自分たちが一本のライブごと必死にペダルを漕がないと導き出せない輝き
この日のライブの感想を述べるときに、遠藤正明がこう伝えてきた。「こうやって活動を続けていくのを当たり前だと思っていたけど、今日の公演を通して当たり前が特別なんだと感じさせられました」と。
僕らにとって一本のライブは、その日のために日程も空けチケットを購入するためにお金も用意し、当日へ向けて音源を聴いたり、ときには出かけるための洋服や化粧道具を買ったりといろんな準備を重ねながら期待を膨らませてゆくように、当たり前ではなく特別な存在。日常の中に生まれるサプライズな日。
でも、僕らもまた、その日のライブに参加した参加できなかったではなく、そのアーティストのライブが当たり前のようにまた行われると勝手に思い込んでいる。
先に触れた遠藤正明の言葉は、「ふたたび日本武道館でライブができる保証なんてないからこそ、その日のライブを大切にしたい。また日本武道館のステージへ立つためにも目の前のライブを、日々の活動をしっかり噛みしめたい。それくらい、毎回のライブが特別な意味を持っている」という想いから出た言葉だった。
音楽ファンであるなら、誰もが「解散」という別れを経験したことはあるだろう。たとえ一度大きな舞台に立ったことがあっても、ふたたび同じ舞台に立つ現実を迎えられず活動しているアーティストたちの姿も知っているのではないだろうか…。つまり、僕らもまたJAM Projectが「また日本武道館でライブをやるだろうからさ」「また次も(次のライブが)あるさ」と安易に思ってはいけないということだ。
この日のJAM Projectのライブも、「やべぇ、またライブに足を運んで騒ぎたいよ」と心底思わせてくれたライブだった。JAM Projectのメンバーは、2月17日の日本武道館公演でも、足を運んだ僕らを「また観たい」という気にさせてくれた。彼らはわかっている、その輝きは、自分たちが一本のライブごと必死にペダルを漕がないと導き出せないことを。たとえ一度輝いた光だとしても、自分たちがアイドリングしてしまったら、すぐにその光が翳ってゆくことを。だから彼らは、何時だって人(の心)を照らす光源を限界まで輝かせようと、一本一本のライブのペダルを全力で漕いでいる。
遠藤正明の言葉へ触発されたというか、「そうだよな」と思わされたことから、つい長々と余談話を書いてしまった。でも、先にこれだけは言いたい。「JAM Projectは当たり前を長く続けるために、すべての活動へ毎回全力投球している」ことを。僕らもまた、「次の機会がある」ではなく、「観たい」と思った気持ちがあるのなら、後悔しないように行動してゆくべきだと。
この日、影山ヒロノブも「JAM Projectが楽しすぎるからずっとやり続ける」と言ってたように、たとえメンバーらは老体に鞭打つことになっても、変わらず舞台上で絶叫し続けるだろう。いやいや、だからと言って安心してはいけない。何時、老体に鞭を打てなくなるかなんて、誰にもわからないことだから(笑)。
リアルとバーチャルを行き来しながら、大切な物事の本質を伝えようとしていた
頭上高く吊るされた巨大な日の丸。場内が闇へ包まれると同時に、その旗の元へ広がったのは、派手に着飾ったサイバーシティTOKYOの夜の姿。きらびやかな輝きも、すべては現実を覆い隠す偽りの華やかさ。そんなフェイクファーな世界へ5人の戦士たちが姿を現した。そう、JAM Projectのメンバーだ。5人が、エレクトロでラウドな『TOKYO DIVE』に合わせ軽快にステップを踏みながら歌うたびに、発色するコスチューム姿の5人の動きに合わせ、闇の中へ鮮やかな蛍光カラーな5つの姿が浮き上がっていた。
