ある種の「カッコ悪さ」を武器に。
『イッツ マイ ソウル』は関ジャニ∞の7枚目のシングル曲。レコードレーベルが演歌部門からポップス部門に移行してからは2作目であり、この時期から一旦大阪色を脱している。大阪推しから抜け出して彼らが向かい出したのは、6thシングル『ズッコケ男道』にも見られるように「三枚目路線」だった。ジャニーズというアイドルの中にありながら、ある種の「カッコ悪さ」を敢えて武器にし、同時期にデビューしたKAT-TUNなどとは真逆の棲み分けをして打ち出したのである。
イッツマイソウル 歌詞
可愛いから惚れる訳じゃない
――――そーでもない第一印象 メシ会でも気が利くわけじゃーない
OH ベイビー
なのに君 魚の食べ方がキレイ
(中略)
内輪では最下位だった君 まっ今もそれほど可愛いってわけじゃーない
OH ベイビー
さらに君 優しさって言う 感情も薄くない?
そのくせに出来るのは
スーパーの袋しまっとくよーなとこ
そーゆーとこツボなのさ
終日 ああ君に夢中
OH ベイビー
――――
世間では女子力というあやふやな概念が声高に叫ばれる昨今、自分に自信を失くしてしまう女性も多いだろう。この曲の中でも“気が利くわけじゃない”とか“それほど可愛いってわけじゃない”とか男性側から言われたい放題である。
しかしこの曲の主人公である彼は、そんな彼女のふとした部分、おそらく本人も気に留めていないであろう“魚の食べ方がキレイ”や“スーパーの袋しまっとくよーなとこ”が良いという。むしろそういった細かな部分が次々と彼のツボに刺さっていき、たいして優しくしてももらえないのにそれでも彼女にハマッて、惚れていってしまう男性の曲なのだ。
熱を帯びてゆく恋模様
――――君のために生きたいな
惚れたもんだから仕方ない
ありえないワガママも
ララララララ まっそりゃしょうがない
(中略)
君のために生きようか
惚れたもんだから仕方ない
例え俺が二番手でも
ララララララ まっそりゃしょうがない
――――
ありえないワガママも、二番手という立ち位置も甘んじて受け入れられるほど彼女のことが好きだという。“君のために生きようか”というほど想えるのは、まさに恋の熱というほかない。
この物語の彼女は、どこから見てもいい女、というほどではなかったはずだ。“内輪では最下位”だったのだから。
しかし彼は“二番手でも”と言っている。そんな彼女でも、他に付き合っている人、あるいは好きな人がいるのだろう。しかしこの彼はひたすらに、彼女のことを想い続けている。2時間待ちぼうけをくらってもそれくらいと許すし、ドタキャンされてもしょげずに追いかけ続ける。
これだけを見るともはやストーカーの域だ。片思いの曲と思えば、その可能性もなくはない……が、実はそれに違和感を持たせる部分がある。
それが2番サビの“深夜2時のお迎えコール グッとたえて良しとしよう”だ。
いくらなんでも、何とも思っていない、ましてや粘着されているとでも思っていたならば、女性が男性にわざわざ深夜2時に迎えに来いなんて言ったりしない。少なくとも、彼女は彼に対して少なからずの好意を持っていると見てもよさそうではないか。
このあと、“おお 無神経な言葉を ああ 機関銃のように”というフレーズがある。もっと前には“優しさっていう感情が薄い”とも言っていたが、このように彼女は彼にわざと冷たくあたっている。その場合、本当に嫌いか、素直になれないか、のどちらかだ。そしてここでは後者の解釈を取りたい。
どんなにひどいことやワガママを言っても、彼は好きだと言い続けるから、彼女はその状況に甘えているのかもしれない。いわゆる彼女は「ツンデレ」というわけだ。
関ジャニ∞が愛おしくなる瞬間
――――君を思い出さない
そんな夜はいらない
なんだかんだで やっぱ好き
終日君で
OH イッツ マイ ソウル
――――
けしてストーカーなどではなく、ただ一途な男の恋愛物語だというのが、この渋谷すばるが歌うパートから伝わってくる。彼の歌声が持つ、言葉を真っ直ぐに届けるパワーがそれを増幅させている。
もし彼女の恋愛がうまくいかなかったら、彼に振り向いてくれるのだろうか。そこまでは曲の中では描かれていないが、私はこんな彼をつい応援したくなってしまう。そんな魅力が『イッツ マイ ソウル』にはあり、同時に「三枚目」な関ジャニ∞を愛しく思わせてくれる。
大事なのは、曲中の彼は彼女の外見ではなく、仕草や癖に滲み出る内面に惹かれているということ。世間や周囲のいう概念ばかりにとらわれず、自分の中にあるときめきを信じて彼女を好きになっているところなのだ。
言葉が曖昧すぎて「女子力って何?」と自分磨きに迷っている女性の皆さんには、ぜひこの曲を聴いて「自分らしくいることで、それを好きになってくれる人もいる」ということを知ってほしい。あなた自身がまだ気付いていない魅力を肯定してくれる人が、きっとどこかにいるのだから。
TEXT:祈焔( https://twitter.com/kien_inori )
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