「星」とNEWS
星というと、あなたは何を思い浮かべるだろうか。
歌や物語の中で星というのは様々なものの象徴として扱われ、それに何をたとえてみるかは人それぞれだ。紆余曲折を辿ってきたNEWSの歴史もまた、その楽曲の中で幾度も星に喩えられてきた。
星というフレーズが歌詞に登場するのは極めてありきたりな例だと思うかもしれないが、そのいかにもアイドルらしい象徴を使って、どんなふうにNEWSの物語が星によって紡がれてきたのか。静かに彼らが勢いづき始めている今、紹介しておきたい。
復活の歌としての『星をめざして』
NEWSというグループは結成当時には9人であった。色々あって3人が脱退し一時の活動自粛を経て2007年、彼らは6人で再出発を果たす。
その時リリースされたのが『星をめざして』であった。「一度死んで また生き返る そんな魔法を かけられていた」というフレーズから始まるこの曲は、その詞のとおり復活・再出発に際してはぴったりの曲となった。
著名な作詞家であるなかにし礼がこれを書いているという事実が、事務所としても6人での復活を最高の形で送り出そうとしてくれていたのだと分かる。
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星をめざして 君に導かれ
歌いながら ぼくは歩きだす
くり返さないさ もう二度とは
同じ過ちを
愛の力の 大きさ貴さを
思い知ったよ
≪星をめざして 歌詞より抜粋≫
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この曲で書かれている星は意味として曖昧でありながらも、象徴としての役割はしっかり果たしている。“星”が示すものは夢でも目標でも、あるいはステージから見えるペンライトの光でもいい。“星”とは、6人を導くための光であり、指針ということ。
そしてそれが示す先にファンを含む周囲の人達の愛があり、それを想えば過ちなどもう繰り返さないはずだろう。そういう願いを込めて、この詞が書かれていたはずだ。
困難を乗り越えた絆を示すための『Share』
2008年に6人で作詞曲をした『Share』という曲があった。加藤シゲアキはその中でも、メロとサビの作詞、そして作曲にも多く携わっている。次は加藤の書いた部分だ。
----------------(中略)
すれ違いゆく風の中で 僕らはなぜ出会えたんだろう
同じ星が今見えるなら 僕らはただそれだけでいい
≪Share (Live at TOKYO DOME) 歌詞より抜粋≫
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さらに続く見えぬほど だから言う 十年後も
今までもこれからもいつまでも 隣にいてくれてありがとう
≪Share (Live at TOKYO DOME) 歌詞より抜粋≫
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結成とデビューがほとんど同時期であるNEWSはグループとしての下積みがなく、それぞれがバラバラなところから始まった。
だからこそ、加藤は共に苦難を乗り越えた仲間と“過ちは繰り返さない”というつもりで、復活のときに見た“星”への願いをサビに込めた。自分が導かれた星を、他の5人も同じように見て、その世界を共有し、同じ道を歩いていく。
それが十年後も続いているものであってほしいと願いながら、彼は“ただそれだけでいい”とささやかな幸せを噛み締めたのだ。
しかし皮肉にも、ファンを哀しませるという意味で過ちは繰り返されてしまった。『星をめざして』で復活してから約4年後、グループの中心人物であった2人が脱退。
元よりそのうちの一人を中心として作られたと言われるグループであっただけに、解散の話も出ていたという。
『Share』から『愛言葉』へのアップデート
このころ、加藤は小説家としての処女作である「ピンクとグレー」を執筆している。情報解禁や発売時期は既に4人体制となった後であったが、実は書いていたのは2人が脱退を内部で示唆する前であった。
加藤は当時、自ら、そしてグループとしても何らかの危機を感じ、小説を書くに至っている。自分がNEWSとして何ができるかを考えた末の結果だった。
加藤には、2人との間に何かのズレが生じているという感覚や、今のままではいけないという予感があったのだろう。そして彼はまた、密かに“星”に願いを込めていた。
2016年初頭に実写映画化も果たした「ピンクとグレー」だが、映画では使用されなかった原作のシーンに「やっと同じ星、一緒に見れたな」という台詞がある。
物語の序盤では、同じ場所にいながらもそれができなかった主人公と親友が、のちにその台詞を口にするまでに至る。加藤にとって小説を書くことが、『Share』の詞のようなNEWSでいるための最大限の努力だったのだ。
結局、その台詞を書いた当時の加藤の願いは最良の形では叶うことはなかったが、彼がNEWSのためにした努力は現在もなお、グループのステップアップに一役も二役も買っている。
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10年前の僕よりもっと 君を笑顔にさせてみせるから
『同じ星が今見えるなら ただそれだけで…』
交わす 誓い 繋ぐ 想い 変わらずにずっと
≪愛言葉 歌詞より抜粋≫
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『Share』に加藤が意図的に使用したであろう“同じ星を見ている”という表現は、4人で再度の復活を果たしたあとも様々に影響している。
デビュー10周年記念として4人で作詞曲をした『愛言葉』の中にも“同じ星が今見えるなら ただそれだけで…”というほぼそのままのフレーズを加藤自身が書いている。
そこから続く詞は、“交わす誓い 繋ぐ想い 変わらずにずっと”。彼の真摯な想いは、『Share』の頃から変わっていない。それをただ新しい形でファンに伝えようとしたのだろう。
星は、彼らの心の中に。『HIGHER GROUND』
4人での復活から約一年後にリリースされたアルバム『NEWS』に収録された『HIGHER GROUND』は、4人の復活シングルとなった『チャンカパーナ』や同シングルのカップリング曲『フルスイング』を書いたヒロイズムによる曲である。
彼は6人だったNEWSやテゴマス名義でも人気の高い楽曲を提供しており、ファンからの信頼も厚い。この曲もまた、彼らの歴史を紡いできた“星”が象徴的に使用されている。
----------------(中略)
空高く蹴り上げた むなしさが宙を舞う
つまずいては見上げていた 一番星に問う
このままでいいのか 高みを目指してくのか
変わらない日常に 弱気な僕がいる
≪HIGHER GROUND 歌詞より抜粋≫
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届けたい想いだけ未来へと放て
夜空に願いをかけてたあの少年は心にいる
叶わないものばかり数えてしまうけど
この夢は二度と終わらない
どんな闇の先にもゴールは待つ
≪HIGHER GROUND 歌詞より抜粋≫
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「つまずいては見上げていた一番星」に、なかにし礼が託し、加藤が導かれた“星”がある。
闇の先に光を見るという希望に満ちたこの曲は、ヒロイズムがNEWSへ贈った新しい『星をめざして』でもあるのだ。夜空の“星”に願いをかけていた頃の想いは変わらないまま、あの頃の夢を終わらせないために。それは加藤が『愛言葉』に再度綴った想いと共通している。
「見上げる星に願いを込めた」のは、NEWS結成・デビュー曲である『NEWSニッポン』からのことだったのだから。
この曲は“同じ星”が4人の心の中にあると信じてくれたからこそ、あえて願いはかけず未来へと走ってゆくさまを描き、最後のサビでは「いつか掴み取れよ Higher Ground」と送り出してくれているのだろう。
『星をめざして』、『Share』、『愛言葉』、『HIGHER GROUND』と、星を通して語られていく彼らの夢。生まれ変わったNEWSがこれから更なる高みへと上っていくさまを、彼らがめざした星になれる日まで、じっくりと見届けていきたい。
TEXT 祈焔( Twitter )
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