結成10周年を記念してのベストアルバム『THE BLUE』、そのリリースを受けての全国ツアーとなる“THE BLUE TOUR-青く塗れ!-”のセミファイナル公演が6月4日(土)に新木場スタジオコーストで行われた。
メンバーがそれぞれにステージに登場するごとに歓声が上がり、3人とサポートギター、キョウスケ(爆弾ジョニー)の全員がステージに登場し、照明が彼らを照らせばさらにその歓声は増した。
照明が点くまでは全身黒に見えていた衣装が、実は全員がブルーを身につけているのだった(ベースのHISAYOは髪にも青色を入れていたことが後半のMCで判明した)。アルバムタイトルも、ツアータイトルも、曲のタイトルにも、そしてステージ衣装もブルー。もはやバンドの別名、といえるほどの「BLUE」。
彼らにとってそれがいったい何を意味するのかを、彼らはライヴでもって示していく。
「Golden Time」「The Beautiful Monkeys」「Blood Red Shoes」というアグレッシヴな3曲を彼らは冒頭からたたみかける。
「10年間、ブルースとロックンロールしかやってこなかった」とヴォーカルの佐々木亮介は言う。
しかしそれは、ライヴバンドとして日本のロックシーンに確かな存在感を示すことにつながっているのだ。この日のフロアのいきなりの熱狂がその証明だ。
さらに続けて「青く塗れ」を鳴らして、佐々木が言う。「今日、ヤバいね。すげえヤバいことが起こりそうな気がすんね!」。HISAYOが佐々木を見て、満面の笑みでうなずいて返す。
観客からは大歓声が起こる。〈憂鬱のブルーを超えて 青く塗れ〉、「青く塗れ」の中でも心揺さぶられる歌詞の一節がそのままステージに再現されたかのような、底抜けの青さの、美しいシーンだった。
そしての一節に心揺さぶられるのは、彼らはいっぽうで「憂鬱のブルー」をもっとも強く感じさせてきたバンドでもあるからだ。初期メンバーの失踪をはじめとして、このバンドはいろんなことがありすぎて、どうにもメンバーが定まらなかった(今もなお定まっていないのだが)。「I’M FREE」で佐々木は歌う。
「失踪した友達 壊したか 壊されたか」――。しかしどんなことがあっても佐々木はこのバンドで転がり続けると決め、動きを止めなかった。「これが最後のライヴだと思うくらいのテンションでライヴをやっている」、とかつて佐々木は語っていた。悲壮感はバンドの魅力となった。でも悲壮感だけでは、そればかりを突き詰めていては、ファンもメンバーもついていけない。
「大事なのは愛だ」と佐々木は言った。「この国のブルースを溜め込んでる」と歌う「Black Eye Blues」を、佐々木はフロアに飛び込み、観客に支えられながら共に歌った。
その後に披露された「月に吠える」「月面のプール」は、聴き手の気持ちにそっと寄り添うバラード。中盤のMCでは「今までが仲良くなかったわけじゃないけど、今回のツアーでメンバーはもっと仲良くなったと思う」と佐々木は言った。
サポートギター、キョウスケが果たした大きな役割は演奏面だけではないようである。佐々木がプレー中のキョウスケの髪の毛を嬉しそうにクシャクシャとするシーンには、緊張感溢れるステージのなかにも心温まるものを感じさせていた。
「これが最後のライヴと思うくらい」の悲壮感と、思わず人を笑顔にさせる温かい愛情が、ステージ上で不思議なミックスを果たしている。苦難に満ちた10年であったけれども、その10年があったからこそ、AFOCのライヴはこんなにも素晴らしいものになった。
それでも佐々木は決然と言うのだ。「これはゴールでも集大成でもない。これからがスタートだ、と。」
佐々木の口から「これからのこと」がいくつも伝えられる。この日のライヴは、9月7日に映像作品『THE BLUE MOVIE -青く塗れ!- 2016.06.04 Live at 新木場STUDIO COAST』としてリリースされるということ。10月よりツアー「A FLOOD OF CIRCUS大巡業 2016」とイベント「A FLOOD OF CIRCUS 2016」の開催もアナウンスされた。
「大巡業」はツーマン、「A FLOOD OF CIRCUS 2016」では「カッコいいバンドをいっぱい呼ぶ」イベントになる、と。
アンコールで披露された、佐々木曰く「もっと遠くへ伝えたいという気持ちが強すぎて、イギリスまで行ってしまった」ロンドンレコーディングの新曲「BLUE」が素晴らしかった。憂鬱のブルーと底抜けに青いブルーが見事に混ざり込んでいる。
今までになくキャッチーだけれど、まぎれもなくAFOCのロックチューンだ。(「BLUE」のシングルCDも9月7日発売の映像作品の10thアニバーサリーパックに収録される。)これからの10年、彼らはもっともっと青くなる。そんなことを思わせる新曲であり、ライヴだった。
(文・柳憲一郎)
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