最新作『thickness』とは
前作『LIBERTY』以来1年4ヶ月ぶりのリリースとなった今作。誰も踏み入れたことのないソウルフルなサウンドから、みんなが楽しめるカントリー・ソング、ダンディーな色気を纏ったアーバンな一曲など、まさに“中田裕二”というジャンルを築き上げるがごとく名曲ぞろいの一枚だ。彼にしか作れない一枚となった今作だが、ここでは特に注目したい「femme fatale」、「Deeper」、「THE OPERATION」の3曲をフィーチャーしようと思う。femme fatale
アルバムのはじまりを飾る一曲。「femme fatale」、つまりは「魔性の女」というタイトル通り、ある一人の女に身も心も支配され堕ちていく様子が描かれている。
---まるで違うよ
その肌のつくり
お前が脳裏によぎって
何にも手につかない
何にも興味湧かない
別の世界に生きてるその女---
エロティックさを持ち合わせた歌詞を、吹き抜けるようなストリングスにのせて歌い上げる中田裕二。一度味わってしまった魔性の女の感触、それを忘れられない男。彼お得意の歌謡曲要素もふんだんに盛り込み、アルバムの幕開けにふさわしい一曲と言える。
Deeper
アルバム・ツアーのMCにおいて、中田自身が「この曲は僕にしか作れない。日本の音楽シーンにおいて、今までにない一曲」と語っていたこの曲。彼が持つ艶やかさをより際立たせるようにムーディでジャジーな一曲だ。
---また君を抱くよ 確かめるよ
二人のありかを
また僕は行くよ 君の中へ
誰も知らない場所へ
喉が渇いたら 口移しでくれよ
身体を絡ませて 二人で沈もう---
まさに中田節!と言いたくなるような艶のあるフレーズが心地よい。メロディーの持つ気怠さを含んだ色気とそれにマッチした中田裕二の声で、深い水中へと沈んでいくような感覚に陥る一曲だ。彼の言う通り、ルーツも新しさも混ぜ込んだ、他に類を見ない名曲である。
THE OPERATION
シングルとして発売される以前よりライブで披露され、ファンの間でかなりの人気だったこの曲は、やはりアルバムの最後を締めくくる一曲となっている。アーバンでアダルトなおかつ洗練されきったメロディーで、リスナーは身体を揺らし踊らずにはいられない。
---張りつめた糸が切れたら
君の言葉を聴かせてよ
それがはじまりの合図さ
欠けたパズルが揃ったら
君の秘密を教えてよ
それがはじまりの合図さ---
クールであるにも関わらず、どこか香るような生々しさもあわせ持つこの曲。「君の言葉を聴かせてよ、君の秘密を教えてよ」というストレートで熱を帯びた歌詞に、思わず惹かれてしまう。爽やかさと色っぽさのいいとこ取りで、飽きの来ないヒット・チューンだ。
彼がフロントマンを務めた椿屋四重奏が解散し6年が経った今、中田裕二は自身の類まれなる才能をさらけ出し、さらなる高みへと昇りつつある。彼のこれからの活躍を約束するかのような濃密な一枚『thickness』は、間違いなく上質な音楽の宝箱と言える。まだ聴いていないアナタも、今すぐこの宝箱を開けてみてはいかがだろうか?