普通に日々経験してゆく中で思ったことを歌ってるだけ
――コレサワさんの楽曲を聴いたときに感じたのが、女性が日常生活の中、当たり前に感じている想いの数々を歌にしていること。しかもそれらを赤裸々というかリアルに表現しているからこそ、ときに男性からしたら女性の心の本音を垣間見たようで嬉しいような怖いような気持ちになってしまいます。
コレサワ:(男性の方は)そうみたいですね(笑)。
――コレサワさん自身は、自分の感情をストレートに歌にしているスタイル?
コレサワ:どれもそうです。「これを言ったら怒られるかな?!」みたいなことは一切考えず、「歌いたいな」と思ったことを素直に歌うことが多いです。別の言い方をするなら、日常生活の中から気になったことをかい摘んで歌う。そのスタイルが私は好きです。
――コレサワさんが歌という表現手段を取り始めたのも、日常を歌にしたかったからなのでしょうか?
コレサワ:そうですね。私から言わせれば、日常的なことを歌わない以外に何を歌うのかな?!って気持ちです。妄想って言うのかな?!。そういう風な作り方が私にはよくわかんない。
それよりも、普通に日々経験してゆく中で思ったことを歌っているだけ。それが、私の表現していくうえでのスタンダードなスタイルです。
――日常を切り取った歌に対して、「わかる」という声も多いんでしょ。
コレサワ:よくTwitter上を通して「その気持ち、すごく共感する」とか「そういうことを歌って欲しかった」みたいな書き込みを読むと、「あー、書いて良かったな」と思います。
――みなさんと同じ目線で日々の事柄を書いているからこそなんでしょうね。
コレサワ:普通の人と同じ…音楽活動に携わってない人たちが経験している当たり前のことを、私自身も普段から当たり前に経験しています。普通に恋愛をすれば、普通に仕事を嫌だなと思ったり、今回のアルバム『コレカラー』には、失恋したときの気持ちや兄弟や家族への想いも書いたり。私の場合は、そういう歌ばかりです。
俗に言うフリーターと同じなんです
――弟に対して歌った『お姉ちゃんにだけ部屋があったことまだ恨んでるのかな』を聴いたときには、互いの関係性がリアルに見えてきました。
コレサワ:この歌は、私が実家へ戻ったときの体験談なんです。私、弟には「お前」と言われてるんですけど。
ちょうどその日、弟の友達が家へ遊びに来るらしく、「俺には兄弟がおらへんことになってるから、お前は部屋から出んといてくれ」と言われて。そのときの言葉がショック…も少しはあったけど、それ以上に「それって面白いな、さすがうちの弟や」と妙に関心してしまって。
でも、言われた事実って悲しいことじゃないですか。だって、お姉ちゃんとして認めてくれてないんですよ。だから言われてすぐ、部屋の中でこの歌を作りました(笑)。
――弟さんとしては、どこか照れくさいところもあったんじゃないですか?
コレサワ:照れくさいって、たった2個しか年齢も変わらなければ、お互い社会人ですからね。
きっと弟からしたら、私が進んでいる音楽の道って、ずっと夢を追いかけ続けてる不安定な職業にしか見えてないんですよ。人気がなくなったら稼げなくなるわけだし、弟の中では俗に言うフリーターと同じなんです。
ミュージシャンの人ってみんな、安定しない職業の人=不安定な仕事みたいになっていて、私自身も、弟にはよくそういう風に言われますからね。
そんな弟自身はちゃんとした会社に就職してくれたから母親としては安心やと思います。だからこそ、弟としても「お姉ちゃん何やってんねん」という感じなんやと思います。
――『お姉ちゃんにだけ部屋があったことまだ恨んでるのかな』の歌詞を読んでると、そういう目で見てるのはシンガー活動をしているからだけには思えないといいますか、親の手伝いを弟にだけやらせたり、弟が大切にしていたおもちゃを川に投げてしまったり、けっこう弟の前なんか変なので考えてください。振る舞っていますよね(苦笑)。
コレサワ:弟のほうがお母さん想いというか、いろいろお手伝いしていた気がします。
私、弟はしっかりしてないと思っていたんですけど、「こういうところへ就職したい」と早い時期から決めて、しっかり就職もしているように、立派に育ったんやなぁって嬉しく思います。弟がちゃんとしているのは、お姉ちゃんとしてはすごく安心です。
――コレサワさんもメジャーデビューを果たすように、弟さんの評価も変わったんじゃないですか?
コレサワ:売れたら認めてくれるだろうけど、ちょっとした音楽の界隈でコレサワのことを知ってる人がいるレベルじゃ弟は納得してくれないと思う。テレビで曲が流れたり出演していたりとか、弟はそういう物差しで見ているから、現状ではまだまだの状態です。
「言いたいことがある=伝えたい人がいる」
――『君のバンド』でも、君はブラウン管の中にいるバンドが好きで、あたしはライブハウスで活動しているバンドが好きと語るように、好きな人と「好きな基準の物差しの違い」を歌にしていますよね。
コレサワ:私、中学生の頃はどっちかと言うとテレビの中の曲しか知らなかったんです。高校へ入学し、軽音部へ入って、みんながコピーしているバンドの曲を聞いて、「これ誰?」と教えてもらって初めてテレビから流れる音楽以外のことを知りました。
――『君のバンド』の歌詞では、"君"と"あたし"の心の距離を近づけようとしていきますよね。
コレサワ:そうなんです。『君のバンド』は、応援しているバンドが売れないことを歌ってるように思われがちなんですけど、じつは"君"と"あたし"との恋の関係について歌っています。そこは、ぜひ気づいて欲しいなと思うところです。
――アルバム『コレカラー』には、じつはラブソングもいろいろ収録になっていますよね。
コレサワ:ラブソングというよりは、「誰かに対して愛を歌ってる曲」が多いなって思います。私の歌は、いつも「誰かに対して歌って」いるんです。
――誰か…それは、コレサワさんの身近にいるいろんな人に対して伝えたい想いがあるからこそ、歌を作るということ?
コレサワ:そうです。「言いたいことがある=伝えたい人がいる」から、私は歌を作るんだと思います。誰にも聞いて欲しくない歌は、私は作らない。
かならず誰かしら、何かしら伝えたい人の像や想いが私の中にはあります。それがお父さんやお母さんだったり、友達や元彼だったり。わたしの歌は、何時も誰かに向けて歌っていますからね。
――なぜ、誰かに対して歌いたいと思うようになったのでしょうか?
コレサワ:自分を伝えるための手段はいろいろあると思います。それが絵やカメラという人もいれば、文章や映像という人だっていると思うんですけど。それが私は歌であり、歌詞を通した言葉なんだと思います。
――歌詞を通して想いを伝える術を得たことは、大きかったでしょうか?
コレサワ:まだ「見つけた」という確かなビビビッていうのはないんですけど、昔よりは言いたいことを言えるようにはなりました。とくにアルバム『コレカラー』に収録した歌たちは、言いたかったり伝えたい想いをしっかり表現出来たなと思います。
――歌を通して伝えるのとSNSを通した伝達とは違うものという感覚も、コレサワさんの中にはあります?
コレサワ:私、twitterに書くのはすごく苦手なんです。言葉数も短く限られてるし、誰が読んでくれてるのかもわからない。
それよりも私は、音に乗せるほうが想いを届けやすいなと思っています。それにtwitterだと、つい格好をつけてポエムみたいなことを書いちゃうし、それを自分でわかってるから、なるべくポエムみたいにならないようにつぶやくんですけど。やっぱし私は、メロディーに乗せて伝えるほうが好きです。