秋田県出身のシンガー 高橋優
高橋優は、秋田県横手市出身のシンガーソングライターである。2008年にスカウトがきっかけで上京し、2010年にはワーナーミュージック・ジャパンでメジャーデビューを果たしている。【高橋 優インタビュー】アニメの主人公と自分を重ねた新譜
3枚目シングル『福笑い』
今回取り上げる『福笑い』という曲は彼の三枚目のシングル。「福笑い/現実という名の怪物と戦う者たち」というタイトルで両A面シングルとなっている。プロデュースしているのは、クリエーターの箭内道彦。東京メトロ「TOKYO HEART」CMソングとして知った人も多いだろう。グサッとくる 歌詞
“あなたが笑ってたら僕も笑いたくなる
あなたが泣いていたら僕も泣いてしまう
難しい顔難しい話今ちょっと置いといて笑えますか?”
福笑い │高橋優 歌詞より
話す相手の表情につられて自分も共感して同じ行動をとってしまうという内容。
冒頭のこの歌詞は単純なようですごくグサッとくるものがある。この歌詞では言語コミュニケーションは行われていない。伝えあっているのは表情だ。
言語を介さない表情だけで二人の間にはコミュニケーションが成立している。高橋優の歌はシンプルなフレーズをメロディに乗せてはいるが、ふと考えると深い内容になっている。
笑顔がもつ力
“きっとこの世界の共通言語は 英語じゃなくて笑顔だと思う”
福笑い │高橋優 歌詞より
この曲は、タイトルの『福笑い』が示すように笑顔が一つのキーワードになっている。
高橋優は「笑顔は世界共通の言語だ」と言っている。現実はどうだろうか。笑顔のような非言語によるコミュニケーションはそれほど重視されていない。しかし、高橋優はまさにその根底にある力に気付いているのだ。まさにこのことを歌詞にしている。
サビのこのフレーズは聴いたことがある人も多いだろう。「きっとこの世界の共通言語は 英語じゃなくて笑顔だと思う」という歌詞は、2011年2月17日付の米国ニューヨーク・タイムズ紙に「I think the universal language of the world is not English but a smile」と英訳された意見広告が掲載された。意見広告が掲載されたのは日本人ではオノ・ヨーコ以来2人目だという。
これは、初めてこのフレーズを耳にしたとき確かにと妙に納得してしまった。英語は世界共通語だと言われるけれども、すべての人に共通しているわけではない。しかし、笑顔ならだれもが理解でき、意味する内容も世界共通だ。ストレート過ぎではないか?と思うかもしれないが、これが高橋優のライティングセンスなのだ。
言葉を超えるモノ
“誰かの笑顔につられるように
こっちまで笑顔がうつる魔法のように
理屈ではないところで僕ら
通じ合える力を持ってるハズ”
福笑い │高橋優 歌詞より
ここで冒頭の歌詞の「あなたが笑ってたら僕も笑いたくなる」というフレーズが分かりやすく書かれている。高橋優にとって笑顔は魔法のように例えるくらい想像しがたい力を持ったものなのだ。
「通じ合える力を持っているハズ」とカタカナになっていることから、高橋優は自分のなかでは笑顔のもつパワーが言語を超えるものであるとほぼ確信していることが分かる。また、ハズというカタカナの推量表現が笑顔の持つ魔法のような力を連想させることに成功している。
世界中の共通言語は…
“あなたは今笑っていますか?
つよがりじゃなく心の底から
憎しみが入る隙もないくらい
笑い声が響く世界ならいいのに”
福笑い │高橋優 歌詞より
この世界は、単純なことでも難しく考えてしまってかえって分からなくなることも多い。もっと気楽に笑い合おうよという高橋優自身のメッセ―ジと解釈できる。
笑顔という非言語のコミュニケーションは、軽視されがちではあるが歌詞にあるように共通言語として機能している。高橋優がこの曲を通して提示しているのは笑顔がもつ力の大きさだ。物事を難しく考えず、時には笑顔になってみるのはどうだろうか?
福笑い 歌詞
TEXT:川崎龍也