生 歌詞 坂上二郎 ふりがな付

みなさん、このたびこのクラスをうけもつことに
なりました坂上さかがみです。仲良なかよくやりましょう……。

小ちいさな町まちの 中学校ちゅうがっこうに
はじめて来きたのは 春はるのこと
あれからいくたび 校庭こうていに
桜さくらの花はなは 咲さいたろう
教おしえた子供こどもは 数かぞえ切きれない

安江やすえは、生徒せいと会費かいひもなかなかはらえない
貧まずしい家いえの子供こどもでした。
秋あきの遠足えんそくの時ときでしたが、私わたしは安江やすえのために
お菓子かしを少すこし買かっていったことがあります。
彼女かのじょはお菓子かしの袋ふくろを持もって目めにいっぱいの涙なみだを
ためておりました。いまも忘わすれておりません。
しかし今いまは元気げんきに工場こうじょうにつとめ夜よるは定時制ていじせい高校こうこうに通かよって
いる安江やすえ「生いきていることは楽たのしい」と
この間あいだ来きた彼女かのじょの手紙てがみに書かいてありました。

生うまれた時ときは 誰だれでも同おなじ
裸はだかで産声うぶごえ あげるのに
子供こどもの時ときから それぞれに
違ちがった道みちを 歩あるきだす
私わたしの力ちからじゃ どうにもできない

孝夫たかおは非行少年ひこうしょうねんでした。
悪わるい仲間なかまと付つき合あって 学校がっこうにも
なかなか出でて来きませんでした。
私わたしも 何度なんどか説教せっきょうしましたが
聞きくような子こじゃありません。
ところがある日ひ 彼かれが何人なんにんかの少年しょうねんにかこまれて
喧嘩けんかしているところに出合であいました。
私わたしは孝夫たかおをかばいましたが、
映画えいがのようにかっこよくはいきません。たちまち少年しょうねんたちに、
なぐられたりけられたりして、私わたしはのびてしまいました。
「先生せんせい、あんまりかっこつけるんじゃねぇよ」
孝夫たかおはそう云いって私わたしに肩かたをかしながら
家いえまで送おくってくれました。
それからです。孝夫たかおと仲良なかよくなったのは。
今いまでも時々ときどき家いえに遊あそびに来きます。
運送うんそう会社がいしゃにつとめているそうです。

小ちいさな町まちの 中学校ちゅうがっこうに
いつしか月日つきひは 流ながれゆく
今年ことしも近ちかづく 卆そつ業ぎょうが
螢ほたるの光ひかりに 送おくられて
巣立すだってゆくだろ 教おしえ子ごたちが

洋子ひろこという子こは大変たいへん頭あたまの良よい子こでしたが早はやく死しにました。
結婚けっこんをして別わかれた子こもいます。酒場さかばづとめをしている子こ
もいます。大学だいがく受験じゅけんを三回さんかいも失敗しっぱいした子こもいます。
どうも幸しあわせな子こより不幸ふしあわせな子この方ほうが、
よくおぼえているようです。
考かんがえてみると、人間にんげんていう奴やつは、誰だれだって多おおかれ少すくなかれ
不幸ふこうを背負せおって生いきているようです。
より良よい明日あしたを願ねがって一生懸命いっしょうけんめい生いきているもののようです。
みんな負まけるなよ、みんな負まけるなよ……と、
私わたしはそっと呟つぶやくだけです。