1. スピッツ『チェリー』が多くのアーティストにカヴァーされるのはなぜか

スピッツ『チェリー』が多くのアーティストにカヴァーされるのはなぜか

今年で結成30周年を迎え、2017年7月5日にはシングルコレクションを発売するスピッツ。収録曲はデビューシングルの『ヒバリのこころ』から最新シングル『みなと』までの全シングルと新曲の『ベビーメロウ』、『歌ウサギ』、『1987→』の計45曲となっている。今回はその中から「御三家」(『ロビンソン』、『空も飛べるはず』、『チェリー』)と呼ばれている曲のひとつ『チェリー』の歌詞を紐解いていきたい。

2017年7月4日


この記事の目次
  1. ・UtaTen特別企画 『コラムで綴るスピッツ愛』
  2. ・スピッツ 最新情報
  3. ・リリース情報
  4. ・スピッツ Profile

UtaTen特別企画 『コラムで綴るスピッツ愛』

歌詞検索・音楽メディアUtaTenでは、シングル・コレクション・アルバム『CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-』が7/5にリリースされるのを記念して、コラム特別企画を実施!UtaTenライターによる『コラムで綴るスピッツ愛』を7/3から短期集中連載。UtaTen自慢のコラムニスト・ライターが独自の解釈で、スピッツの曲に纏わるコラムをお届けします。



『チェリー』が発売されたのは1996年4月10日、今から21年も前に世に出たことになる。しかし、これまで200もの数多くのカヴァーがされており、最近ではグッバイフジヤマがデビュー曲として『チェリー』をカヴァーするなど人気は衰えを知らない。

なぜ、こんなにも多くのアーティストにカヴァーされるのだろうか。結成30周年を機に今一度考えてみたい。



君を忘れない 曲がりくねった道を行く
産まれたての太陽と夢を渡る黄色い砂
二度と戻れない くすぐりあって転げた日
きっと想像した以上に 騒がしい未来が僕を待ってる


心情描写と背景描写が豊富に用いられたスピッツらしい歌詞。言葉選びも非常に巧みで、瑞々しい感覚に満ちた詞も彼らの特徴のひとつだ。「曲がりくねった道」という表現からこの曲の主人公が歩を進めようとしている道はこれから先の未来が一筋縄ではいかないことを暗示している。
また、「産まれたての太陽」と表現し、初心な恋心を表すと同時に「黄色い砂」と敢えて砂に色付けを行い、黄色が持つ光の象徴というイメージをリスナーに印象付ける。紆余曲折している道だけれど、主人公は少年のような無邪気な恋心を持って夢への案内役としての黄色い砂に導かれる様子が想起される。「騒がしい未来」とあるように僕を待ち受ける未来に期待感を込めている。

では、この曲の主人公と君の関係はどうなっているのだろうか。
「君を忘れない」「二度と戻れない」という表現から分かるのは、君とはもう恋人の関係ではないということだ。

“愛してる”の響きだけで 強くなれる気がしたよ
ささやかな喜びを つぶれるほど抱きしめて
ズルしても真面目にも生きてゆける気がしたよ
いつかまたこの場所で君とめぐり合いたい


「愛してる」は恋人に愛情を伝える常套句だ。日本人はあまり口に出すことはしないが、愛を伝えるのには最も伝わりやすい言葉である。しかし、ここで「愛してる」という言葉そのものよりも響きに重点を当てているのが肝である。
響きには様々な意味が存在するが、曲の流れから単純に音の広がりではなく、余韻や残響という意味で解釈してみた。また、その「響き」だけでなく、「気がしたよ」「ささやかな」といったどこか鮮明さに欠ける表現が見られる。

これには理由がある。「愛してる」は先ほど述べたようにありきたりで照れくさい言葉だ。しかし、「響き」という空間的な広がりのある言葉で包み込むことで、「愛してる」という常套句に付きまとう恥じらいを緩和している。私はカラオケランキングで『チェリー』が上位に挙がる理由はここにあると推測する。ラブソングで常套句を連呼するのは少し恥ずかしいけれど、スピッツのこの曲だけは歌える。こんな方も多いためだ。

どんなに歩いてもだどりつけない心の雪でぬれた頬
悪魔のふりして切り裂いた歌を春の風に舞う花びらに変えて


この曲のDメロである。ここで曲調に変化を加えこれまでの明るく軽快な雰囲気から暗くシリアスな雰囲気へとシフトしている。それに合わせて歌詞の内容もAメロにあった明るい雰囲気から「心の雪」「悪魔」「切り裂いた」など暗鬱で攻撃的な雰囲気になっている。

Aメロは未来に向かって前に進もうという前向きな主人公であったが、Dメロでは挫折してしまった様子が描かれる。「心の雪」はAメロの太陽との対比になっているのが分かだろう。もちろんここでは主人公の心理描写である。

続いて、印象的な「悪魔のふりして切り裂いた歌」というフレーズ。ここでも、注目なのはふりしたと表現されている点だ。本当に悪魔のような心で詞を書いたなら「ふりして」という表現は必要ないはずである。推測になるが、『チェリー』に出てくるこの切り裂いた歌は今の主人公の気持ちを書いた歌詞であろう。愛してる君に向けて悪魔のような心で詩を書けるはずはない。本心ではないのならばふりをする必要があったのだ。しかし、「春の風に舞う花びらに変えて」とあるようにこれまでの苦境を乗り越え心機一転するという思いを始まりの季節である春に準えている。

