ドラマの世界に優しく溶け込むUruの「Never ends」
Uruのデジタルシングル『Never ends』は、現在放送中のドラマ『DOPE 麻薬取締捜査課』の主題歌で、2025年7月11日に配信リリースされました。DOPEと呼ばれるドラッグを巡る異能力者の犯罪と、それを取り締まる異能力集団という異色の設定に加え、優しく正義感の強い新人・才木と、有能ではあるものの問題行動の多い教育係・陣内という凸凹コンビも見所。
異能力バトルもさることながら、陣内の妻を殺害した犯人を巡り、警察の闇を描くスリリングさもあり、これまでの刑事ドラマとは一線を画す作品です。
主題歌を歌うUruの歌声は、一度聴いたら耳から離れないほど、優しく印象的。
繊細でありながら芯のある歌声が、ドラマの世界観にそっと寄り添い、優しく溶け合っているように思えます。
DOPEは口にすると異能力者になれるという特性を持ちながら、ほとんどの人間は中毒を起こして死んでしまうという、非常に危険な新薬。
しかし、上手く適応して異能力を得た者はドーパーと呼ばれ、サイコキネシスなどの異能力を使うことができるようになります。
そうした異能力犯罪者に立ち向かう麻薬取締捜査課(通称:特捜課)は、生まれながらの異能力集団。
このドラマの面白いところは、異能力者たちが「至って普通の人間であること」です。
異能力を持っていることを隠して生きる、生きにくさ。
力を制御できないことによる悩みや孤独。
家族の介護や、娘との向き合い方、結婚を控えた彼女の両親への挨拶、など。
特捜課に勤めていても、異能力犯罪者と向き合っていても、一人一人は普通の人間なのです。
犯罪者も、特捜課も、異能力者である前に人間である。
それ故に抱える葛藤や迷い、どうしようもない怒りや悲しみにそっと寄り添うのが、ドラマ中で流れるUruの歌声です。
Uruは2016年のメジャーデビュー以降、ドラマや映画、アニメなど幅広い作品で楽曲が起用され、存在感を増しています。
これまで、ドラマ『コウノドリ』では『奇蹟』、『中学聖日記』では『プロローグ』、『テセウスの船』では『あなたがいることで』、そして『マイファミリー』では『それを愛と呼ぶなら』と、数々の話題作を担当してきました。
いずれの楽曲も作品のテーマや登場人物の心情に深く寄り添い、その世界観を豊かに彩るだけでなく、見る人にそれぞれの心に深く響くような力を持っています。
そんなUruが歌う『Never ends』が、ドラマの世界観とどのように絡み合っていくのか。
タイトルにも注目しながら、歌詞の意味を、ドラマと照らし合わせながら考察していきます。
愛情と後悔に満ちた歌詞がドラマと重なる
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Never ends…
深夜0時過ぎ 滲む残像
君の言葉と笑顔が過ぎる
横たわる体に一枚 柔らかく触れたのは
君の愛だった
≪Never ends 歌詞より抜粋≫
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ドラマの主役は才木と陣内の二人ですが、特に印象的に描かれるのは、陣内の過去です。
集団の輪を乱すような言動と、やる気のなさそうな態度、乱れた風貌。
そんな現在の彼からは想像もできないほど、過去の陣内は優しく微笑んでいます。
才木が警察を目指したのも、子供の頃、陣内に命を救われたからでした。
そんな陣内は、過去の回想の中で、お腹に自分の子を宿した妻を優しく抱きしめ、子供の誕生を心待ちにする、どこにでもいる父親。
家に帰れば、そこには笑顔の妻が居る。そんな過去の残像が、今の陣内を苦しめるのかもしれません。
陣内の妻は強盗に襲われ、お腹の子供もろとも殺されてしまいました。
笑っている妻と、血まみれで床に横たわる妻。
ひとりの夜に思い出す、妻と過した穏やかな日々。
愛で溢れていた過去と、それを失った現在の対比が切ない歌詞です。
『Never ends』全体に優しさが漂っているからこそ、愛する者を奪われた悲しみが際立つのかもしれません。
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何をしてあげただろう
傷つけたことや守れずいる約束が
胸を裂く
≪Never ends 歌詞より抜粋≫
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何かを失った時、脳裏をよぎるのは後悔。陣内は、飲んで帰ったその日に、妻の遺体を見ています。
「あの時、もっと早く帰っていれば」という思いが、どこかにあるかもしれません。
それで過去を変えられなかったとしても、人は後悔してしまう生き物なのです。
幸せだった日々より、してあげられなかった後悔が胸を引き裂くのでしょう。
「温もり」が繋ぐ陣内の現在と過去
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立ち尽くしたこの背中押すのも
乱した心止めるのも
いつも君が僕を呼ぶその声だった
≪Never ends 歌詞より抜粋≫
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迷った時、立ち止まりたくなった時、そっと背中を押してくれる存在は心強いものです。
陣内にとっても、妻の存在は心の支えで、かけがえのないものだったのでしょう。
だからこそ今は、妻を失った悲しみや憎しみが、彼の原動力になっていることが切なくも思えます。
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抱きしめたい体も温もりも
やるせない夜に変わっていく
消えないようにそっと 君を想いながら
≪Never ends 歌詞より抜粋≫
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子供ができたことを知って、妻を抱きしめた夜。
妻のお腹をさすりながら、子供が生まれてくる日を心待ちにしていた日。
