【動画コメント】テクニックよりも、あくまで歌で描く世界観に重点を置いたZYUN.の最新アルバム

ZYUN. ミニアルバム『MonSter』 レビュー

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　「4オクターブの声域と、mixボイス」という特徴的なボイスで注目を集めているZYUN.だが、この作品はそのような性質を駆使するテクニカルな面より、むしろアルバムに描いたテーマやコンセプトの印象が強く感じられる。

　ZYUN.の歌い方は、どちらかというとフラット。エモーショナルというよりは美しくメロディを響かせているイメージがあり、時にその歌声は”シンガー”というよりは”楽器”に近い存在感すら醸している。特に1曲目の「あの日のサドスティム」の最初のAメロは、不規則な譜割りになっているにもかかわらずスッと自然な感じでバッキングに合わせており、まるで機械のごとく迷いなく正確なタイミングセンスも感じられる。

　また、その幅の広い声域は、ふくよかなメロディを聴かせるために余裕を持たせるが故の条件として使用しているようにも見える。ZYUN.の声にはビブラートなどのテクニカルな表現は顕著には見られない。しかしそれでも、歌に美しさとボーカリストとしての存在感を十分に発揮しているところに、強みを持っている。

　今回のアルバム『MonSter』はハードなサウンドの「羅列」、グルービーな「”ganbare”」、アコースティックなバラードの「君が居ればそれだけで」など、曲によってサウンド面で様々なカラーを持たせているが、詞で書かれているものには歌い手側のZYUN.と、聴き手側という二者の間での会話的な内容で全体的に統一されており、7曲のミニアルバムながら統一的なコンセプトが描かれている。その言葉一つ一つが、ZYUN.の丁寧で美しい歌で綴られることにより鮮明に印象付けられる。



　特に曲を聴きながら歌詞カードなどで一つ一つの詞をしっかりと味わい、それぞれの曲に込められたストーリーを辿ると、よりこのアルバムの曲、そしてアルバムのテーマを深く感じられることだろう。自身の切ない気持ちを打ち明けるような「あの日のサドスティム」、相手を励ますような「”gambare”」、相手の胸の内を見つめるような「NON≒FiCTiON」、そして相手に対して自身の思いを告白する「君が居ればそれだけで」と、二人の間に存在する様々な思いが、曲と曲の間で交錯する。

　その中でも印象的なのは「MonSter」。「MonSter」という言葉に対して、おそらく多くの人は何かおぞましいものを想像するに違いないだろう。しかしここで書かれている「MonSter」は、自身の胸の内にある抑えきれないような思い、衝動的な感情を示している。ユニークでもあるが、深く納得できる表現でもある。

　まるで誰かに打ち明けるように、語り掛けるように言葉を重ねていく歌詞。アルバムの曲中にある詞のイメージには、時に「孤独」を胸に抱く人々には、強い共感を呼ぶ要素がたくさん含まれている。ZYUN.が描いたその世界観にじっと耳を凝らせば、より自身の思いに共感するイメージが、心に深く浸透するに違いない。

さらに今後ZYUN.はどのようなテーマ、イメージを歌で見せてくれるのか、楽しみでもある。

TEXT:桂伸也

ZYUN. 動画コメント

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■ZYUN. OFFICIAL WEBSITE
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