目の前に広がっていたのは、現実を隠すように彩った電脳空間。彼らは、虚飾まみれな先端社会を揶揄するようにメッセージを届けてきた。もしかしたら5人は、自分たちがNO BORDERな存在だからこそ、リアルとバーチャルとを隔てる境界線(ボーダーライン)を行き来しながら、大切な物事の本質を伝えようとしていたのではないだろうか…。それ以上に、5人の歌い踊る姿が衝撃的という言葉では済まされないほど驚愕だった。幾つになっても、何時の時代でも挑戦することに意味がある。その姿勢を、踊るJAM Projectの姿へ改めて教えられた。
今回のライブは、最新アルバム『TOKYO DIVE』へ収録した楽曲たちを中心に構成。続く『EMG』では、襲いかかる勢いと壮大な景観を重ね合わせた「攻める表情」に乗せ、メンバーらは野生の雄叫びを上げながら満員の観客たちをけしかけてきた。呑み込むのか、呑み込まれるのか。それくらい、剥き出しな感情をぶつけたスリリングな戦いが舞台上で繰り広げられていた。
TOKYO DIVE
燃えたぎる魂の炎で目の前の牙城を崩せと言わんばかりに轟いたのが、『BAD CITY~Wel'll be alright!~』。なんて凄まじい轟音な壁だろう。風雨にもびくともしない猛り狂う音の壁が、熱を持って押し寄せてくる。破壊的な楽曲の上で熱く咆哮するJAM Projectの姿は、まるで暴走した獣(けだもの)にも見えていた。
「今日は、ツアーの集大成を見せてやろうじゃないか。どっからでもかかってきなさい」(遠藤正明)、「熱いロックを感じてください」(福山芳樹)、「俺たちもここで金メダルを取ります」(きただにひろし)などなど、場内を埋めつくした観客たちを煽るメンバーたち。
闇をすべて焼き尽くすように吹き出す、無数の炎。メンバーらへ審判を求めてきた。闇の世界へ堕ち、堕落な快楽を貪るのか。それとも、気高き意志のもと光を求め己を輝かせるのか。激しく攻める『神ノ牙~The Fang of Apocalypse~』の演奏に巻き込まれた僕らは、踏み込んだデンジャラスゾーンの中、未来へ進むための選択肢をせまられていた。
力強い歌声からの幕開けだ。勇壮なシンフォニアナンバー『勝利の未来-とき-』が、身体の奥底からエナジーを沸き上がらせる。魂が燃え盛る、激しい唸りに触発され、赤い(サイリウムの)拳を突き上げずにいれない。その歌声と演奏に感情が鼓舞され、騒がずにいれなかった。
蒼の世界へ全力でダイブ!!。『迷宮のプリズナー』でも、轟音渦巻く演奏と、気持ちを高揚へ導く歌に触発され、天高く拳を上げ続けたかった。これはバトルだ。どっちが先に熱狂へ呑み込まれてゆくのか、感情の限界と限界をぶつけあいながらも、互いを求め合う魂の戦場だ。
絵の表情が変わるたびに、好奇心が刺激されてゆく
次のブロックでは、「メモリアルコーナー」と題し、メンバーがいろんな組み合わせのもと、これまでにJAM Projectを彩り続けてきた楽曲を披露。JAM Project feat.きただにひろしとして歌った『Divine Love』を、この日は作詞作曲を担当した奥井雅美がソロ曲として熱唱。男らしいハードでワイルドなロックンロールナンバーを、野性味をしっかり活かしながらも、奥井雅美は雄々しく美しく歌いあげた。
JAM Projectの始まりを告げた『疾風になれ』を歌ったのが、遠藤正明ときただにひろし。疾走するハードなロックンロールナンバーながら、活動初期の楽曲が意外とポップテイストと光を集める開放的な要素の高い楽曲だったことが嬉しい驚きだ。コンビネーションもバッチリな2人だけに、舞台上でも自由奔放に弾けていた姿が印象的だった。
影山ヒロノブと福山芳樹の2人は、互いに手にしたアコースティックギターと2人の歌声のみというシンプルな編成で登場。『星空のレクイエム』を切々と披露してくれた。ブルーズな要素も巧みに折り込んだ2人の歌声と演奏は、会場へ居た人たちの気持ちを、荒れ果てた大地へ連れ出した。壮大な荒野が思い浮かぶスケールあふれた楽曲だ。でも、その歌や2本のアコギが織りなす演奏には、哀愁と優しさが満ちていた。とても浪漫を抱かせる楽曲だ。ブルーズな表情も交えた美しくも壮大な物語の中、切なさを胸に抱きながら、誰もが2人の歌声と演奏へ寄り添うように身を堕としていた。