その意味を込めてタイトルの『チェリー』と名付けられた。また、チェリーにはさくらんぼの他に俗語でヴァージンの意味がある。タイトルに準えるならばチェリーボーイだ。

これについて草野マサムネはこう答えている。「チェリーってやっぱり意味的にはヴァージンとかそういう風な意味もあるじゃないですか?そういう部分とか、あとまあ桜は春に咲く花だし、そういう意味でも何かから抜け出すというか出発するような」
このように、タイトルには意図するものが少なからずあることが分かる。

何か新しいことを始めるという意味を込めてチェリーが適当だったということだろう。ファンであればこれらは既知の事実だろうと思うので、今回はもう一歩踏み込んで解釈をしたい。

そこで、チェリーそのものをイメージしてほしい。思い浮かべるのは2個の実がくっついたチェリーではないだろうか。これは、1つの花芽から2個の花が咲くからということらしい。この『チェリー』を聴いたときからチェリーという果物の一般的イメージ(実が二つで一つであること)と主人公と君の関係を関連付けているのではないかという疑問が起こった。それを裏付けるようにこの曲の最後は「いつかまたこの場所で君とめぐり会いたい」と締めくくられる。この曲の主人公と君がチェリーのように不可分の関係であることを感じざるを得ない。

スピッツが年代を問わず愛されているのは、“愛してる”という陳腐な言葉でさえも新鮮な言葉であるかのように演出してしまう力があるからだ。これからも歌い継がれ、多くの人を魅了していくに違いない。

TEXT:川崎龍也

スピッツ 最新情報

リリース情報

2017年12月27日(水) 発売
スピッツ結成30周年記念 LIVE DVD & Blu-ray
SPITZ 30th ANNIVERSARY TOUR “THIRTY30FIFTY50”

スピッツ史上最大動員数を記録した結成30周年記念ツアー『SPITZ 30th ANNIVERSARY TOUR “THIRTY30FIFTY50”』から、2017年8月24日(木)に行われた神奈川県:横浜アリーナ公演を収録した映像商品。
話題の新曲3曲「ヘビーメロウ」「歌ウサギ」「1987→」に加え、レア曲「波のり」を初のライヴ映像化!
デラックスエディション-完全数量限定生産盤- には、別日収録の「ハチの針」「恋のうた」を加えたLIVE CD2枚、スピッツ結成30年の軌跡を振り返ることが出来る貴重な映像DISC、100ページにおよぶ豪華写真集などが付属。

■デラックスエディション-完全数量限定生産盤- 特典
① 特典映像: SPITZ INSIDE DOCUMENTARY「THE HISTORY 1987→」
② LIVE CD 2枚【合計27曲収録】
⇒映像収録楽曲と同じ25曲 + ボーナス・トラック「ハチの針」「恋のうた」(別日収録)
③ 『SPITZ 30th ANNIVERSARY TOUR “THIRTY30FIFTY50”』のLIVE写真やオフショットなどを収めた豪華100ページ写真集
④ 結成当時配布ステッカーの復刻版封入

特典映像: SPITZ INSIDE DOCUMENTARY「THE HISTORY 1987→」出演者
プレゼンター: 鹿野 淳(FACT)
笹路正徳(プロデューサー)
亀田誠治(プロデューサー)
髙山 徹(レコーディングエンジニア)
ほか

デラックスエディション-完全数量限定生産盤-

【Blu-ray】
2Blu-ray + 2CD
¥15,000(税込)
UPXH-9024

【DVD】
(ジャケ写 Now Printing)
2DVD + 2CD
¥14,000(税込)
UPBH-9548

【収録曲目】
1. 醒めない
2. 8823
3. 涙がキラリ☆
4. ヒバリのこころ
5. ヘビーメロウ 
6. スカーレット
7. 君が思い出になる前に
8. チェリー
9. さらさら
10. 惑星のかけら
11. メモリーズ・カスタム
12. 波のり
13. ロビンソン
14. 猫になりたい
15. 楓
16. 夜を駆ける
17. 夢追い虫
18. 正夢
19. 運命の人
20. 恋する凡人
21. けもの道
22. 俺のすべて
23. 1987→ 

EN1. 歌ウサギ 
EN2. スパイダー

※LIVE CDには、上記25曲に加え、別日収録の「ハチの針」「恋のうた」収録

通常盤

【Blu-ray】
1Blu-ray
¥7,980(税込)
UPXH-1058

【DVD】
1DVD
¥6,980(税込)
UPBH-1448

【収録曲目】
1. 醒めない
2. 8823
3. 涙がキラリ☆
4. ヒバリのこころ
5. ヘビーメロウ 
6. スカーレット
7. 君が思い出になる前に
8. チェリー
9. さらさら
10. 惑星のかけら
11. メモリーズ・カスタム
12. 波のり
13. ロビンソン
14. 猫になりたい
15. 楓
16. 夜を駆ける
17. 夢追い虫
18. 正夢
19. 運命の人
20. 恋する凡人
21. けもの道
22. 俺のすべて
23. 1987→ 

EN1. 歌ウサギ 
EN2. スパイダー

スピッツ Profile

草野マサムネ(Vo/Gt)、三輪テツヤ(Gt)、 田村明浩(B)、﨑山龍男(Dr)の4人組ロックバンド。
1987年結成。1991年3月シングル『ヒバリのこころ』、アルバム『スピッツ』でメジャーデビュー後、1995年リリースの11thシングル『ロビンソン』、6thアルバム『ハチミツ』のヒットを機に、多くのファンを獲得。
以後、楽曲制作はもちろん、日本国内をくまなく廻る全国ツアーや自らオーガナイズするイベント開催など、マイペースな活動を継続している。
最新オリジナルアルバム『醒めない』

●SPITZ OFFICIAL WEB SITE: https://spitz-web.com/

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