フィーチャリングアーティストに次世代ユニットX21を起用
『仮面ライダービルド』の劇中歌を制作ats-、清水武仁、渡辺徹の“スーパークリエイター”3人が、このたび、新プロジェクトを立ち上げて楽曲制作を行った。今回手掛けたのは『仮面ライダービルド』の劇中歌となる「Ready Go!!」だ。
これまで、浜崎あゆみや倖田來未、鈴木亜美、AAA、安室奈美恵、BoAなど数々の有名アーティストたちに楽曲提供やプロデュースを手掛け、日本レコード大賞など各賞をのべ13回受賞してきた3人。彼らが作品に関わったCDの総売上枚数は4000万枚以上にも上る。
今回のプロジェクトは、『仮面ライダービルド』の前作『仮面ライダーエグゼイド』の劇伴を3人が手掛けたことから始まった。3人がタッグを組むことで、それぞれが持つ高い音楽スキルや個性が融合され、幅広い音楽性の中から求められる場面に合わせて、より高度なセレクトの中で楽曲制作ができるというわけだ。
当然、数々のアーティストの楽曲をそれぞれでも手掛ける3人なので、すべての工程を一人で完結できてしまうわけだが、今回は敢えて、渡辺がシンセサイザーキーボーディストとしてサウンドにアグレッシブさや瑞々しさを与え、清水がギタリストとしてハードエッジとスピード感で引っ張り、ats-がトラックメーカーとしてヘビーボトムとトリッキーさを織り込んだサウンドメイキングを行ったという。
次世代ユニット「X21」がフィーチャリングとして参加!
今回の楽曲には、次世代ユニット「X21」のメンバーをフィーチャリングという形でぶつけた。より『仮面ライダービルド』のイメージにマッチする楽曲を目指して制作を進めるためだという。そこにはどんな狙いがあるのか。3人は次のように語った。
「普段の制作活動の中では作詞・作曲・編曲・歌のレコーディングと各々の分担が明確に決まっている事が多いのですが、今回は仮面ライダービルドの劇中曲というテーマのもとで、全ての工程について関わり、入口から出口まで見届けた上で作品を送り出す事が出来ました。歌録りの際はレコーディングエンジニアとして卓前に座り、サウンドに適した空気感を意識したり、逆に録れた歌からサウンドを微調整したりなど、『Ready Go!!』の歌詞ではないですがボーダーレスな関わり方だからこそ出来るクリエイティビティな制作環境こそが、我々にとっての実験であり、狙いだったような気がしています。」(渡辺)
「仮面ライダービルドの世界観を通し、パンドラボックスから放たれた光のごとく、僕ら3人の音楽と今回ヴォーカリストとして迎えたX21のメンバーの歌を組み合わせて計算をはるかに超えた化学反応と美しき誤算を楽しめればと思っています」(ats-)
「『仮面ライダービルド劇中歌』を通して、クリエイター、X21、関わる各々が普段の活動とは違う実験的なパッケージで創作の可能性を拡げていくことが狙いです」(清水)
いずれにしても、次の“可能性”を考えての今回のプロジェクトということが分かる。そんな可能性を含んだこの大掛かりなプロジェクトには、X21からは今回のユニットのメインとなる田中珠里、末永真唯。加えて、籠谷さくら、松田莉奈、長尾真実、川口ゆりなの計6人が固定メンバーとして選抜された。
「今回にふさわしい声質、歌唱を持ち合わせた方が今回のメンバーの皆さんでした」(清水)
「僕らのプロデューサーとX21の原盤ディレクターが同じ人で、彼女達のポテンシャルが我々の想像よりも高い所にあるという事で今回の楽曲を構想していたタイミングで紹介をされまして、レコーディングやライヴに何度か足を運びながら、確かに面白い作品が出来るかもしれないなと思い、X21からヴォーカリストを立てる事を決めました。
楽曲完成後プリプロと言う形で19名メンバー全員の声をあててもらい、『Ready Go!!』が一番良く聴こえる声と気持ちを感じた方から選ばせて頂きました。6名の他にこの曲では更に小澤奈々花さん、井頭愛海さん、山﨑紗彩さんの力を借りてよりこの作品が際立つような歌を歌ってもらえたと思います。」(渡辺)
「想いの強さ、熱さはもちろんですが、その激しい気持ちを歌で伝えるスキルを持ち合わせているメンバーでした」(ats-)
