理姫さんのド派手な姿
ボーカルの女性、理姫さんのド派手な姿が印象的なMVだ。脱色された髪、ピンクの唇、耳や腕にぶら下がる装飾品、各所に貼られたタトゥーシール。全身で「ギャル」を体現している。理姫さんはおそらくモノホンのギャルである。横浜で育ち、横浜の繁華な雰囲気を存分に吸収したギャルである。しかしその一方で読書家という一面も持っている。彼女のツイッターを見ていると一番多いのは音楽の話、次に多いのが愛犬の話、その次に多いのが本の話である。村上春樹の新刊も比較的早い段階で読了していた。
「ギャル」と「読書家」。相容れないように思われる二つの要素を持ち合わせているのが理姫さんの魅力である。彼女の中には、ギャル的な熱狂と読書家的な冷静さが共存している。ギャルでありながらギャルを客観視している。身を以て体験したギャルの生き様を、豊富な語彙で表現できる稀有な存在なのだ。
アカシック「プリチー」
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うっとり顔から尾っぽふりーの
映画的に贅沢させーの
懇ろ懇ろひっ掴みーされ
女は女でしかない
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理姫さんの書く歌詞にはいつもギャル語と文語が共存している。「~して、~して」という意味の「~ーの、~ーの」という言い回し。これを歌詞に用いる斬新さに心を掴まれる。その一方で、「懇ろ」というギャルに似つかわしくない言葉も自然に使ってくるあたりが心憎い。理姫さんの魅力が端的に表れている一節だ。
ギャルはなぜひたすら自分を派手にするのか。男にモテるためなのだろうか。おそらくそうではない。以前、女性に「すっぴんでも可愛いよ」と言ったことがある。すると「君がどう思うかは関係ないから」と冷たく返された。理姫さんがそんな女心を端的に表現している。
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プリチープリチープリプリプリチー
プリチープリチーDEATHorプリチー
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ギャルにとって、可愛くないことは死を意味するのだ。日々、自分を可愛くするために試行錯誤を続けていく。化粧をするために早起きをして、食事に気を遣い、コツコツ働いたお金で光り物を買う。誰かのためではない。他ならぬ自分のためにそうするのだ。そこに損得勘定は存在しない。