役者やくしゃ育そだちも 芝居しばいじゃ惚ほれぬ
かけた情なさけに 嘘うそはない
苦労くろうやつれを 素顔すがおに見みせて
あわれ 浪華なにわの 侘わび住居ずまい
かわい女房にょうぼうと 手てを取とり合あえば
つらい浮世うきよも 花はなの宿やど
寒さむい夜風よかぜにゃ 肌はだよせ合おうて
恋こいし東京とうきょうを 夢ゆめに見みる
「お徳とく、死しんじゃいけない。生いきてくれ、いつ
までも、いつまでも生いきていてくれ。いくらおい
らが出世しゅっせしたって、お前まえが死しんでしまっては、
何なにがうれしいものか、お前まえのいない世よの中なかに
は、桧舞台ひのきぶたいも何なにもありゃしないんだ。」
泣ないちゃなるまい 泣なかせちゃならぬ
命いのちかけたが 恋こいの意地いじ
桧舞台ひのきぶたいも 一人ひとりじゃ踏ふまぬ
胸むねにおもかげ 抱だいて踏ふむ
役者yakusya育sodaちもchimo 芝居shibaiじゃja惚hoれぬrenu
かけたkaketa情nasakeにni 嘘usoはないhanai
苦労kurouやつれをyatsurewo 素顔sugaoにni見miせてsete
あわれaware 浪華naniwaのno 侘waびbi住居zumai
かわいkawai女房nyoubouとto 手teをwo取toりri合aえばeba
つらいtsurai浮世ukiyoもmo 花hanaのno宿yado
寒samuいi夜風yokazeにゃnya 肌hadaよせyose合oうてute
恋koiしshi東京toukyouをwo 夢yumeにni見miるru
「おo徳toku、死shiんじゃいけないnjaikenai。生iきてくれkitekure、いつitsu
までもmademo、いつまでもitsumademo生iきていてくれkiteitekure。いくらおいikuraoi
らがraga出世syusseしたってshitatte、おo前maeがga死shiんでしまってはndeshimatteha、
何naniがうれしいものかgaureshiimonoka、おo前maeのいないnoinai世yoのno中nakaにni
はha、桧舞台hinokibutaiもmo何naniもありゃしないんだmoaryashinainda。」
泣naいちゃなるまいichanarumai 泣naかせちゃならぬkasechanaranu
命inochiかけたがkaketaga 恋koiのno意地iji
桧舞台hinokibutaiもmo 一人hitoriじゃja踏fuまぬmanu
胸muneにおもかげniomokage 抱daいてite踏fuむmu