若者のリアルな苦しみの隣で手を引く「ミセス」

Mrs. GREEN APPLEは日本のポップロックバンドです。
2013年に結成し、ギターボーカルの大森元貴を中心に三人組で活動中。
楽曲はポップスやロックに留まらず、バラードやクラシックなど多彩な要素を汲んでおり、どれもキャッチーでドラマチックなミセス特有の魅力を持っています。
特に、苦しみに真正面から対峙しながらも真っ直ぐ前を見据える歌詞は、若者を中心に共感を呼んでいます。
代表曲はTVアニメ・忘却バッテリー主題歌の「ライラック」や日本レコード大賞優秀作品賞に選出された「ダンスホール」など。
2026年8月時点で、YouTubeでの総再生回数70億回を見据えるなど、若者を中心としながらも最早老若男女を巻き込んだトップアーティストと呼べるでしょう。
「代わり映えしない毎日」が支える世界を愛すること
まず、タイトルの「庶幾」とはどういう意味でしょうか。
それは、「こいねがうこと」、そして「切に願い望むこと」。
祈る。
望む。
そうして切に願うものとは何なのでしょうか。
ここからは歌詞を一つひとつ紐解きながら、「庶幾」に込められた意味を考察していきます。
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あの日の後悔を
食べれてしまえばいいのにな
あの頃にはどうしても
言えなかった2文字もあったっけな
≪庶幾の唄 歌詞より抜粋≫
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「庶幾の唄」はそんな歌詞から始まります。
生きていると、唐突に過去の後悔がフラッシュバックすることがあります。
あの日、ああすれば良かった、こうすれば良かった。
もうどうにもならない、言えなかった2文字とは何だったのでしょうか。
それは些細な「いや」だったかもしれない。
それは重大な「すき」だったかもしれない。
しかし、物事の大小に関わらず過去の公開は現在の自分を蝕みます。
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そろそろお腹が空いてきたな
毎日のサイクルはもう飽きた
実は彩られているんだと
気づくのは あと何世紀先だ
≪庶幾の唄 歌詞より抜粋≫
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腹が減ったら食事を摂って、夜は眠って、学校や職場へ行って、その繰り返しの人生。
過去に囚われている時こそ、そんな代わり映えしない生活に飽き飽きしてしまうのかもしれません。
ただ、実は既に自分の人生は鮮やかに彩られていたとしたら?
自分が気付いていないだけで、毎日繰り返すばかりだと思っていた生活は明るく美しく輝く可能性を秘めているかもしれない。
しかし、落ち込んでいる時ほど視野は狭くなるもの。
自分の人生を取り巻く祝祭に気付くのは一体いつのことになるのでしょうか。
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ワタクシのお仕事は
・素材になること
全てになんかなれずに
・一部になること
≪庶幾の唄 歌詞より抜粋≫
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謙虚でマイナスな歌詞にも聞こえますが、これは確かに、自分が世界に存在しているという肯定的な確認です。
人は一人では生きていけない。
そんな使い古された言葉がありますが、まさしく私たちは一人一人が自分の役割を担いながら、社会を形成しているのです。
ここで大事なのは、その一部になるということ。
あぶれることなく、怠けることもなく、影ながら世界を支える小さな柱になることです。
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どうかずっとこの世界を大好きでいてね
朝も来たし夜も来たし変わりないよ
今日もいつもの様に
≪庶幾の唄 歌詞より抜粋≫
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この歌詞の人物は、代わり映えしない毎日の価値に気付くことができたようです。
いつも通りが世界を支えていること。
世界を愛していて、そんな世界の端っこを支えている自分自身も愛おしいのだと。
どうかこのまま、世界と自分を愛し抜きたいという願いがここにあります。
小さな幸福を拾い集め、愛しくも憎々しい世界を生きる

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あの日の恥じらいが
可愛く思えてきたんだよ
あの日の温もりを
ずっと感じていたいのにな
≪庶幾の唄 歌詞より抜粋≫
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そんな歌詞から2番は始まります。
囚われていた過去の恥を、可愛げとして認識し直すこと。
過去の後悔は、当時と同じだけの苦しみをもって襲い掛かってくることがあります。
しかし、このように年齢や価値観の変化によって、やわらかく受け止め直すことができるようになるものもあります。
ただ感じ方が変わるということは、あの日感じた温もりも思い出として遠いものへ変わっていってしまうということ。
それはどうしたって、寂しさも伴うものです。
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汚いけど愛すべきな生き物なら
世間に甘やかされ今、恥をかくとこ
≪庶幾の唄 歌詞より抜粋≫
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汚いけど愛すべき生き物。
これは愛せない自分や世界を、それでも愛したい願いの言葉です。
そうあるべきだと思って、まずは愛してみる。
自分の人生を彩ることは、そこから始まるのかもしれません。
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「まるで普段目には見えぬ妖精みたいね」って
気づいてくれたから 未来のために
会いに来たんだよ
≪庶幾の唄 歌詞より抜粋≫
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「まるで普段目には見えぬ妖精みたいね」という言葉。
解釈の分かれる歌詞ですが、ここでは「世界を支える自分の小さな小さな仕事」を他者から評価して貰ったのではないか、と考察します。
自分のちっぽけな人生も、きっとこの世界を支えている。
しかし、そんな考えはあまりにスケールが大きくて、時に実感や進むべき道を見失ってしまう日もあったかもしれない。
そんな時に、「普段は見えていなかったけれど、貴方はずっとここで仕事をし続けてくれた」と他者から言って貰えたら、どう感じるでしょうか。
気付いてくれた人がいる。
たったそれだけで、未来へ進むことができた。
ちっぽけな一言だけが、人生を前に進ませるということは往々にして起こり得るのです。
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good morning, good night
I love you で good-bye
傷は絶え間ない
お気に入りの服で
今日くらいは幸せになろう
ほら 愛に満ちたこの日々
では また会いましょう
≪庶幾の唄 歌詞より抜粋≫
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「庶幾の唄」は、そのように締めくくられます。
傷は絶え間なく生まれる。
しかし、お気に入りの服に袖を通すことで何とか今日をやり過ごすことができるかもしれない。
そうして継ぎ足し、継ぎ足し、何度も自分が世界を愛し、愛されていることを確認し、祈る。
別れではなく「また会いましょう」という歌詞で終わることもこの希望に拍車をかけます。
生き辛い世界でもそれを愛することはできるし、生きていくことができるのです。
何でもない毎日に価値を見出す「庶幾の唄」
「庶幾の唄」は、代わり映えしない毎日に疲れた人々にほんの少し前を向かせる応援歌です。自分の人生には確かに価値があること。
今日を生きるだけの楽しみを探すこと。
本楽曲はあくまで等身大のやり方で「世界の愛し方」を教えてくれます。
確定的なことは言えない。
なぜなら、傷は絶えないから。
しかし、とりあえずまた会おう、という約束ができること。
そうして日常を生き延びたい、ということもまた「庶幾」、切に願うことなのでしょう。
【Mrs. GREEN APPLE PROFILE】 大森元貴 (Vo/Gt) 若井滉斗 (Gt) 藤澤涼架 (Key) 2013年結成。2015年EMI Recordsからミニアルバム「Variety」でメジャーデビュー。 以来、毎年1枚のオリジナルアルバムリリースと着実なライブ活動を続け、2019年12月から行われた初の全国アリーナツアー「エデ···