1. 歌詞検索UtaTen
  2. コラム&特集
  3. J-POP
  4. サカナクション

サカナクションが『渚のアップビート』というタイトルをやめ『多分、風。』にした、多分、こんな理由。

サカナクションが、2016年10月に『多分、風』をリリースしました。


サカナクションが、2016年10月に『多分、風』をリリースしました。アネッサのCMに使われているシングルです。MVでもタイトルにそって、風が強調されていますね。

この曲の元のタイトルは、もともと『渚のアップビート』でした。当初はアレンジや歌詞を80年代を意識したものにし、タイトルも80年代の曲のようにしていたんですね。これを試行錯誤しながらアレンジやメロディに変化を加えて『多分、風。』に変更した経緯があります。



“ほらショートヘアをなびかせたあの子
やけに気になりだした なぜか
今アップビートの弾けた風で
口に入った砂”


「ほらショートヘアをなびかせたあの子」の歌詞で曲はスタート。「知らないあの子」とすれ違う瞬間を歌詞にしている曲です。続いてすぐに「アップビートのはじけた風で」という歌詞が登場。元のタイトル『渚のアップビート』と正式決定のタイトル『多分、風』が混ざっているのが面白いですね。『口に入った砂』で、砂がある場所であることを説明。

“誰もが忘れる畦道を
静かに舐めてく風走り
知らないあの子と自転車で
すれ違ったその瞬間”


「誰もが忘れる畦道」というフレーズが登場。このフレーズから、「あの子」が通るのが人通りの少ない畦道であることが分かります。「すれ違ったその瞬間」で盛り上げていき、サビのメロディにつなげる構成。サビに突入するまでの盛り上がりを徐々に作っているんですね。ショートへアをなびかせたあの子の詳細が徐々に判明していき、歌詞の主人公の気持ちの盛り上がりと、曲の盛り上がりがリンクするように構成されているのです。

“風 走らせたあの子にやや熱い視線
焦らせたその仕草に
風 走らせたあの子にやや熱い視線
焦らせたこの季節に
連れて行かれたら”


「風走らせたあの子にやや熱い視線 焦らせたこの季節に 連れて行かれたら」あの子を走らせたのも風であり、歌詞の主人公が熱い視線をおくってしまったのも風のせいである。サビでは、そんな感情を疾走感あふれるリズムにのせて歌います。サビの歌詞は「連れて行かれたら」で終了。このフレーズで、主人公がいやおうなしに気持ちを連れて行かれていることが分かりますね。

この曲のタイトルは、なぜ『渚のアップビート』でなく『多分、風。』なのでしょうか。アップビートのような昂揚感をもたらしたのは、渚にふいた風のおかげ。だから『渚のアップビート』でも間違いではないのです。

でも一瞬の出来事だから、自分でもはっきりとこの状況や自分の感情が分からない。この微妙な感情の流れに、より重きを置いてタイトルを付けているんですね。歌詞の主人公は、自身が感じた気持ちを『多分、風。』のせいだ、と結論付けます。不確定な気持ちを指す「多分」を使い、さらに「、」を入れて「一瞬考えている」ことを表現。この「、」があることで、歌詞の主人公が一瞬、今感じた気持ちは何だったのだろう?と自問自答する姿が分かるのです。そして『多分、風。』と「。」をつける。この「。」がついていることで、歌詞の主人公が「自分の中で結論付けた」ことが分かります。結論付けて自分の気持ちを落ち着かせよう、という感情の動きがこの「。」に集約されているのです。

山口一郎は、この曲に関して画期的にキャッチーで、画期的にポップな曲を作ったと発言しています。ポップでありながら、物語性があり、細かい感情の流れを表現しているこのタイアップ曲。これができるのが、サカナクションなんですね。



TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)

2005年に活動を開始し、2007年にメジャーデビュー。 日本の文学性を巧みに内包させる歌詞やフォーキーなメロディ、ロックバンドフォーマットからクラブミュージックアプローチまでこなす変容性。 様々な表現方法を持つ5人組のバンド。全国ツアーは常にチケットソールドアウト、出演するほとん···

この特集へのレビュー

この特集へのレビューを書いてみませんか?

この特集へのレビューを投稿

  • ※レビューは全角500文字以内で入力してください。
  • ※誹謗中傷はご遠慮ください。
  • ※ひとつの特集に1回のみ投稿できます。
  • ※投稿の編集・削除はできません。
UtaTenはreCAPTCHAで保護されています
プライバシー - 利用契約