アコースティックコーナーでは…
その存在を哀れむ鎮魂の儀式の様にも見えたのが、『アレクサンドリア』。とてもダークでスリリングな楽曲だ。僕らは何時しか赤い光を手に、儀式を彩る祭人となり祈りを捧げていた。これまでの闇の物語から、一変。輝く光をつかむように『Believe in my existence』が駆けだした。演奏が進むごと、スケールを増しアガってゆく歌声と演奏。曲調を映し変えるごとに、JAM Projectは様々な心の揺れを多彩な音の色を通し音楽のカンバスへ描き出してゆく。絵の表情が変わるたびに、好奇心が刺激されていく。
アコースティックコーナーでは遠藤正明がジャンベを、きただにひろしがアコースティックベースを、福山芳樹と影山ヒロノブがアコースティックギターを手に。奥井雅美はマラカスやタンバリンを用い、メンバーのみで、アコースティックアレンジ演奏でのパフォーマンスを披露。ただし、アコースティックコーナーだからしっとりにと思ったら大間違い。『Growing Up』では、楽曲自体が解放感たっぷりな表情を持っていることから、明るい表情たっぷりなパーティ空間へ満員の観客たちを招き入れた。暖かくて大きなパーティルームの中、暖炉を囲んで、みんなで楽しくはしゃぐように歌を届けるメンバーたち。彼らの「KAN-PAI」コールへ誘われ、元気に「KAN-PAI」と歌い叫んでしまうのも納得だ。間奏では、各メンバーのソロ演奏コーナーも登場。中でも、影山ヒロノブのスーパージェットフィンガー?なギターソロプレイは、観る人たちを惹きつける華やかさがあった。
そして、再びバンドメンバーがステージに戻り、『シュワッチ!~キミを護りたい~』を披露。場内を蒼の世界へ呑み込んだ『Everything』では、5人の哀切なハーモニーも活かした、切なくも浪漫漂う世界観を投影してくれた。影を背負いながらも、心へスーッと染み込むメンバーたちの力強いハーモニーが、とても愛おしかった。
親しみあふれた笑顔もまた、互いの関係を心の深いところで繋いでゆく
後半のライブの始まりを告げたのが、「スーパーロボット大戦X」の主題歌の為に書き下ろした新曲『鋼のWarriors』だ。荘厳でシンフォニック。何より「スパロボ」ナンバーらしい、轟音を叩きつけるスタイルが魅力の、触れた人たちの感情を瞬時に爆発させる表情だ。理性を瞬時に壊す破壊力満載な楽曲に相応しく、初見にも関わらず、誰もが渦巻く音の嵐の中へ飛び込み、騒いでいた。ヤバい、ふたたび心の中の炎がたぎってきた。
燃えたぎる感情をさらに赤く染め上げようと、JAM Projectは『豪腕パンチ』を打ちつけた。一発一発が、一音一音が、一人一人の咆哮が強烈な刺激となり身体を直撃。それをかわす??。そんなわけがない。僕らもまた、全力で絶叫のパンチを彼らへぶつけていた。
5人の重なり合った歌声からの幕開け。凄まじい音の壁を一気に崩すように、豪快でシンフォニックな音が舞台上から降り注いだ。『THE EXCEEDER』が巻き起こした衝撃へ圧倒されつつも、瞬時に僕らは熱狂のペダルを全力で漕いでいた。燃え盛る感情を舞台上へぶつけたい。メンバーが、観客たちが、互いに魂を燃えたぎらせ、業火の中、想いを交わし合っていた。
この熱狂は、天井知らずで上がっていく。一瞬たりとも休むことなく、興奮のエナジーをガンガン注ぎ込むメンバーたち。『The Brave』でも、燃え盛った感情の炎が拳という火花を上げ続けていた。
