また、2008年には中居正広を主演に迎え新たに映画化。それに合わせて脚本も橋本忍本人によって改訂が行われた。この時に主題歌となったのが、Mr.Children『花の匂い』である。元々、楽曲として存在していた今作は、歌詞を考える段階で映画の話が来たという。
描かれているのは、温もりと優しさ
"届けたい 届けたい
届くはずのない声だとしても
あなたに届けたい
「ありがとう」「さよなら」
言葉では言い尽くせないけど
この胸にあふれてる
花の匂いに導かれて
淡い木漏れ日に手を伸ばしたら
その温もりに
あなたが手を繋いでいてくれてるような気がした"
“永遠のさよなら”をしても 温かい呼吸が私には聞こえてる”
≪花の匂い/ 歌詞 より抜粋≫
バンドの作詞・作曲を担う桜井和寿はこの楽曲を手掛ける時、父親を亡くした後だった。それもあってか歌詞には心の中で生き続ける命、その尊さについて描かれている。また、それ以上に表れているのが人の持つ温かさや、優しさである。
映画では「生まれ変わったら、私は貝になりたい」と主人公が遺言で残すように、人間にはなりたくないという気持ちが見て取れる。そのような気持ちに至る経緯を思うと、反論できる人は少ないと思う。しかし、この楽曲は主題歌でありながら主人公の主張とは正反対の気持ちを込めている。
忘れてはいけない事
“信じたい 信じたい 人の心にあるあたたかなかな奇跡を信じたい”
柔らかなメロディに乗せられた、人が持つ可能性。主人公が諦めてしまったものだからこそ、この部分はとても胸に突き刺さる。
Mr.Children、初のアニメーションPVともなるこの楽曲。映画タイアップに合わせてか、内容は戦争に巻き込まれた家族と映画に近いものとなっている。
繰り返し同じ場面が登場したり、映像だけで物語が進行するので曖昧な部分も多いが、そうする事で受け手によって様々な解釈を再現。人の代わりにウサギを登場させる事で、深刻なテーマと可愛さがブレンドされた絶妙な作品となっている。
戦後70年を迎え、法律から考えの在り方と色んな意味で岐路に立たされる年となった。年月を重ねるごとに遠くなっていく記憶。
しかし、そんな時こそ忘れてはいけないのかもしれない。人が持つ、温かい気持ちを。
花の匂い 歌詞 全文
TEXT:空屋まひろ
1992年ミニアルバム「EVERYTHING」でデビュー。 1994年シングル「innocent world」で第36回日本レコード大賞、2004年シングル「Sign」で第46回日本レコード大賞を受賞。 「Tomorrow never knows」「名もなき詩」「終わりなき旅」「しるし」「足音 〜Be Strong」など数々の大ヒット・シングル···