その伴奏にエスコートされながら『恋をしていると恋をしているとなぜか身体が心で温もる』と優しく暖かみのある歌声で曲が始まっていく。
その世界観は彼女の伝えたい想いが温かみを帯びながら真っすぐ届く様に作られたのだな。と素直に思う程、シンプルで純粋無垢。
西野カナの「手をつなぐ理由」
つないだ手の温もりは
まだここにある
大丈夫 忘れない
いくつ歳を重ねても
手の温もりというのは、手を繋いでいる時は当たり前に感じるもの。けれど手を離してから時間が経ってしまえば、その温かさは当たり前に消えてしまいます。
ここで歌われる『手の温もり』。それは「一緒にいた時間」であり、共有した時間の中で感じた嬉しかった事楽しかった事。「大切な思い出」の事を歌っているのです。
手が離れると、どうしても消えていってしまう手の温もり。その温もりを感じ合った相手が大事であればあるほど、思い出は嬉しくもあり時には心を揺らすものにもなりえます。
どうしてでしょうね。大事すぎると「自分だけかな」なんて思ってしまうのは。大事に想っているのは自分だけで、あなたはどう想っているのかな?なんて心配になったり…。手をつないで温もりを感じた。その幸せは確実にあるのに。
幸せでなんだか不安になる不思議な気持ちを、私も同じ。ちゃんと分かっているからね。と安心させる様にそして自分にも言い聞かせるように続く歌詞。
『大丈夫忘れない。いくつ歳を重ねても』この一言が、想いが同じである事を真実にして心を通わせていくのです。
楽曲のテーマは絆
時には傷ついたりもう嫌いになってみたり
なぜだろうね
心と心が
強くひかれ合うほど
心が通えば、想いは変わらないけれど、その想いの上に重なっていくのが時間です。重なる時間は良い事ばかりではないのです。
思わぬ態度や一言に傷つく事。時には腹を立ててしまって、好きという気持ちよりも嫌いと思う気持ちが上回ってしまう事もあるでしょう。
でもそれは『心と心が強くひかれ合っている』からなのです。好きの反対は嫌いではないのです。好きの反対は「無関心」なのです。
好きだから、関心を持ちすぎてしまって嫌いになるくらい、心配もするしやきもちも焼いてしまう事もある。なんだかちょっとややこしい。
けれど、それが好きという事、誰かを大事に想う事、なのでしょう。
「手をつなぐ理由」。この歌は今年でデビュー10周年を迎える西野カナが自身の10年続けてきた音楽に対する想い。そして、これまで自身を支えてきてくれた人たちへ「絆」をテーマに想いを込めた曲なのだそうです。
誰かを大事に想っている事。好きだと想う事。この感情が必ずしも曲中で表現される「恋」に当てはまるわけではありません。
恋ではないけれど、恋と同じ様に誰かを大事に想う。その感情を表す言葉が、この曲のテーマである「絆」なのではないでしょうか。
歌詞に込められた「これからも一緒に居よう」という強い想い
恋をしていると 恋をしていると何度も何度も君を好きになるの
大好きだよ 大好きだよ
今の気持ちが消えてしまわないように
手をつなぐの
彼女がこの曲を通して伝えたい想い。それが目一杯込められているのがこの歌詞。「恋」で表されているのは「大好きだよ」という、彼女自身が大事に想っている全てに対してのとても純粋で温かい想い。
そして「君」というのは、西野カナの音楽への情熱と歌を聴いている人の存在を指しています。
好きだからこそ続けてこられた音楽活動。10年の節目を越えて、これからまた出逢ってゆく様々な出来事。時には音楽を嫌う事もあるかもしれない。
だけどそれは「好き」だから「恋をしている」から起こりうる出来事なのです。
そんな出来事の繰り返しでも、支えてくれる人達と心を通わせる事が出来れば、必ずまた好きになる。続けていける。
だから「これからも一緒に居よう」という想いがこの歌詞には込められているのです。
大切な人を想う恋歌でもあり応援ソングでもある「手をつなぐ理由」
もし今君が記憶を失っても大切な想いだけは消えないでいるよ
最後に歌われる事で『記憶を失う』という表現がとても印象を残します。
この先に何があっても『大切な想いだけは消えない』という、彼女自身が注ぐ愛情と彼女自身に注がれる愛情を大切に想っている事を心から伝えたい。そんな想いが胸に残ります。
大事な人を想う事で生まれる温もりが大切な宝物だと気がつかせてくれる、冬にぴったりな温かい恋歌でもあり。
想うだけで心が温もるくらい、自分を愛し支えてくれる誰かがいるから「大丈夫。頑張ろうね」と何かを続ける人へ寄り添うような応援ソングにも聴こえる、西野カナが歌う「手をつなぐ理由」。
柔らかいけれど、想いに真っすぐな歌声と温かい歌詞が心にも。そして、これから始まる冬にも温もりを添えてくれますよ。