体温のない妻を抱きしめながら泣いた夜。
愛しい人はもうこの世におらず、あるはずだった幸せな未来は永遠に失われたまま。
大切な人を失うだけでも辛いのに、悲惨な死を目にしたならば、その心が復讐に向かうのは自然なことなのかもしれません。
かつて、陣内の心を幸せで満たしてくれた妻が、今は悲しみと憎しみで埋め尽くす残像になってしまっていることに、胸が締め付けられます。
「Never ends」が「DOPE 麻薬取締捜査課」のエンディングで流れる意味
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もしあの日に戻れたら、もしずっとそばにいられたら
君と僕の今は違ってただろうか
うねり出す記憶の波の中
零れ落ちてしまいそうな言葉
呑み込んではただ息を吐いた
≪Never ends 歌詞より抜粋≫
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取り返しのつかないものを失った時、「もしもあの時……」と考えてしまうのは人の常です。
それが叶わないことだと分かっていても、願わずにはいられないのでしょう。
あの日をやり直せたら、どのくらい時を戻せたら、幸せな未来にたどり着くことができるのか。
グルグルと頭を巡って離れないほど、過去というものは忘れがたく、失った妻と子供の存在は、今でも彼を苦しめているのだと思います。
あれほど復讐にこだわるのは、非業の死を遂げた妻への弔いの気持ちと、まっとうに生きていた人間を非道な方法で葬り去った犯人への憎しみと理解できます。
しかし、それ以上に、憎んでいなければ立っていられないほど、陣内の心が追い詰められているからではないでしょうか。
それが正しい道ではないと分かっていても、到底許せない。
さらに、妻の死には警察内部の人間が関わっている可能性も描かれています。
妻を殺した真犯人を探し、復讐を遂げる。
そうした強い憎しみだけが、崩れ落ちそうな陣内の心をギリギリで支えているのかもしれません。
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嘘をついた後の情けなさも
優しくできずいた夜も
包んでくれた世界でたった一人の人
抱きしめたい体も温もりも
やるせない夜に消えぬように
終わらない 迷わない 離さない 君がくれた光
My one and only you…
Never ends…
≪Never ends 歌詞より抜粋≫
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この曲のタイトルを見た時、初めに頭に浮かんだのは、陣内が抱える終わりなき悲しみと苦しみでした。
彼だけでなく、DOPEによって人生を破壊された人たちは、何かを恨みながら、過去を後悔しながら生き続ける、終わりなき苦しみを味わっていると思います。
それでも、Uruが紡ぐ『Never ends』の歌詞からは、悲しみ以上に深い愛情を感じるのです。
大切な人は、もうここにいないけれど、妻にもらった愛や幸福は、陣内の中で永遠に生き続けるのではないでしょうか。
彼だけでなく、かけがえのない人を失った人たちは、大きな喪失感を抱えて生きていかなくてはなりませんが、過去に存在した幸せが消えることはありません。
『Never ends』を聴いていて心が救われるのは、「どれほど大きな悲しみに打ちのめされても、愛した人がくれた深い愛情は消えることはない」と、言われているような気がするからではないでしょうか。
もう二度と抱きしめることができなくても、その温もりを感じることができなくても、愛した妻との幸せな日々は、誰にも奪うことはできないのです。
過去にすがるのではなく、過去が今を支えている。
強く手を引いてくれるような歌ではないけれど、『Never ends』には、疲れた心に寄り添い、そっと背中をさすってくれるような温もりを感じます。
DOPEを巡る悲劇や陰謀が渦巻く世界で、ドラマの最後にあるのは、終わりなき悲しみだけではなく、愛する人が残した終わりない愛もあるのではないか。
陣内の今後の人生に明るい光が射すように願わずにはいられません。
今後のドラマの展開に期待です。
生きている中で抱え込んでしまいがちな悲しみに優しく寄り添い、少しだけ前を向かせてくれる『Never ends』。
心の奥を静かに揺さぶる、涙なくしては聴けない一曲です。
ドラマ情報
■TBS系金曜ドラマ『DOPE 麻薬取締部特捜課』放送日時:毎週金曜よる10:00~10:54
出演者:髙橋海人、中村倫也、新木優子、三浦誠己、豊田裕大、久間田琳加、小池徹平、真飛聖、伊藤淳史、井浦新
原作・原案:木崎ちあき「DOPE 麻薬取締部特捜課」シリーズ(角川文庫/KADOKAWA刊)
リリース情報
■New Digital Single「Never ends」2025.7.11 Release
TBS系金曜ドラマ『DOPE 麻薬取締部特捜課』主題歌
▷配信はこちら
■New Digital Single「手紙」
2025.8.13 Release
▷配信予約はこちら
■両A面Single「Never ends / 手紙」
2025.8.27 Release
初回生産限定盤 \2,500(税込)特別BOX仕様
通常盤 \1,200(税込)
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[CD] 初回盤・通常盤共通
1 Never ends
2 手紙
3 青と夏(Mrs. GREEN APPLE cover)
4 Never ends -instrumental-
5 手紙 -instrumental-
[BD] 初回盤のみ収録
Uru Tour 2023「contrast」LINE CUBE SHIBUYA
1 あなたがいることで
2 紙一重
3 Missing(久保田利伸 cover)
MUSIC VIDEO
1 アンビバレント
2 春 ~Destiny~
3 フィラメント