『オドループ』で大人気!フレデリック
フレデリックは、双子の三原兄弟を中心とした3人編成のバンド。同じフレーズを軽快に繰り返す『オドループ』が有名です。このバンドの特徴である繰り返されるリズム。この繰り返すリズム、リピートそのものを歌詞にしているのが『リリリピート』。
巧みなリズムづくり
----------------「繰り返してたびたび辛い思いする夜は」という歌詞で曲はスタート。冒頭で繰り返し辛い思いをすることを歌っています。
繰り返してたびたび辛い思いする夜は
セツナバックビートかったるいと嘆いた夜は
繰り返してまた聴き直してまた繰り返せる世界で
僕はせっせとせっせとせっせとせっせとせっせとMUSIC
≪リリリピート 歌詞より抜粋≫
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「くり」「かえし」「たび」「たび」「つらい」「おもい」と、この最初のフレーズだけで「い」の音を6回も使っています。まだリピートが始まっていない箇所なのにも関わらず、巧みにリズムを作っているんですね。
「リピート」の「い」の音の伏線を早くも作っているのです。
続いて「セツナバックビートかったるいと嘆いた夜は」。「セツナ」「バック」「かったるい」で「つ」及び小さい「っ」の音を重ねています。
これは、この直後にくる「せっせと」の伏線であり、リピートを単調にさせない工夫。またサビの「ステップ」への伏線にもなっています。
「繰り返してまた聴き直して」ここは、「また繰り返して」としてもいいところですが、あえて「聴き直して」にしています。このさりげなく入ってくる「聴き直して」が、直後に出てくる「MUSIC」の予告になっているのも良いですね。
サビの直前に「せっせと」が5回続いてから「MUSIC」がきます。「せっせと」が5回なのも良いですね。
偶数のほうがリズムとして安定しているはず…。
しかし、あえて5回にして「せっせとが長く続くと思いきや唐突に終わる」という絶妙なタイミングを作っています。直後のサビが印象的ですが、前半のこのタイミングで「MUSIC」が出てきているところもポイント。この曲は「音楽」について歌っているからです。
「っ」が生み出す高揚感!
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リピートして リピートステップして
リピートして また踏みだして
何度だって イヤフォンの中に潜む悪魔が
袖をひっぱって「まだ遊び足りない」って
リピートして リピートステップして
リピートして また駆け出して
何度だって スピーカーから漏れる愛の歌が
止まらないんだってコンセント刺さってないのに
≪リリリピート 歌詞より抜粋≫
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サビで「リピート」の単語を繰り返します。リピートの単語を3回続けた後に「ステップ」を入れてくる構成。
この「ステップ」が入ることで、単調な繰り返しにならず聴けるようになるんですね。また、悲しい出来事を「リピート」することがあっても、それを次の「ステップ」につなげるという肯定的な意味合いも含んでいます。
また、直後のフレーズも「なんどだって」「ひっぱって」「あそびたりないって」と、「っ」の音を巧みに重ねている構成。この曲の独自の高揚感はこの「っ」が作っているとも言えます。
「イヤフォンの中に潜む悪魔」という表現も良いですね。音楽を思わず繰り返し聴いてしまう心情を言葉にしています。
音楽をリピートして聴いて「また踏みだして」「また駆け出して」いく。「コンセントささってないのに」これは、音楽が自分の心の中でリピートされていることを表しています。
悪魔のようでもあり愛情のようでもある、音楽が持つ力を歌っているんですね。
大胆な変化から生まれる演出
----------------絶妙なタイミングで「ぱんぱんぱん」という変化がきます。『オドループ』の「カスタネットがほらたんたん」とかけていますね。
君の心のリュック重量オーバーでぱんぱんぱん ぱんぱんぱぱん
≪リリリピート 歌詞より抜粋≫
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この大胆な変化で意外性を持たせつつ、バンドの別の曲も思い出させるという演出をおこなっています。
ラストで伏線を回収
----------------この曲のラストはこう終わります。「音楽は止まない」。「音楽」という単語が最後で登場しました。前半に出てきた「MUSIC」の伏線を最後で回収しているんですね。
音楽は止まない ずっと しょっちゅう しょっちゅう
≪リリリピート 歌詞より抜粋≫
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そして、それまでコーラスで繰り返していた「しょっちゅう しょっちゅう」のフレーズを最後の最後のオチでもってきます。
「くりくりかえすくーりくりかえすーしょっちゅーしょっちゅー」というフレーズが頭の中に「リピート」している聴き手は、このラストでしっくりくるのです。
リピートして、リズムを作り言葉を強めているこの曲。聴き手の中で音楽がリピートされること、そして作り手として音楽をリピートして発することを表現しています。
リピートして、リセットして、またリスタートする意味ももつ曲です。だから『リピート』だけでは足りずに『リリリピート』なんですね。
TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)