これまでの魂を燃焼させるステージングから、一変。続く『東京スキャンダル』では、メンバーと観客たちが、手にしたタオルを頭上高く振りまわし、ポップに、軽快に走る楽曲に合わせ、無邪気にはしゃぎ続けていた。燃え盛る感情の拳を交わし合うライブも嬉しいが、胸をときめかすポップチューンも、心はしゃがせる大切な表情だ。親しみあふれた笑顔が、互いの関係を心の深いところで繋いでゆく。
有るがままの自分で絶叫する声が、僕らを、僕自身をHEROに変身させる
さぁ、ここから一気にラストスパートだ。それは、閉ざされた闇の世界へ現れた業火!?。『Shining Storm~烈火の如く~』が、己の中に隠していた苦い感情をこの場で燃やし尽くせと、黒い炎渦巻く演奏を持って豪快に攻めたてた。闇に堕ちそうな気持ちを炎の中へくべるたびに、身体が熱く熱く燃え盛る。このまま烈火のごとく、みずからも炎になれ!!グロウルにも似た、きただにひろしのシャウトが合図だった。超強烈で強大なパワーソング『Crest of "Zs"』の登場だ。鋼のように強靱な音が身体中を叩きのめす。だからこそ僕らも、全身を震わせ、魂を鋼のパワーに変え5人にぶつけていた。絶叫と熱狂が交錯し生まれた壮絶な戦いの風景。こんなにも理性をぶっ壊し、己を野生に変えてゆく戦いなら、もっともっと味わいたい。
何時しか闇は輝く光に呑み込まれていた。最期にJAM Projectは、『THE HERO!!~怒れる拳に火をつけろ~』を届けてくれた。燃え盛る炎のような熱いライブの中、僕らは感じていた。自分たちが魂を剥き出した感情を本気でぶつけたとき、僕らもHEROになれるんだと。余計な感情のフィルターをすべて燃やし、有るがままの自分で絶叫する声が、僕らを、僕自身をHEROに変身させるんだということを…。
JAM Projectのライブは、余計な心の雑念をすべて燃やし尽くしてくれる
アンコールでは、場内に生まれた熱の余韻に包まれながら、『HERO』が作りだす心地好い歌と演奏へ身を任せ、互いに心と心で優しく抱きあっていた。「ラーラーララー」と響く、会場中を包み込んだ歌声。熱い拳を交わすだけがJAM Projectのライブではない。根底には、思いやりを持ったハートフルな意志やメッセージがある。彼らの愛情を持った歌声と真っ直ぐな想い込めたメッセージのバトンを、僕らは共に歌うことで受け取っていた。
最期は、JAM Projectの代名詞と言えよう「スパロボ」ナンバーのメドレー…。JAM Projectの最強鉄板狂騒曲たちの登場だ。
『Rocks』を通し爆裂した感情と絶叫の掛け合いを行えば、『VICTORY』でガンガン感情を燃えたぎらせていた。身体中が、嬉しすぎる興奮に呑み込まれ震えていた。嬉しすぎて、楽しすぎるあまりに感情が崩壊する、そんな気持ちにまでJAM Projectの歌が導いてゆく。だからこそ『GONG』を歌わずにいれなかった。会場中の一人一人がJAM Projectのメンバーとなり、魂のGONGを打ち鳴らしていた。嬉しくて、興奮を押さえられなくて、魂が震え続けている。だから僕らは、『SKILL』と一緒に限界を突破し、虚飾に塗れたサイバーシティさえ飛び越え、熱狂の桃源郷の中、彼らと一緒に「MOTTO!MOTTO!!」と叫んでいた。そこに居たのは、理想としていた自分の姿。いや、その姿は、無邪気な、夢見る少年や少女だった頃の自分と言ったほうが正しいか。
JAM Projectのライブは、余計な心の雑念をすべて燃やし尽くしてくれる。持つべきキラキラとした汚れ無き想いの輝きが、身体中の黒い感情を洗い流してゆく。でも、会場を一歩外に出たら、僕らはふたたび黒い闇に襲われる。その闇をどれだけ光で弾き返せるか。その力の光源をJAM Projectのライブは注いでくれる。だから彼らのライブに足を運ぶ。「MOTTO!MOTTO!!」とJAM Projectの歌を求めてゆく…。
さぁ、次はアジアツアーだ。今度は海外の人たちが、この熱狂の洗礼を浴びる番だ!!
TEXT:長澤智典