と、3人はX21のメンバーについて語った。スキルはもちろん、その向こうにある“見えない可能性”を彼女達から感じ取れたのかもしれない。
新曲「Ready Go!!」は、仮面ライダービルドの世界観とベストマッチ楽曲名は「Ready Go!!」。この曲について3人は次のように語る。
「始まりから畳み掛けるように挑発的かつ直球で最後まで押し切るようなビート感。そして意外にも重く謎に満ちて進んでいくストーリーとシンクロするように、怪しく激しく強い曲調になっています」(ats-)
「アレンジ、ミックスを通じて主に高揚感、疾走感で劇中にインパクトを残すことを意識しました」(清水)
「メロディーの力強さと切なさは仮面ライダービルドの主人公、桐生戦兎のイメージにぴったりだと思います。音色やフレーズ等アレンジ面、ボーカルレコーディングでもその部分を意識し、僕らの作品であることと仮面ライダービルドの世界観との『ベストマッチ』を心掛けました」(渡辺)
ミックスは、『仮面ライダーエグゼイド』の時からエンジニアとして全サウンドをまとめた森元浩二.氏が担当。「完璧な一体感とスピード感と命を吹き込んだ作品」(ats-)となった。さらに、使用する楽器にももちろん抜かりはない。レコーディング時、スタジオには見たことのない機材も…。
「ギターはいつもメインで使用するストラトと別にミニハムのレスポールの2本を使用しています。ベーシックにストラト、テーマのフレーズや細かいアルペジオなどはレスポールを使っています」(清水)
「レコーディング時のシンセは岩佐俊秀氏にコーディネートしてもらい、イギリスブリトルのMdulus Musicの『Modulus 002』という現在日本に一台しかないポリフォニックシンセを使用。メイドインUKらしく重く無機質、クレバーかつ繊細なサウンド。今回は楽曲に奥行きを加える役割で使用致しました。決して目立たない役目ながらなくてはならない存在感でした」(ats-)
「イントロやエンディングで鳴っているリードの音色にはMoogのアナログシンセサイザーと(現時点で)最新のソフトウェアシンセサイザーのVengeance Soundの『AVENGER』をレイヤーして鳴らしています。強力なリード音色にポルタメントを若干かける事により力強さだけでなく切なさも演出しています。また、2コーラス目のBメロではRolandのピアノ音色とKORGのベル音色をレイヤーさせ、歌メロをなぞっています。これもリード同様、力強さと切なさを演出しています。異なるシンセサイザーを同フレーズでレイヤーさせ、『ベストマッチ』を探ります」(渡辺)
スーパークリエイターならではの音作りに対するこだわりが感じられた。レコーディングは長時間にわたり行われ、曲は完成に向かっていった。
ミックスチェックにも参加! レコーディング時のX21メンバーの様子は?
X21メンバーの田中と末永は楽器レコーディングや楽曲完成の最終工程のひとつであるミックスチェックにも参加した。スーパークリエイター3人の制作過程を目の当たりにする事でどんな感情が生まれたのだろうか。
「今回、数々の実績のある3名のクリエイターとコラボできたことがまずとても凄いこと。ミックスチェックにも参加させてもらいましたが、率直な感想として、アーティストとして自分の中で歌を大事にしたいと改めて思いました。『Ready Go!!』では、メンバー全員の声がとても格好良くなっています。今回のプロジェクトを通して新しい自分を発見することができました」(田中)
「単純に緊張しました(笑)。楽器のレコーディングに参加したせいかサウンドに導かれるようにいつもとは違う力を使って戦いに挑むかのように歌った感覚です。完成した音源を聴くと声の雰囲気もいつもと全然違います。最近の私の傾向でもあるのですがレコーディング時には歌詞の世界観をじっくり自分に落とし込む事を心がけていて、『Ready Go!! 』では歌詞でいう理想と現実が今の自分の歌唱への力量とも重なり涙が出てしまう瞬間さえありました。それだけ思いを込めた作品になっています」(末永)
今回のプロジェクトを通じてX21のメンバーは数段レベルアップしたことは間違いなさそうだ。「仮面ライダービルド」を意識した今回の楽曲「Ready Go!!」は、同番組の3月18日、25日のオンエアの中で確認ができる。