灯ひほの暗ぐらく
夜露よつゆは立たちこめぬ
虚うつろな我わが胸むねの
淋さびしさ耐たえ難むずかし
臨終りんじゅうのその床ゆかに
苦くるしみ悶もだゆるは
過すぎにしその想おもい出で
老おいし母ははの下した
去さりて求もとめし恋こい
紅あかき薔薇ばらか薊あざみか
妖あやしく開ひらく花はな
されど知しらざりし
花はなに棘いばらあるを
我わが心こころは我わが肌はだえは
あわれ傷きずつきぬ
月日つきひは流ながれゆき
我わが身みは敗やぶれ果はて
たどるは懐なつかしの
我わが家いえの細路ほそみちよ
その時ときすでに亡なし
やさしき母ははの手ては
かえらぬ雲くもの彼方かなた
今いまは唯獨ただひとり
寄辺よるべなきこの身み
うらぶれし運命うんめい
悲かなしき人ひとの世よ
死しの影迫かげせまりて
戦おののくこころに
吹ふき入いる風かぜの冷つめたさ
静しずけき諦あきらめに
苦くるしみ薄うすれゆき
聖せいなる祈きもて
悶もだえは消きえ去さりぬ
遙はるかに我われを呼よぶ
いとしき母ははの声こえ
聴きかずや永久とわの愛あいを
灯hiほのhono暗guraくku
夜露yotsuyuはha立taちこめぬchikomenu
虚utsuろなrona我waがga胸muneのno
淋sabiしさshisa耐taえe難muzukaしshi
臨終rinjuuのそのnosono床yukaにni
苦kuruしみshimi悶modaゆるはyuruha
過suぎにしそのginishisono想omoいi出de
老oいしishi母hahaのno下shita
去saりてrite求motoめしmeshi恋koi
紅akaきki薔薇baraかka薊azamiかka
妖ayaしくshiku開hiraくku花hana
されどsaredo知shiらざりしrazarishi
花hanaにni棘ibaraあるをaruwo
我waがga心kokoroはha我waがga肌hadaえはeha
あわれaware傷kizuつきぬtsukinu
月日tsukihiはha流nagaれゆきreyuki
我waがga身miはha敗yabuれre果haてte
たどるはtadoruha懐natsukaしのshino
我waがga家ieのno細路hosomichiよyo
そのsono時tokiすでにsudeni亡naしshi
やさしきyasashiki母hahaのno手teはha
かえらぬkaeranu雲kumoのno彼方kanata
今imaはha唯獨tadahitoりri
寄辺yorubeなきこのnakikono身mi
うらぶれしurabureshi運命unmei
悲kanaしきshiki人hitoのno世yo
死shiのno影迫kagesemaりてrite
戦ononoくこころにkukokoroni
吹fuきki入iるru風kazeのno冷tsumeたさtasa
静shizuけきkeki諦akiraめにmeni
苦kuruしみshimi薄usuれゆきreyuki
聖seiなるnaru祈kiもてmote
悶modaえはeha消kiえe去saりぬrinu
遙haruかにkani我wareをwo呼yoぶbu
いとしきitoshiki母hahaのno声koe
聴kiかずやkazuya永久towaのno愛aiをwo