4人編成で突き進む Drop’s のロックンロール・ジャーニー、その決意のステージ
4月1日、Drop’sがワンマンライブを新宿レッドクロスで開催した。ドラマーに新しく石川ミナ子を迎え、バンドのNEW SEASONを打ち出した昨年のワンマンライブからちょうど1年。日付も会場も同じく行われたこの公演は「APRIL FIRST CLUB'18」と名付けられ、チケットはソールドアウト。ファン待望のワンマン公演だったことが窺える。メンバーの中野ミホ(Vo&Gt)、荒谷朋美(Gt)、小田満美子(Ba)の3人は昨年1月に地元・札幌から上京。在学中だった石橋わか乃(Key)を東京で待ちながら、石川とともにこの1年、新体制の基盤を築いてきた。全国各地のイベントに出演し多くの対バンを重ね、バンドの底力を何倍にもあげてきた。それが伝わったのは1曲め「SWEET JOURNEY BLUES」で4人の音が合わさった瞬間。これまでも、一発の音で場の空気を一変させてきた彼女たちだが、この曲の少し憂いを含むフレーズにバンドの足どりが呼応したようなサウンドは、NEW SEASONを歩んできた手応えを自身で掴み取るような趣もあり、迫真に満ちたスタートに思えた。
フロアの熱が上がるなか、「ムーン・ライト」をはじめ中野が歌と向き合い堂々たる姿で圧倒するパートも。その美しく力強い佇まいは思わず息を飲むほど。精力的にソロでの弾き語りライブも行ってきた成果の表れもあるだろう。バンドサウンドのなかで気高く炸裂する感情と歌声、表現力は類稀なる才能だ。また、魅せて聴かせる荒谷のギターフレーズに遊び心がみえたり、タイトに渦巻く小田のグルーヴに躍動感が増していたり、小田とともにサウンドの屋台骨を担う石川のビートはこの1年でDrop’sのサウンドを見事更新してみせたりと、数々のステージを経て濃厚になった個々の色合いは、そのままバンド力に。「太陽」「かもめのBaby」「ドーナツ」「十二月」といった既存曲や新曲で放たれるパワーがとても逞しく、いくつもの見せ場をつくりながら曲ごとに深い印象を残していく。
そして、ライブ終盤では思いがけない報告があった。大学卒業と資格を取るために札幌に残って勉強していた石橋が3月31日をもって脱退。資格の取得にもう少し時間がかかることになり、みんなで話し合った末の決断だという。「このことを、どうやって伝えたらいいか考えたんですけど、この日にこの場で伝えるということを、私たちは選びました。でも、前向きにこれから4人でやっていこうという決意で今日ここに立っているので、みなさん、これからも見続けてほしいと思います」。集まったお客さんに向けて、少し声を震わせながら中野がゆっくりと話した。
奇しくもエイプリルフールなだけに、フロアにいたファンは信じたくない気持ちでいっぱいだったと思うが、まっすぐに思いを伝える中野とその様子を見守るメンバーに贈られたあたたかな拍手は最大のエールに。「これからもずっとDrop’sは続いていくし、ばし(石橋)もばしの人生を素敵に歩んでいくと思います。そうやって、みんなで頑張っていきます」と話した後、披露したのは新曲「Blue」。<悲しみはきっといつか終わるのさ 新しい歌を聴いてよ ここにいるから>。
そう聞き取れた歌詞に思わず喉の奥が熱くなる。青春の“青”。切なさの“青”。先ほどの報告で何度も「前向きに」と口にしていたことを思うと、見上げる空の“青”かもしれない。詳細なセットリストはまだ控えるが、とくにこの新曲「Blue」からラストまでの楽曲群が放った眩しさはDrop’sの音楽そのもの。4人はまた新たにというよりも、これまでの思いも重ねながら次の季節へと踏み出した。迫真に満ちたプレイでスタートしたこの日のステージは、バンド力と4人の決意表明をみせた一夜となった。
かつて高校の軽音部で出会い音楽活動をスタートしたDrop’s。腱鞘炎と神経脱臼発症のため昨年脱退した前任ドラマー・奥山レイカと今回の石橋の脱退は、メンバーにとって悔しい出来事だろう。しかし、石川との出会いによってバンドが新生したように、彼女たちは前を見据えて進んでいる。東京の桜はすでに満開を迎え、4月1日は少し汗ばむほどの天気だった。季節は変わり、季節は巡る。なお、このワンマンライブ「APRIL FIRST CLUB'18」は東京に続き4月5日(木)名古屋・CLUB UPSET、4月6日(金)大阪・LIVE SQUARE 2nd LINEにて開催される。4人編成で突き進むDrop’sのロックンロール・ジャーニー、その決意のステージをぜひ体感してほしい。
Text by:秋元美乃(DONUT) Photo by:新保勇樹
メンバー本人コメント
●石橋わか乃1年間お待たせしました。このような結果になってしまい申し訳ありません。来年もう一度、資格取得を目指したいと思います。それにあたり、これ以上わたしが活動を休止してメンバーの活動を制限する訳にはいかないと考えました。この6年間たくさん悩んできました。でも、バンドと学業を両立していこうと決めここまできた分、一度音楽から離れ、学業に専念する形をとることに決めました。待っていてくださったファンの皆さん、バンドメンバーには申し訳ない気持ちでいっぱいです。ひとりの人としてこの挫折を糧に、より成長できる道を選んだことをご理解いただけたら幸いです。
●Drop’s(中野ミホ・荒谷朋美・小田満美子・石川ミナ子)
ばしはこれまで、学業と並行して、音楽活動を続けてきました。その苦労や努力は、私達には想像もつかないほどだったと思います。正直くやしい気持ちも強いですが、ばしがたくさん考えて出した結論を受け入れて、それぞれの道を歩んでゆくことに決めました。彼女のつくりだす、繊細で凛としたメロディーが本当に好きです。そんな彼女らしく努力を続けてゆく姿を、全力で応援しながら、私達も負けないように前を向いて進んでゆきたいと思います。
Drop'sは四人になりますが、今まで以上に、自分たちを信じて、より沢山のひとに素敵な音楽を届けられるように活動していきます。これからも、あたたかい応援をよろしくお願いいたします。